直談判に向かいますわ
「だから僕にアンジェリカ嬢をエスコートする栄誉を与えてくれる?」
「聞いてよ、話を。イヤだって言ってるでしょう」
「でもこの状況、もう僕に頼るしかないと思わない?」
「会いたくないけど、リゼル王子に直談判に行くわ。勝手なことするなって」
「え、無理でしょう? あれほど何度も直接お断りされているのに聞いてもおられないでしょう? リゼル王子殿下は意外と意思がお強いので」
私の提案をエバンスがあっさりと叩きのめしてくれた。
あれを意志が強いって言うの? あれは意固地って言うんじゃない?
(別に成瀬、いやシャリル王子がイヤなわけじゃないわ。うん、イヤっていうより……そうね、しがらみがないなら別に悪い奴じゃないし? 気遣いもあるし? 顔は……もちろん良いし? 二人でお酒を飲むのも悪くないし? って!)
何を考えているんだ、私は。
だから王家とか面倒くさいのは避けたいのよ、そこ、忘れるな自分!
なんてことをごちゃごちゃ考えてしまう自分を叱責しながら、やはり根本を正さなくてはと思い至る。
(そうね、一度リゼル王子と話し合おう)
そう心に決め、リゼル王子に会いたい旨の手紙を送った。
*
侍女を通じて取り付けたリゼル王子との面会の指定場所は、いつのも応接室ではなく王宮の温室の一角だった。
時期の外れた花も綺麗に咲き誇り、美しく整えられた花々を見るだけで、この花壇がどれほど手入れをされているかが如実にわかる。
初めて入った温室に私の心は浮かれていた。
花は心を落ち着かせてもくれ、心を浮き立たせてくれもする。
「本当に素敵な場所だわ。こんなに多種多様な花が咲き誇っているなんて、どれほど手をかけているのか。庭師の努力のたまものね」
私をここまで案内してくれたのはリゼル王子の護衛である王宮騎士でアンジェリカの又従兄弟であるガゼルだ。若干浮かれている私に穏やかな声で話しかけてくる。
「アンジェリカはここには初めて入ったんだね。でも咲き誇る花の中でもアンジェリカが一番綺麗だ」
ニコッとガゼルに笑いかけながら私は心の中でつっこむ。
(おいぃぃぃ! この世界の男たちの口はどんだけフレンチシネマモードなのよ! あま――い!)
茶色の瞳が甘やかに私を見下ろしてくる。背の高い彼からの視線がずっと私に注がれている。
(なんで? そろそろヒロインちゃんの護衛に付くころじゃないのかな? まだだっけ?)
先日ヒロインを庇って私に冷たい目を向けていた同一人物には見えない。あの後も甘い言葉をのたまっていたが、ガゼルがアンジェリカをどう思っているのかが全く理解できなくて戸惑いばかりが増していく。
「アンジェリカ、そろそろディバイン家に移って来ないか? シャリル王子のわがままに付き合う必要はないんだよ。リゼル王子の婚約者候補から外れたのだから、遠慮せずに僕に全て任せて欲しい」
優しい、本当に優しい声音になぜ? と疑問ばかりが浮かんでくる。
気配を感じたのかガゼルがサッと振り返り頭を下げた。
リゼル王子の登場だ。




