4
4月15日 月曜日
昨日飲んだ薬が効いたのだろう。足はまだ動かないけれど、腕は動くようになった。
多分、腕はまだ治りやすかったのだと思う。足は一昨日から動かなかったから、まだ時間がかかるのだと思う。
今日は平日で、普段ならば大学へ行っているはずなのだが、足が動かない状態では行くに行けない。
ミサイドがくれた薬は、これから毎日飲まないといけないらしい。
一日でも欠かせば、薬は効かなくなってしまい、昨日のような事態に陥るという。
昨日から、ある感覚が私を襲う。
私の体が私のものではなくなっていく感覚が。
自分の体であるはずなのに、自分で動かすことができないのは、とてももどかしい。
それに加え、このだるさ。
気分が悪い。
吐き気がする。
この眼で見ているはずのものが、ぐるぐると脳内でまわる。
ぐるぐると。
くるくると。
それに酔って、私は体の感覚を手放すのだ。
これは私の体ではないと。
これは私の感覚ではないと。
私の中の誰かが――私の中の、何かの記憶が、そう言っている。
それに対して私という自我は、これは私の体だ、これは私の感覚だ、と叫び続けるのだ。
そんな証拠、あるわけないのに。
きっとそれを証明できるのは、創造主だけなのだろうし、私のような愚かな人間如きには、分からないのだ。
分かってはいけないのだ。
まわり続ける頭の中で、今日はミサイドに会っていないな、とのんきに考えてみる。




