魚の虜 プレ・オープン初日の反省会
「では本日の反省点や改善点、よかった点を挙げてください」
ここはバイキングレストラン三号店"魚の虜"の店内。一日目の営業を終えたボクたちスタッフは全員で賄いを食べながら反省会をしていた。
ボクは神人こより。令和の日本から異世界に飛ばされた中学三年生。異世界にバイキングレストランという形態をもちこみ、いまのところ二店舗まで成功している。
「ライブキッチンで手間取って、列をつくってしまった」
オーナーでライブキッチンの責任者ミリアさんがつぶやく。マグロの刺身が予想以上に人気で、お客様が並んでしまったのだ。
いくら収納庫スキルがあるといっても、ライブキッチンはお客様の目の前で調理をする。マグロの刺身は切る、皿に並べる、提供するという手間がかかる。
「開店前に三十皿くらい並べておくしかないかな」
「そうだな。明日は開店と同時にマグロを三十皿、並べておく。絶対にお客様の行列をつくらない」
さすがミリアさん。反省と改善が早い。
「ボクも開店前に一部の整理券をすべて配り終えたんだよね」
「バイキングは入店したら一時間は店を出ないもんな」
「うん。食べるペースはお客様それぞれだから予想もできない」
「でもけっこう一時間くらいで出るお客様いましたよ」
「十人はいたかな」
「十二時に来てくれたお客様がちょうどそこにハマれば万々歳だけどね」
「いまは満席にできたことを喜ぼうや」
「よし、明日も早い。帰ってゆっくり休んでくれ」
スタッフのみんなが帰っていった。ボクも一号店の下宿に帰ろう。
「こより、本当にありがとう」
ミリアさんが頭を下げる。
「ちょっ、やめてよミリアさん」
「潰れる寸前の店を満席にしてくれた礼をしたい!」
「礼なんていらないってば」
「いいや、まんぷく食堂のルミリアたちはお前に体でお礼をしたと言ってたぞ」
「ちょっ。それじゃボク最低な男じゃないか」
「仕事に対する当然の対価だ」
「いや、ミリアさん。服を脱ぐのをやめてぇ」
「わたしは一向にかまわん!!」
「なんでこの世界の女性はそっち方面ばかり男らしいのおおおおおおおおおお」
燃え尽きたぜ。真っ白にな。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
バイキングレストラン三号店 魚の虜プレ・オープン二日目。
一時間前に十一時からの整理券をすべて配布しおわる。今日も確実に満席だ。
「ミリアさん、刺身の準備はいい」
「ああ、任せろ。どんなことをしても品切れにはしない」
「さすがだね。よろしく」
「では二日目。オープンします!!」
「いらっしゃいませ!」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
二日目も大盛況ね。わたしは冒険者ギルドの受付嬢のラミリア。こよりくんの女。
今日も同僚三人をつれて魚の虜にやってきた。すでに十一時からの入場が開始していた。
「こよりくん。お疲れ様」
「あ、ラミリアさん今日もありがとう!!」
「四人いいかしら」
「もちろん。六千ウェンになります」
「四名様、ご案内!!」
四人が案内係に案内される。今日も説明は大丈夫と断る。どれ刺身は行列になっちゃってるかな。あら今日は誰も並んでいない。そうか、あらかじめ切っておいたのか。さすがに対応が早い。
「ねえラミリア。これマグロの刺身でしょ!」
「とても美味しいわよ。病みつきになるくらい」
「生食って大丈夫なのかな」
「新鮮な魚だし、ワサビには殺菌作用もあるのよ」
「でも」
「わたし、昨日も食べてるけど平気よ」
「わかった、信じる。」
同僚が覚悟を決めて食べる。
「なにこれ、美味しすぎる!」
「醤油とワサビがこんなに合うなんて!!」
「でしょ」
「わたし、あと五皿もらってくる」
「パエリアもシーフードカレーもとっても美味しい」
「来てよかったでしょ」
「「ほんと!!」」
魚介スープを一口すする。昨日とはちがう魚介の味にかわっていた。毎日違うものを出してくる。この店はお客様を飽きさせない工夫を忘れていない。
それはシーフードカレーもそうだった。昨日はエビやイカ、カニがメインだったのに、きょうは貝がメインになっていた。ここまでやるか。
この店も繁盛するだろう。
こよりくん、次はどんなお店で驚かせてくれるのかな。
はい異世界シニアです。
三号店のオープンは順調に滑り出しました。
次回、異世界バイキング。無題(仮)




