テストとお泊まり会?
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弥生校長に元気よく挨拶した後、りっちゃん先生は職員会議があるそうで、学院に入ってから別行動を取る。
僕達は下駄箱で靴を履き替えて、右手で扉を開け、先によーちゃんと玲緒奈を入室させてから、僕もAクラスの教室へ足を踏み入れる。
クラスメイトの面々は緊張している様子で、山田君と田中君は、わざわざ机をくっつけて、資料を参考に問題を出し合ってる。一方で田所さんと酒蔵君もぶつぶつと自分の席でつぶやいていた。
多分…余裕そうなのは僕達と宮本さんくらいだろう。
◆◇◆◇
キーンコーンカーンコーン
学院全体に響き渡るチャイムの音と同時に、教室の扉がいつもの大きな音とは異なり、ゆっくりと開かれる。
てっきり…りっちゃん先生特有のドジを踏むかと思っていただけに、これは予想外だった。
その後、りっちゃん先生は床で躓いたりする様子もなく、教壇へと行く。彼女の右手にはペン、そして左手には記録用紙みたいな縦長のような物がある。
——なるほど…。暗記試験ね…。僕の『女堕ち』では、ここまで具体的な描写をせずに、りっちゃん先生と対面して、問題の回答を答えて合格ってだけだったから、やはり、漫画の世界とこの世界は、別物であると認識を正すべきかもしれないなぁ…。
『主よ…遠くを眺めておるが、きちんと考えておるんじゃろうな?太陽と月は、この日のために、試験とやらを学んできたのじゃろ…?』
——それを言うなら、田所さんもなんだよね。結局、よーちゃんと玲緒奈の間を取って、僕の家になるのではないかな…って思うんだよね。
『…言われてみれば、そうじゃな』
「如月君とリュンさんはレスタ魔法学院を休学するそうです。後、昨日にもお伝えした通り、今から、暗記テストを始めます。それでは、黄泉さんから、扉を開けて、少し奥の方の廊下へ順に来てくださいね〜」
——なんで僕から!?
『そりゃ…お主は妾の契約者じゃから、他の生徒と違ってやる意味がないからなのじゃ…』
——あ…確かに…!!
僕は、椅子から立ち、教室の扉を開く寸前に、念のため、クラスメイトの顔を見ておこうと後ろを振り返る。
よーちゃんは、真っ直ぐな視線で僕に送りつつ、親指を突きつけるポーズを——一方で、玲緒奈は目を瞑り両指を交差させ、祈りのポーズをしている。
田所さんは拳を握って、ファイトー!!のポーズを僕へ送ってくれた。それ以外のクラスメイトは、各々の資料と睨めっこをしている。
◆◇◆◇
教室を出て廊下を十メートルほど進むと、パイプ椅子に腰掛けているりっちゃん先生がいた。
彼女の前にはもう一つパイプ椅子があり、恐らく面談のような形式で行う試験形式なのだろう。
「黄泉さん…いいえ、穂花!!やっと、二人きりになれましたね!!穂花の試験は私と手を繋いで、将来の事を話し合うだけですよ?……でも、これをしなければ、教師としても、大事な人としても不合格にします!!」
目を輝かせながら、パイプ椅子から立ち上がり、断言するりっちゃん先生を見て、笑みが零れてしまう。
『相変わらず、ヘタレな癖にリードを取りたがる女子じゃ。なぜ人間は、そんなに歳を気にするのじゃろうな』
——アフロディーテ、その答えは、人間は神と異なり、時間が有限だからだよ。
『主は…どうなんじゃ…』
——僕も有限さ…。
『そ、そう…じゃ…な…』
「…で、ですね?……ちゃんと聞いてますか?私、子供は三人は欲しいと思っ…………あ、そうだ。私の……にもいつ会わせれ…良いんでしょうか…?少し変…人達なんですけど、…………で、………」
珍しく、歯切れが悪いアフロディーテの返答に違和感を感じながらも、特に問題ないかなと判断して…りっちゃん先生の将来の話を右耳から左耳へと聞き流していた。
——女同士で子供作れない事なんてりっちゃん先生なら知ってるはずなんだけど、きっと、彼女が現実を度外視して、夢中になりすぎてるから…だよね。
『む…妾と契約してる主なら可能なのじゃ。こう見えて愛と美と性を司る神なのじゃ。そもそも、わざわざ最高神である妾が嘘で太陽を堕とすわけないのじゃ』
——作者の僕でも知らない情報!?きたんですけど!?
僕の中で、女の子同士で赤子を作れるのかを聞いてみたい好奇心と仕組みを知ると今後の女堕ちを躊躇してしまいそうになる気持ちで葛藤する。
心の中でジレンマを起こしてる間に、十分が経過したみたいで、強く握っていた手が解放されていた。
不思議そうな表情をする彼女へ、今できる精一杯の笑顔を送りながら「りっちゃん先生、そうなると僕も嬉しいよ!!」と告げ、お辞儀をしてパイプ椅子から立つ。
◆◇◆◇
その後、教室へ戻りよーちゃん達に僕なりの満面の笑顔を浮かべて、間接的に合格した事を告げると、彼女達だけでなく、他のクラスメイト達も僕の合格を察したのか…先程よりも、険しい目付きで資料に集中する。
——なんかごめんなさい…!!
彼らの様子に居た堪れなくなり、僕は心の中で謝った後、雲一つない青空の窓を眺めているうちに…今朝の眠気が僕を再び、甘い誘惑を耳元へ囁き…暗闇へと誘う。
……
………
…………………
………………………………
「穂花!!」
「穂花ー!!」
「黄泉さん!!」
僕の名前を呼ぶ声と共に…身体が揺れている感覚を覚えたので、現実に戻ると——よーちゃんと玲緒奈、田所さんが僕の机を囲んでいた。
「ん…あぇ…ほく…眠ってた…?」
「うん…ぐっすりと…可愛かった…」
「そうだよ!!パパに頼んで額縁に飾りたいくらい!!」
「美少女が寝る姿ってこんなに胸が高鳴るのですね!!」
——よーちゃん…それは絶対にやめてね!!
「さてと…それでは今の時間を持って黄泉さんの家へお泊まり会を開催したいと思いまーす!!」
「イェイ…?…?」
「イェーイ!!」
——ですよねー…。お父さんは…良いや。お母さんが許可を出してくれると良いけど…。
「ん…まぁ分かったよ。お泊まりに必要な準備物が終わったら、僕の家に来てね!!って田所さんは、僕の家の場所がわかるかな…?」
「ん、うん!!黄泉さんが寝ている時に、二人から教えてもらいましたー!!梓の家と黄泉さんの家って意外と近所なんだね!!初めて知ったよー!!」
「へぇ、僕も初めて知ったよー!!この三日間は登校時間が違うから会わなかっただけかもね!!」
咄嗟に話の流れを合わせたものの…近所に設定した覚えが僕の記憶にない…。
それに付け加えて…サブキャラだった彼女の家の描写をする事がなかったから、作者の僕にもわからない。
もしかして…僕が描いていない所を誰かが補充している?——は流石に…それはないかな。うん。
◆◇◆◇
その後、一通り雑談に花を咲かせていると、教室に残っている生徒は僕達だけだったので、僕達も帰宅の準備をして、教室を出る。
学院を出る途中に、四人で話し合った末——夕陽が顔を出す前に僕の家へ集まるために、今日だけは各々が最短のルートで帰る事に決定した。
よーちゃんと玲緒奈とは早々に道を別れ、僕は家が近所の田所さんと雑談しながら、自宅の扉を開く。
◆◇◆◇
「ただいまー!!」
「あら…私の穂花、お帰りなさい。今日は寄り道せずに帰ってきたのね…?」
部屋を掃除していたであろう窓拭きの手を止め…帰ってきた僕へ鋭い眼光を飛ばしてくる。
——まだ阿修羅は出ていないね…!!でも、どうやって事情を説明して…説得しよう…。少なくとも、彼女達が僕の家に来るまでにはなんとかせねば…!!
『愉快愉快なり!!…本当に主は見てて飽きないのじゃ』
僕の緊張した様子を見て、アフロディーテの呑気に笑う声が届いたものの…それを無視して、両手を握り、お母さんに声を掛けた。




