異世界では米が余っていた
「ちわー、コメリ米店でーす!」
元気に店の裏口から声をかける。わたしは米屋の一人娘のコメリ。
「お、コメリちゃん。いつもありがと」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます」
メイド姿の美少女が顔を出す。でもみんな知っている。この人が本当は男の子でAランクの冒険者"ブルーオーガ(青鬼)"であることを。
神人こよりさん。わたしと同い年の十六歳。たくさんのバイキングレストランを成功させた人でもある。
噂を聞いたとき、正直言うと怖かった。オークどころかミノタウロスまで倒す冒険者。でも一目みてその印象は百八十度変わった。ぶっちゃけ恋をした。
でも彼には恋人さんがいる。冒険者ギルドのキレイな受付嬢さん。以前デートしている姿も目撃している。ほかにも恋敵は多いと聞く。単なる町娘で米屋の娘を相手にしてくれるとは思えなかった。
「ん。何かお困りかな」
わたしの顔を見て、こよりさんは何か感じとったのだろう。声をかけてくれる。それだけで嬉しかった。
「米が・・米が余ってるんです」
「大丈夫」
「あ」
確信した。その一言で悩みは解決したことがわかった。
わたしははらはらと泣いていた。
「米中心のレストランを作ります」
ここはバイキングレストラン"カレー大好き"の二階の休憩室。部屋にはこよりさん、シェフのマイさん、ウェイトレスのミコトさんとメイさん、そしてわたしがいる。
「並行して一号店、三号店、四号店にも米を仕入れてもらう」
そもそもなぜ米が余ったのか。豊作にくわえ、異世界でも米の消費量が減っているらしい。コメリちゃんちの米倉庫も満タンで悲鳴をあげていた。
ウェイトレスのミコトがいう。
「米をメイン、サラダ、スープは外せませんね」
「うん」
「カレーはどうします」
「それだとウチと被るわよ」
シェフのマイとウェイトレスのメイが意見をだす。
「カレーを出すなら専用のものを一つ」
「メインの米は、白米を含めて混ぜご飯、チャーハンなどで五種類を出す」
「米で作った油で揚げた野菜、米の麺もだしたい」
「あとアイデアはあるかな」
「ならカレーピラフにしませんか」
「それならウチとも被らないな。さすがマイ」
「えへへ」
マイさんが嬉しそうに照れる。それをミコトさんとメイさんが微笑ましく見ていた。
ああ、この人たちもこよりさんが好きなんだ。
「旦那様。お店の場所は決まってますか」
いまミコトさん、こよりさんのこと旦那様と呼んだ。
「ああ、コメリちゃんちの隣に空き家がある」
「再利用するんですね」
「そう」
開業には金と時間がかかる。人だって雇わなければならない。幸いコメリちゃんちは収納庫スキル持ちだから助かった。
米の知識もあるし、なにより米屋だから仕入れには困らない。店をやるなら取り扱う商品は絶対に米しかない。
いま在るモノを最大に活かす。使う。そして重要なのが差別化。個別化と言ってもいい。
同じ店がいくつあってもお客様は困るからね。
店を選ぶとき、どこでもいいでは困る。ここでなければ、あそこで食べたいでなければ、飲食店は生き残れない。
米メインの店。考えるだけでワクワクしてきた。
「こよりさん、店の名前はどうしますか」
「米しかいらない」
「米しかいらない」
文句なんてあるわけがない。これ以上の名前なんてない。
「いいね」
「はい!!」
店名が決まった。
はい異世界シニアです。
後書きを忘れてました。肉、スパゲッティ、カレー、魚、酪農ときて米です。
次回、異世界バイキング。米しかいらない。




