会談は終了しましたけれど
やーめーてー!
その極上の笑み!!
中身最悪なのに、ほだされてしまうから!
その微笑みはヒロインちゃんのためだけに取っておいてください。私には猫に小判ですから。
恐るべし、元推しの微笑み。
私はふわふわした気持ちのまま、いつの間にかリゼル王子との会談を終えていた。
「アンジェリカ、どこか具合が悪い?」
王子が去った後、ガゼルが心配そうに顔を覗き込む。
「だ、大丈夫。ちょっと驚いただけで」
「部屋まで送るから」
サッと自然に肩に手を回してくるガゼル。
(ガゼル卿、最近ボディタッチが増えてません?)
少々気にはなったが、回された手が心地よくて払う気にはならなかった。
「さっきはリゼル王子殿下とどんな話を? アンジェリカが婚約者候補からは外れているのは確かだよね? あれだけきちんと断っていたし、リゼル王子もアンジェリカのことを……その、元々あまり気に入ってはなかったようだし」
ガゼル、案外デリカシーないわね。本人に向かって「気に入ってない」とか暴露するなんて。
でも、まあ許す。そこは事実だろうからね。
「ガゼル卿から見てもリゼル王子は私のことを嫌っているのですよね? それほどグラデュラス公爵家の後ろ盾って大事なのかしら? そのためなら嫌いな相手でも結婚しようと思えるのね」
「まさか! そんな!」
私の言葉に大仰にガゼルが驚いて立ち止まった。
なにをそんなに驚くのかと私もつられて立ち止まると、肩に回されている手に力が込められた。
「……王子は……そのような下劣な考えで……アンジェリカを奪おうと? なんと卑劣な……許しがたいことを!」
ブツブツと聞こえるか聞こえないか程度の微妙な押し殺した声音で呟く。
でも目の前の私には聞こえてますけど。
それにしても下劣とか卑劣とか、あなたご自身の護衛に散々言われてますよー、リゼル王子様。
これ、不敬罪で捕まりませんか、ガゼルさん。大丈夫?
それからガゼルは己の額に手を当て天を仰ぐように上を向き、それから悔しげに「くっ!」と喉の奥を鳴らした。
「アンジェリカ、僕はあなたを守りたい。あなたが望むならば副団長の職に未練はない」
(ちょっ、急に何を言いだした、この人? 今の話の流れ的に仕事辞めて欲しいとかの下りあった!? それに――)
今のセリフは、ガゼルがヒロイン誘拐事件から彼女を守った時に告げる愛の告白だ。
正確にはあのセリフに続けて「あなただけを守る騎士になりたい」と続くのだが。
なぜ、今、急に? 意味不明ですが?




