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雲と花ep

「た…ただいま…?」

「あら…穂花ちゃんのことをたくさん愛している私にこんな遅くなるまで連絡一つ寄越さないなんて…たっぷりと()()()を聞こうじゃないの…」

 ——お母さん、いつの間に背中から阿修羅を当たり前のように出現させる技を身につけたんですか…?




「おっ…穂花じゃないか!!いやぁ、それにしてもびっくりしたぞ…!!まさか、あんな黒髪美人と手を繋いでるなんて、狡いじゃねぇか!!俺にもこっそりと…」




 お母さんに見向きもせずに、お酒でも飲んでいたのだろうか…? 頬を赤くしたお父さんが、千鳥足で僕の肩をぽんぽんと叩きながら…語りかけた途端——お母さんの背中から出ていた阿修羅が、お父さんを僕の肉眼では捉えきれない速度の技で気絶させた…。




 ——いや、この人、何考えてるの!!しかも、りっちゃん先生は僕の恋人だよ!!これに関しては自業自得だよ!!




「穂花ちゃん…まさか、遅くなった理由が女の子と逢引していたからってわけじゃないわよね…?」

 ——や、やばい。ここで三人目の恋人ができました〜なんて気軽に告げたら、お父さんと同じ末路を辿る…!!



『主…!!背中を見せるのじゃ!!後、お供物二つよこすのじゃぞ…!!全く…!!こんなくだらない事で妾は主を失いたくないのじゃ!!』

——背中!? あっ、そうか!!後、くだらないことなんかじゃないよ!!僕にとっては、エリスと戦うくらい危機的状況だよ!!



「も…もちろんだよ。僕の背中と腕とか見て欲しいんだけど…」




 お母さんが光よりも速く、僕の身体を確認する。




「複数の箇所が痣になってるわね…」

「少しドジを踏んで転んじゃってね…!!」

「なるほど…お父さんの言っていたのは、担任の東雲先生の事ね。でも、それだけだと手を繋ぐ必要も、こんな時間になることもないよう……」

「お、お母さん、僕お腹すいたの!!お母さんの手作り料理が食べたいなぁ…?」




 僕が上目遣いと両手を合わせてお願いの仕草を見せると、お母さんは即座に、任せなさいと言わんばかりにダイニングへと戻っていった。




 ——僕の人生、初めてのぶり…ゴホンッ。あざとさアピールで、なんとか誤魔化すことに成功できたっ!!

『ぷっふふふふ…くはははは、いやぁ、主の慣れていないアピールは最高に面白いのじゃ…!!』

 ——お供物のランク下げてやるっ!!




 隣で横に倒れているお父さんは、未だにピクピクっと身体が一定の間隔で動いていたが、「ふんっ!!」とだけその場で、鼻を鳴らした。




 その後、僕は自室へと戻り、そのままベッドに身体をダイブさせ、仮眠を取る。





 ◆◇◆◇



 暫くすると——一階のダイニングルームの方からお母さんの、僕の名前を呼ぶ声が聞こえたので、彼女の手料理であるふわふわのロールパンと牛肉のスープ、彩り豊かなサラダ、ぴりっと辛めのエビチリを食べる。




 その後、お風呂へと入り…身体を解して…リラックスして、歯磨きをし、今度こそ布団に身体を包まれた。




 先程、短時間とはいえ…仮眠をしていたにもかかわらず、再び僕が意識を手放すのは早かった。




 ◆◇◆◇



 四月三日




 窓から明るい陽射しと共に、僕は目を覚ます。許されるのであれば、もっと寝ていたい欲望に蓋を閉めて、制服に着替えた後、顔を洗い、自宅の玄関を出る。





 よーちゃんと玲緒奈は待ってくれているんだろうなと思っていたが、今日は二人の真ん中にもう一つのえがおが咲いていた。




「三人共!!おはよう!!それとお待たせ!!」

「穂花!!東雲先生がなぜ待っているのか…私は知りません…。説明してください…それとテストが終わった後…私の家に来てもらいますからね」

「本当だよ!!なんで東雲先生が、あたし達と同じように待っているのかな??」





「まぁまぁ、花山さん、月夜さん…()()()()()()()()()()()()()なんですから、仲良くしましょう」





「同じ…人を…想う…?」




「関係??それってまさか…」




「「又、穂花が浮気したー!!!!」」





 僕は二人のハモった声を聞いた瞬間——走ってレスタ魔法学院へ向かう。




 後ろから「「待てー」」と元気な二つの声と「これからも仲良くしていきましょう〜」と僕達三人を見守る声が僕の耳へと届く。




 弥生校長がいる校門まで到着したので、後ろを振り返ると——息を激しく切らしながらも、三人が僕の後ろへ追いついてきていた。




 そんな彼女達を強く抱きしめ、「三人共、僕が生きるのに欠かせないんだ。こんな優柔不断な僕だけど、これからもよろしくね?」とそれぞれの耳へ伝える。




 月と太陽はそれぞれ、ため息を零しながらも、肩をすくめて、了承の意を示し、雲はそんな二人に認められたことに喜ぶ。





 ——ありがとう。三人共、愛してるよ。






 心の中でそう想うのと同時に、今度こそ如月健斗にもエリスにも負けない事を強く心に誓った。



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