素敵な温室ですわね
まるで映画のように、誇張でなく光と花を背負ってキラキラ光りながら歩いてくる美男子に思わず目を細める。
(このシーンがイラストで売っていたら即買うわ)
ビジュアルで言えばリゼル王子がやはり正統派王子様で一番美麗だ。
頭を下げている私に、歩み寄ったリゼル王子がそっと手を差し出した。
何だ、この手は? 握手かな?
「エスコートを。少し歩こう」
あ、エスコートね。すみませんね、貴族生活に慣れないもので。
ペコッと頭を下げてからそっとリゼル王子の差し出す手に手を重ねる。
「ガゼルは人が来ないようにここで見張るように」
「……はい」
若干の間を空けてガゼルが返事をする。いくらか不満そうな声だった。
ゆっくりと歩き出した王子に引かれるように温室の散策を始めた。
本当に美しい温室は、回遊出来るように通路がレンガ敷になっており、周囲の花々とのコントラストがとても見栄えがする。計算し尽くされたような花々の配置にただただため息を零す。
その美しさに負けないほど美麗な姿で歩きながらリゼル王子が問いかけた。
「私に話があると聞いたが」
「はい、少し信じられない噂をお聞きしたので、直接王子殿下に確かめたくてお時間をいただきました」
「噂か……もしや、あのことか……今度の舞踏会に、と言う」
私はコクリと頷く。
心当たりはあるのね。そうだよ、勝手に婚約を発表するとかほざいていた件だよ!
「あの件は……本当に根も葉もない噂だ。私もなぜそんな噂が出たのかさえわからない」
「ああ、そうだったのですね。それをお聞きして安心しました。まさか、とは思ったのです。思慮深いリゼル王子が軽率なことはなさらないと信じてはいたのですが」
「そうか……アンジェリカ嬢は信じてくれていたのか」
ホッとして思わず笑んだ私につられたように、リゼル王子が不意にフッと口元に笑みを浮かべた。
(ふおおおおお! レア中のレア! リゼル王子の笑み!)
愛するヒロインにしか見せたことのないリゼル王子の微笑みに、悲しいかな簡単にテンションが爆上がりする自分。
いくら中身がアレでも、ビジュアルが良すぎてほだされそうだ。
足を止め私を見つめてくる王子の視線に耐えかねて俯くと、乗せた手をキュッと握られた。
「私には味方が少ない。あなたが側にいてくれて良かった」
「? ……そう……ですか……?」
どう言う意味で告げた言葉だろうか。
第一王子として大切にされていて、ヒロインとの恋もこの先順調に進むはず。
確かにシャリル王子に魔法の力があることが判明してからは第一王子派と第二王子派との対立が深まるが、最後はちゃんとリゼル王子が立太子するのだ。
「心配せずにいてください。すべて上手くいきますよ」
よくわからないけれど、不安そうなので励ましておく。
「そうか。あなたにそう言われると……なぜか安心する」
また柔らかく微笑む。




