米しかいらない
異世界ではお米が余っていた。
モノは余れば価値が落ちる。生鮮食品ならタイムリミットもあるからなおさらだ。
ボクは神人こより。令和七年の日本から異世界に飛ばされた十六歳。現代日本のバイキングレストランの知識を活かして、これまで何件とレストランの経営改善をしてきた。
「今回は米を売る」
メインも米、おかずも米。デザートも米にするつもりだ。見ていろ、お米が大好きな日本国民の底力を見せてやる。
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「頼むよミリアさん」
ここはバイキングレストランの三号店"魚の虜"
ボクはオーナーのミリアさんにお願いしていた。
「そりゃ、いいけどさぁ」
「ボクのとっておきを教えるから」
「マグロの刺し身以上か!?」
「うん。これはミリアさんの店でしか提供できないよ」
「そうかそうか。なら仕方ないな」
「ありがとう!」
帰ろうとするとガッシリと腕をつかまれた。なんて力だ。この女、オークよりも力があるんじゃないか。
「たまにはゆっくりしていけよ」
「たぶん、ゆっくりできないよね」
「じゃあ激しくするか」
「お手やわらかに」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
腰が痛ぁい。お年寄りみたいに腰をトントンするボクをミーナが心配そうに見守る。
「大丈夫ですか、こよりさん」
「ああミーナ。大丈夫」
「ボロボロじゃないですか」
「ちょっと女オークに襲われただけだよ」
「はぁ」
ここはバイキングレストランの四号店の"酪農王国"
ミリアさんと一戦交えた後、オーナーの牧場主ミーナのところにやってきた。
「牛乳を使ったご飯モノですか」
「頼む!ミーナだけが頼りなんだ!」
「わかりました」
「ありがとう!!」
「そのかわり」
「え」
「わたしの。搾って行ってください」
「ぁ」
搾り取られるのはボクなんだけどね。
よし準備は整った。あとは冒険者ギルドと各店舗、まんぷく食堂にチラシを置かせてもらうだけだ。
「いらっしゃいませ!」
「米もスープもデザートもすべて二時間食べ放題!」
「ここでしか食べられないものもあるよ!」
「金土日のみお一人様千五百ウェン!!」
今日は"米しかいらない"のプレオープン初日。もちろん呼び込みをしているのはボクだ。
「こよりくん」
「ラミリアさん、いつもありがとう」
「まず一人で楽しませてもらうわ」
「何か気づいたところがあったら教えてね」
「それは日曜日のデートのときね」
「頑張ります」
「よろしい」
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はい現場の冒険者ギルド受付嬢のラミリアです。さっそく今回もお一人様レポートをしましょう。
案内係の案内を断り、さっそく料理をとりにいく。目指すはライブキッチン。とうぜんこの店にも在るはずだ。
魚の虜ではマグロの刺し身。酪農王国ではソフトクリームだった。米しかいらないは一体なにを出してくれるのか。
「カツ丼はいかがですか」
こよりくんと同い年くらいの娘が声をかけてくれる。
「一つくださいな」
「ありがとうございます!どうぞ!!」
「ありがとう」
これは何だ。丼の上に玉子でとじたトンカツが乗っていた。席に戻ってさっそくカツ丼とやらを食べる。
はむっ
甘い。美味しい。トンカツの下には汁をたっぷりと含んだご飯があった。醤油味の甘い汁と白米の相性は抜群だった。
あいつめ。わたしを太らせるつもりか。そう思いながらも二杯目のカツ丼をもらいに向かってしまった。
ついでに他のご飯もレポートしよう。エビやイクラの海鮮たっぷりのちらし寿司、お肉ゴロゴロなチャーハン、カレーピラフ、塩味のついたおかゆ、白米の五種類の米が並んでいた。
おや、白米の横に鍋がある。なになに牛丼とな。白米の上にかけてお召し上がりくださいときた。
これも丼なのね。すべて少なめにいただく。どれも絶品だった。酢を使っているとはいえ、生魚をここまで丁寧かつ新鮮に使える人間はそうはいない。
スタンピードのときに大きな包丁を背負っていた元Aランク冒険者ミリアの背中を思い出す。なるほど、ちらし寿司は三号店の魚の虜が作ったな。
デザートはミルクプディング。米を牛乳で甘く味付けたデザートだった。いわゆるミルク粥ね。
これまた美味い。酪農王国の低温殺菌牛乳を使ったか。
あとスープだけど、味噌スープだった。これがまた白米や丼とあう。
気づくと満腹になっていた。
さて昼休みも終わるし、ギルドに戻ろう。明日はいつもの受付嬢四人で来ちゃうんだから。
はい異世界シニアです。
次回、異世界バイキング。魚の虜の新メニュー。




