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疑心の迷宮

 七日後。

 俺たちは、『疑心の迷宮』の近くに到着した。


 山の麓に迷宮の入り口があり、付近には街や村はない。

 馬車を置き、馬に水と飼い葉を与えて木に繋ぐ。


 そして、装備品や医療品などを確認すると、さっそく疑心の迷宮に向かった。

 山の麓に広がる森を歩いていく。

 冒険者ギルドから貰った地図通り、疑心の迷宮の入り口は、山の麓にあった。


「さて、入るぞ。警戒を怠るなよ」

「はい」

「ラジャー♪」

「ん」


 俺たちは疑心の迷宮に入った。


 ダンジョンの中は、『発光苔シャイン・モス』と呼ばれる発光する苔に覆われていた。


 天井や壁、地面に『発光苔シャイン・モス』が、自生している為、薄暗いが、照明の必要がない程度の明るさがあった。


 冒険者ギルドの話だと、このダンジョンは、トラップが非常に多いらしい。


 恐ろしいトラップが、あまりに多すぎて、このダンジョンに潜ろうとする冒険者ギルドが、非常に少ないそうだ。


「さて、どんなトラップがあるのか……」

 俺たちは注意深く進んだ。

 早速みつけた。


「全員、止まれ」


 全員が俺の指示通りに止まる。


「もしかして、トラップですか?」

「んにゃー? 特にトラップがあるようには見えないけど……」

「ん。全然分からない」


 俺は、地面にある石を拾って、前方に投げた。

 コロンっと石が床に落ちる音がする。

 石が落ちた床に魔法陣が浮かび上がった。


 そして、炎が魔法陣から吹き出た。

 ゴウっ!

 という音を立てて、猛火の火柱が上がる。


「魔法陣のトラップ?」


 ルイズが驚きの声をあげる。

 やがて、トラップの魔法陣の火が消えた。


「カイン、よく気付いたね。すごいにゃー♪」

「さすが師匠。頼りになる」

「私にはさっぱり見分けがつきませんでした。どうして、分かったのですか?」


 ルイズが、黄金の瞳に尊敬の色を浮かべて俺を見る。


「魔力に不自然な淀みを感じたんだ」


 トラップの魔法陣がある当たりから、不気味な魔力の波動のようなモノを感じたのだ。


 魔力にも、清浄な魔力や、邪悪な雰囲気の魔力など多種多様なパターンがある。

 経験を重ねると、それらを判別できるのだ。


「しかし、随分と威力が強い魔法陣だな。これは相当注意して進まないといけないぞ」

「確かに先程の火柱は直撃したら大変でした」

「こんがり焼けちゃうにゃー」

「初っ端から、トラップに容赦がない」


 美少女三人の声に緊張がこもる。

 俺たちは注意して進んだ。






 ダンジョンに潜って、2時間が経過した。

 こんなにトラップが多いダンジョンは初めてだ。

 落とし穴。

 魔法陣のトラップ。

 壁から硫酸が吹き出るトラップ。

 落石。矢が飛んでくるトラップ、その他諸々。


 今の所、出現する魔物はどれもD級以下で、あまり脅威ではないが、トラップに対する警戒で神経が削れる。


 俺がトラップ対策に集中し、魔物はルイズたちが倒すという役割分断のお陰で、ドンドン、ダンジョンを進めている。


「先生、すみません。私達ではトラップ対策になんのお力にもなれずに……」

「かまわない。適材適所さ。ルイズたちが魔物を倒してくれるから、俺はトラップに集中できるから有り難いよ」

「魔物は任せて♪」

「ん。師匠は私達が守る」

「頼りにしてるよ」


 俺は本気で言った。

 ルイズたちは本当に頼もしい。


「しかし、先生はよくこんなに上手くトラップを発見できますね」

「たんに経験だよ。勇者パーティーでは、トラップ対策は全部俺がしていたからな」


  トラップ対策は経験がものを言うからな。

 自画自賛になるが、トラップの感知なら、かなりの腕前だという自負がある。

 

 俺は冒険者ギルドの依頼に基づき、ダンジョンの情報を頭に入れながら進んだ。 


 トラップの種類。

 魔物の分布。

 道順。

 下の階層に移動できる転移魔法陣の場所。


 これらを暗記し、時折、メモする。

 あとで、冒険者ギルドに報告する書類を作らないといけないからな。


 俺の作業を見ていたルイズが、感心した面持ちで口を開く。


「先生の行動は一つ一つが、本当に勉強になります」

「あまりお世辞を言わないでくれ、照れちゃうよ」

「? お世辞ではなく、私は本心から申し上げてます」


 ルイズの黄金の瞳には、俺に対する純粋な尊敬の思いが浮かんでいた。

 ……なんだか、ルイズの純粋無垢な瞳が眩しい。


 先生として、今後も恥ずかしくない行動を心掛けよう。


 


 


 



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