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釵の行方
「あー、にぃちゃん、漸く渡せたんだ」
市中で筮竹を鳴らしながら少年がぼそりと呟く。その少年に声をかけた人影があった。
「占い頼んでいいかな?」
「はーい、何を占いますか?」
「そうだな、恋の行方を」
思わずしげしげと相手の顔を見る。確か、にぃちゃんこと、劉病已――市井では、張白玉と名乗っていた――が、親しくしていたうちの一人で、霍家の御曹司だった。確か、本家の姫君と恋仲だったか。
「時間がかかりそうですね」
筮竹を使うまでもなく、それは判る。
「うん。ただ、それを成し遂げられるかどうか、を知りたいんだ。恋人を、ちゃんと妻にしたい」
穏やかな表情の奥に、情熱を秘めることが出来る人であるようだ。
少年はにっこりと微笑んで、筮竹を握りしめた。