第123話「今こそ悲願をなす時」
## 第123話「今こそ悲願をなす時」
### 【あらすじ】
グラシオン王国、王都冒険者ギルドの一室。
ガルデン、セリオ、ギルデス、グラートの四人が集まる。
聖統国の転生勇者に復讐を誓う彼らは、千載一遇のチャンスを逃すまいと決起する……。
### 【本文】
「ギルデス、確かに彼らは聖統国に入ったのですね?」
「ああ、間違いない。奴に渡した剣、その魔水晶を追跡できるようにしたからな」
「ガッハッハ!やるじゃねえか!」
「我々の正体をバラした失態は消えませんからね?」
「まぁそう言ってやるな。で、このあとはどうするんだったか?」
「おそらく……聖統国は彼らを捕捉した上で殺そうとするでしょう」
「そりゃ間違いねえな。それこそ、今死闘の真っ最中かもしれん」
「……というと?」
「“グラヴィス・ブレイド”の魔水晶に魔力が注がれてやがる。それもとんでもない量」
「なっ……!? ギルデス!そういうことは早く言いなさい!」
「あぁ……? それならそう頼んでくれよ」
「全く……あなたたちは……」
「ってことは、あの兄ちゃんたちと聖統国の戦いが始まったのか?」
「おそらくはな……場所は……聖座宮じゃねえな。聖都からもまだ離れてやがる。だが――注がれたこの魔力量を考えりゃ相当やり合ってるはずだ。下手すりゃ聖都は手薄になってるかもな」
「……行くなら今しかないですね」
セリオは覚悟を決めるように言う。
「我らが友、伝説となった勇者の仇を討つと決め、トレヴィルで行動を開始してから随分と長い時が過ぎました。それこそ、あんなに小さかった幼き剣士が、立派に新たな勇者の肩書きを背負うほどに」
セリオのその言葉を、グラートはただ黙って聴く。
「当初の予定とは大きく軌道修正を余儀なくされましたが、彼女はしっかりと我々の役に立ってくれたようですね」
「……行くか」
「ええ。覚悟はいいですか?ギルド長、仕事を放棄して発つんです。もうここには戻れませんよ?」
「わかってる。元々ギルド長なんざガラじゃねぇんだ。せいせいするぐらいだ」
ガルデンは自慢の斧を担ぐ。
「ギルデスさんも、あの工房には戻れないと思ってくださいね」
「そいつは惜しいな……だが、奴らの命には変えられん」
ギルデスは大型の槌を持つ。
「グラートさん。あなたは……以前から我々のやり方に否定的なのは理解しています。資金繰りのために奴隷を集め、パンデム商会の目を盗んで売買する。その過程で発見した勇者の素質を幽閉し、我々の切り札として育成するのも……」
「私の願いはただ一つ、転生勇者への仇討でございます」
「……そうですか、どのように考えるのも自由ですが、作戦の邪魔だけはしないようお願いしますよ」
グラートは黙って立ち上がり、机に置かれた剣を腰にさす。
「ではギルデス、転移門を」
「あぁ……全く、人使いが荒いぜ。一人で国境の山奥まで行かせて転移門設置なんざ……使い所があったからいいが――」
ギルデスは文句を言いながら転移門を展開する。
本来であれば大量の魔水晶を消費する大技。個人の魔力でここまでの長距離転移を実現するのは、文字通り離れ技である。
今こそ悲願をなす時。
伝説をその名に冠するパーティーが、聖統国に入る。




