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城の中の魔王、外界を知らず!  作者: niposan


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第2話 魔王の朝

近くの森からだろうか、かすかに鳥のさえずりが微かに聞こえてくる。

昨日勇者戦を終えてすぐに眠りについていた俺は、窓から差し込むやわらかい朝の光で目を覚ました。


朝か……


目をこすりながら起き上がり、ぼやけた視界で辺りを見回す。

昨日の朝とはまるで違った光景に改めて絶句する。

床や壁、天井のあちこちには破壊痕が目立ち、元々置いてあった家具は部屋の端で粉々になってしまっているのが目に入った。

昨日の夜に最低限の家具を再配置した時もボロボロだとは思っていたが、まさかこれほどとは。

ベッドの上でぼんやりと昨日の戦いを思い返していたとき、ドアをノックする音が聞こえた。


「魔王様、失礼します。」


声と共に一人の執事が入ってきた。

俺と同時に魔王城に入った最古参の執事、”ゴース”だ。

これまでの長い付き合いのおかげで、今はもうまるで親子のような、お互いに気を許すことのできる関係になっている。


「こちらが朝食です。今日は勇者戦の翌日なのでゆっくりとお休みください。今日のお仕事ですが……」


いつも通り机の上に朝食を置き、淡々と話を進めていくゴース。

ふとメモから視線を上げたゴースの目が部屋中の破壊痕で止まった。


あ、これ、まずい。


部屋の温度がいくらか下がったような寒気を覚えた。

ゆっくりと俺の顔を向き直したゴースの口がゆっくりと開いた。


「魔王様……いつも、派手な戦闘は控えるよう何度も言っていましたよね……?」


笑顔で、それも優しい言い方だった。

めったに感情をあらわにすることのないゴースの口調や言葉遣いは優しいが、目が笑っていない。

勇者戦の後は毎回こうなるからだろうか、明らかに怒っている。


「はい……」


そう言われた俺はうつむいて黙り込むことしかできない。


やったのは勇者なのに、怒られるのは俺なんて……

理不尽だ!


そんな不満は胸の内にしまい込んでおく。。

へたに反論しても事態が悪くなるだけだ。

説教を受けるモードに入った俺は、耳からの情報を完全にシャットダウンし別のことを考えることにした。


お腹すいたな……早く朝ごはん食べたいな……

俺は悪くないのに……勇者、次会ったら覚えてろよ!

話長いな……まだ終わらないのかな?




「こんなことも毎回言っているような気がしますが、次からは気をつけてください。まあ、言っても無駄でしょうがね。」


ゴースは半ば吐き捨てるようにそう言った。

どうやら説教が終わったようだ。

呆れた顔をこちらに向け、ゴースは朝食とスケジュールのメモを置いて部屋を出ていった。


やっと終わった……


説教が終わると、俺は間髪入れず冷めかかった朝食に手を伸ばし、一緒に置かれたメモを見る。

そこには今日の予定が簡潔に書かれていた。



ノーグ様 予定


12:30 昼食

13:00 幹部会議

16:00 書類整理

18:30 夕食

19:30 打ち合わせ



このメモを見る限り、今から昼食までは予定が入っていない。

ちょっとした休みのつもりなのだろう。


朝食を食べ終わった俺は、日課の起床後のシャワーを浴びようと席を立った。

とちょうどその時、ドアをノックして執事が入ってきた執事が朝食の皿を片付けていった。



風呂場に入り、壁に作った窪みに魔法をセットしていく。

熱湯を出す魔法、水を拡散させる魔法、勢いを調節する魔法……

今となってはもう手馴れたこの工程。

水浴びをどうにか暖かい水で、自分の部屋でできないものかと試行錯誤し、小型化・簡略化を重ねてできた魔法たちだ。

日々お世話になっているこれらの魔法にはよりいっそう愛着がわく。


絶えず降り掛かってくる熱湯が汗や埃、古い皮膚を落としていく。

まるでお湯が自分の中に吸収されていくかのように、じわじわと体が暖かくなっていくのが感じられる。


体の芯まで熱湯に浸り、新しい自分になったような気分がした。

俺は満足感と共に風呂場から出て服を着、ベッドの上に寝転がった。


思ったよりも疲れていたのだろうか、あるいは風呂上がりで温まった体温が冷めていくせいだろうか、俺は気づくと目を閉じて眠ってしまっていた。

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