18.鋼鉄の心臓部、二つの文明の交差点
風車の内部、唸りを上げる巨大な軸受けを前にして、二人の「技術者」の対話が始まりました。
風車の塔の中は、外の爽やかな風とは対照的に、油の匂いと重低音の振動に満ちていました。ピコは、テラじいちゃんから教わったように、慎重に機械の隙間を覗き込みます。
「Wow... It's so big, but simple.(わあ……大きいけど、単純な構造だ。)」
ヨコタの地下にある、高密度で複雑極まりない超小型核ジェネレーターに比べれば、この風車は驚くほど大柄で、力任せな機械に見えました。
『ピコ、この機械の設計図をスキャンしました。寸法単位は「ミリメートル」……旧時代の国際標準規格です。』
チェンの声が耳元で響きます。ヨコタ基地では、アメリカ由来の「インチ」や「フィート」が使われていたため、ピコにとって「ミリメートル」という単位は新鮮で、どこか異国の記号のように見えました。
診断、悲鳴の原因
ピコは、激しく振動している発電機の軸受け部分を指さしました。
「ゲンさん、ここだよ。このベアリングの隙間が、もう限界なんだ。だから羽が震えて、悲鳴をあげているんだね」
チェンが日本語に訳すと、ゲンは苦しそうに眉を寄せました。
「やっぱりそこか……。だが、そんな精密な鉄の玉や受け皿は、今の俺たちの鍛冶場じゃ作れない。壊れたら、この風車は止めるしかないと思っていたんだ」
奇跡の提案「3Dプリンター」
ピコは必要な寸法をチェンにメモさせると、事もなげに言いました。
「大丈夫。この大きさなら、ヨコタにある3Dプリンターで作れるよ。データを持って帰って、また明日持ってきてあげる」
「……スリーディー、プリンター?」
ゲンは耳慣れない言葉に呆然としました。
「今の時代に……一からベアリングを作れるというのか? それは、魔法か何かなのか?」
『いいえ、ゲン。それは魔法ではなく、粉末状の金属を積み上げて形を作る「造形技術」です。ヨコタのジェネレーターを維持するために、私たちは今もその装置を稼働させています。』
チェンが誇らしげに答えると、ゲンはその場に座り込みそうになりました。
「……信じられない。俺たちが『呪われた光』と呼んで遠ざけていた場所には、失われたはずの『作る力』がまだ眠っていたのか」
繋がる未来、ヨコタと立川
その日の帰り道、ピコはスクーターに乗り込みました。目的は、風車の部品を「印刷」するために一度ヨコタへ戻ることです。
フウカの寂しさと期待。「ピコ、明日、本当にまた来てくれる?」と不安そうに聞くフウカ。ピコは「約束だよ(I promise)」と、覚えたての日本語で「ヤクソク」と答えます。
ゲンの期待、ゲンはピコの背中を見送りながら、彼が持ってきた「技術」が、自分たちの村を救うだけでなく、二つの世界を繋ぐ架け橋になることを確信していました。
テラじいちゃんへの報告。ピコは、ヨコタの村で待っているテラに、立川で見つけた「風の力」と「新しい友達」のことをどう話そうか、ワクワクしながらチェンと相談するのでした。




