招待
どうしよう
目の前にはさっき喫茶店を襲っていた強盗犯がニコニコしながら立っている。立ち止まった以上少しは話を聞かなくちゃいけないのかもしれない。
「貴方は強盗中の喫茶店で熟睡してたんだから相当強い方ですよね?」
「別に」
「貴方をとても強いお方だと信じてお願いがあります」
その瞬間トレスは寮への道を歩き出した。強盗犯のお願いなんて聞きたくない。めんどいし。危ないし。めんどいし。
しかし、いきなり歩き出したトレスに慌てて強盗犯が追いかけてくる。
「ちょっと待ってください!貴方しかいないんです!お願いです!話を聞いてください」
その言葉に足を早くする。だって聞きたくないし。強盗犯とか関係なく人の悩み事はめんどいし。
「お願いです!メルを・・・人質になってる妹を助けてください!」
ピタ
そんな音が聞こえるくらいに、いきなりトレスは足を止めた。その事に強盗犯は驚いて地面に躓き転んでしまう。そんな事は気にせずゆっくりと振り返って強盗犯を見据えた。
「どういうことだ?」
やっと話を聞いてくれるのかとホッとしてトレスを見た時、驚きで声が出なくなる。その瞳は今までのだるそうな瞳ではなく、どこまでも暗い色をまとったような瞳だった。
その暗さに強盗犯は動けなくなる。今まで見てきたどんな瞳よりも恐ろしくて悲しい、そんな瞳をしている気がして動けなくなる。
「どういうことかと聞いている」
トレスに声をかけられて強盗犯は金縛りから解けたように立ち上がってとりあえず場所を変えて話そうと提案した。
場所は変わって強盗犯の家に来た。すごく質素な今にも崩れそうな家だった。娯楽ものは少なく、可愛らしい小さな女の子のぬいぐるみだけだった。
そのぬいぐるみも綿が飛び出したりしていてボロボロだ。
「どうぞ、適当に座ってください」
「適当にって。椅子もねぇじゃん」
「じゃあ、その箱にでも座ってください」
そう言って指差した箱は今にも壊れそうな箱だった。
「いや、これは・・・。お前はどこに座るんだ?」
「僕は床に座りますよ」
「・・・俺も床に座るよ」
「そうですか?遠慮しなくても良いですよ?」
「・・・今は床に座りたい気分なんだ」
「そうですか?」
そして2人は家の真ん中に向かい合って座る。いつまでもニコニコしている強盗犯に痺れを切らして話を促すように見ると、強盗犯の瞳からいきなり雫が溢れ出した。
いきなり溢れ出したそれにトレスは驚くが、強盗犯自身も驚き慌てて止めようとするが止まらずにしばらく泣き続けた。
今更ですが、1話ごとの長さが違います。
そろえる努力はしましたが、変な事になったので開き直ることにしました(`▽´)
寛大なお心でご覧くださいm(_ _)m
そして、読んでくださってありがとうございます(*´∇`*)