孫悟空はダメな猿?目覚める新たなる力?五行の力!
三蔵の隠していた身体の秘密、孫悟空の身体の異変。
一体旅はどうなるのか?
は~い!沙悟浄で~す!
私達はまだ気付いてはいなかったのです。
孫悟空兄貴の中で起きている異変に・・・
太白金星仙人様と別れて間もなく、私達はその異変に気付く事になったのです。
私達は旅の荷物を背負い砂漠道を歩いていました。
「ん?ん?ん?」
「どうしたら?」
「ん~俺様何か変わったか?」
「ああ…いつもと変わらない馬鹿猿らな?」
「何だと!」
孫悟空兄貴と八戒兄貴が揉めていると、
「お前達うるせぇ!」
三蔵様が毎度の事ながら叱咤したのです。
「孫悟空兄貴?何か変わった事あったのですか?」
「いや~何か…むずむずするような?しないような?いや?何でもないな!多分!大丈夫!問題なしだ!」
「?」
私は孫悟空兄貴の思い過ごしかと、話はそこで終わらせたのです。
「それにしても…」
「こりゃ、うじゃうじゃいやがるぜぇ…」
「骨が折れるらな…」
「あわわ…」
私達の向かう方向には妖怪の盗賊達が私達を待ち構えていたのです。
そもそも妖怪は常に人を襲う。
それは餌として。
しかし妖怪達が好むのは霊力のある人間。
つまり僧侶達なのです。
霊力のある僧侶は妖怪にとってレア物で、僧侶を食べた妖怪は妖力が飛躍的に増すのです。
しかし霊力を持つ人間は、逆に襲って来た妖怪を退魔する力を持つ者もいる。
そこで妖怪達は徒党を組んで楽に僧侶を狙う妖怪が増えてきているのです。
そんな訳で超ウルトラスーパーレア物の三蔵様の存在は妖怪を呼び寄せても仕方ないのです。
さてさて、今日も面倒な妖怪退治の時間ですね~
私達は崖に挟まれた道を歩いていました。
そこから離れた場所から私達を覗く者達が?
「見ろよ僧侶だぜ!」
「でも、何で僧侶と妖怪が一緒にいるんだ?」
「しらねーよ!」
「きっと後で食うために連れ回しているんじゃねーか?」
「じゃあ、俺達が奪っちまおうぜ!」
「奪え!奪え!奪え!奪え!」
妖怪達のテンションが上がっていく。
そんな妖怪達の妖気を感じた私達は、
「お前達!」
「またかよ!」
「まったく何処にもいるらな?」
「そうですね!」
私達はめんどくさそうに戦う用意をする。
「当然、三蔵は?」
「当然!金にならん戦いはせん!お前達が片付けろ!」
「だと思ったけどな…」
すると私達目掛けて上空から巨大な岩が降ってきたのです。
物凄い轟音とともに砂埃が立ち込める。
そこには岩に潰され一網打尽の私達が倒れていたのでした。
暫くすると人の姿をした妖怪達がぞろぞろと集まって来たのです。
「やったか?」
「こりゃ一たまらないぜ!」
と、そこに?
「そうだな!」
「こりゃ…生きてる訳ないらよ!」
「可哀相です!」
岩に潰された私達を覗き込む妖怪達と・・・私達?
「ん?誰だ?お前達?」
「おっ?石を落下させておいて人が悪いな?」
「人が悪いじゃなくて妖怪ですから悪いのですかね?」
「何を上手い事も言ってるらか!」
会話中の妖怪達に割り込んでいたのは、潰れたはずの私達が目の前にいたのです。
「ぐわぁ!何でここに??」
すると岩に潰された私達の姿が消えていく。
そうです。
潰されたのは分身だったのです。
「へん!甘いぜ!」
「饅頭くらいにな!」
「エッ?甘い物…甘い物…何も浮かばない…」
私達は完全におちょくっていました。
「ふざけやがってぇ!かかれぇ~!」
妖怪達は怒り狂い襲って来たのでした。
人の姿をしていた妖怪達は次第に本来の妖怪の姿へと変わっていく。
獣の姿をした妖怪の姿へと!
「毎回同じリアクションですよね…」
「ヘッ!B級妖怪がグルになってぇ…これが本当のB級グルメってか?」
戦っている私達の会話が届いたのか、三蔵様がすかさず
「つまらん!」
「三蔵きびちぃ~な?では改めてっと!俺様達がいる限り三蔵には指一本触れさせないぜぇ!」
孫悟空兄貴が勇猛果敢に妖怪達に向かって行く。
如意棒を振り上げ、振り回し、そして!!
ボッコボッコにされたのです??
あれ?負けちゃいましたよ?
「しゃらくせぇぜ!」
孫悟空兄貴は妖怪達に踏まれていましたが、如意棒を振り回して脱出し、再び妖気を練り上げていく。
「あれ?」
しかし妖気を練り上げていたはずの孫悟空兄貴の様子がおかしいのです。
いや、もう孫悟空兄貴は最初からおかしいのですが、
「あれれ?身体中の妖気が練れないぞ?何で?何で?」
「あっ…」
そんな無抵抗状態の孫悟空兄貴に向かって、再び妖怪達が一斉に襲い掛かって来たのです。
「うきゃあああああ!」
妖怪達に殴り蹴られる孫悟空兄貴。
「何をやってるらか?あの馬鹿猿!」
「大丈夫ですかぁ!孫悟空兄貴!」
ちなみに三蔵様は石に腰をおろして座り、懐からタバコを出してふかしはじめたのです。
「八戒!手助けに行ってやれ」
「仕方ないらなぁ!」
三蔵様曰く
「雑魚相手に何故に俺が動かなければならないのだ?雑魚には雑魚(お前達)でじゅうぶんだろ?」
・・・との事です。
そういえば金蝉子さんとの戦いの後から、あんまり戦闘に参加しなくなったような?
仕方無く八戒兄貴は大刀を手に、妖怪達の群れに向かって行ったのです!
「うらあああ!」
八戒兄貴は妖怪達に踏まれ、リンチにあっていた孫悟空兄貴の尻尾を掴み、私達の下に放り投げ救出したのでした。
「孫悟空兄貴!どうしちゃったんですか?」
「わ…解らないぞ?どうなっちまったんだ俺様?妖気が練り合わないんだよ~??おかしいぞ?力が全く出ないぞ~」
「…………」
三蔵様はその様子を見て無言でいました。
「うりゃああ!ふん!」
孫悟空兄貴は妖怪達に向かって妖気弾を放つが、ヘロヘロ~ポテンと落下する。
「うぉ~!俺様、気が使えんぞぉ~!」
「本当にお前は気が利かない猿らな!」
「お茶入れます!」
「そういう事は言われる前に入れるらよ!」
八戒兄貴と孫悟空兄貴のコントに、
「て、何の話をしているんですかぁ~!」
「おかしい!本当にどうなってしまったのだ俺様!?」
仕方なく、使えない孫悟空兄貴を後回しにして、八戒兄貴と私は妖怪達に向かって行ったのです。
「お…俺様…使えない?ダメな子なの?俺様…いや…僕…
僕、いらない子なの?クスン」
孫悟空兄貴は地面に『の』の字を書いてイジケ始めたのでした。
「良いんだ…僕なんて、ただの猿なんだ。戦えない猿は、バナナ食べて一生過ごすんだ…クスン」
完全に自信を無くした孫悟空兄貴って、ああなっちゃうのですね~
正直、ウザッ!!
その時孫悟空兄貴の肩に
「ん?」
背後から三蔵様が手を置いたのです。
「三蔵?ぼ…僕…弱っぽなお猿さんになったみたいだよ…メソメソ」
「見苦しいわ!」
「りゃってぇ~」
泣きべそかく孫悟空兄貴に三蔵様は話を続けたのです。
「猿、俺の言う通りにするのだ!」
「えっ?う…うん」
「先ずは力を抜いてみろ!」
「ん?力を抜くのか?」
すると孫悟空兄貴の身体に今まで感じた事ない感覚が?
「あん!…なんかムラムラしてきた~あ~~~!」
気持ち悪く悶える孫悟空兄貴の頭を三蔵様が殴ったのでした。
「痛~」
「ふざけるな!今度ふざけたら、殴るからな?」
「殴ってから言うなよな…」
「猿!次に大地の自然の気とお前の気を同化させるのだ!」
「えっ?えっと自然と?…こうか?」
孫悟空兄貴はその場で寝転がり大地を抱きしめるように、昼寝を?
「アギャア!」
三蔵様が投げた石が孫悟空兄貴に直撃し、頭を抑えながら起き上がる。
「いてぇ~!冗談だよ!まったく。で、こうかな?」
今度は真面目に瞳を綴じて脱力をする孫悟空兄貴。
全く最初から真面目にやれば怒られないのになぁ~
そんな無防備の孫悟空兄貴に向かって襲い掛かって来る妖怪達を近付けまいと、八戒兄貴と私がカバーに入ったのです。
ちなみに三蔵様はタバコをふかしながらその様子を見てるだけでした。
やっぱり丸投げなんですね?
そんなこんなの最中・・・
孫悟空兄貴が変な声を出し始めたのです。
「あん!あああ…なんか…ムズムズ~
…自分の中の…アッ!…な…何かが…はじけるぅ~! ああああ~!ギャア!」
気持ち悪かったので三蔵様が再び石を投げて命中させました。
「いってぇ~!お前がやれと言ったからやってるのに、石投げるなんて酷いだろぉ!バァカ!バァカ!バァカ!サンゾ!」
すると、孫悟空兄貴の身体から何やらモヤみたいなものが噴き出して来たのです!
「おぉ!何だ?何だこれ?何度も三蔵が殴ったり石を投げつけるもんだから、俺様が壊れたぞ!」
「馬鹿を言ってないで、その状態で意識を眼に集中するのだ!」
「はぁ~?今度は眼に集中だぁ?」
訳が解らないまま、自分の眼に意識を集中させる孫悟空兄貴。
すると?
「何だ?これぇ~!」
「猿よ?今、お前の眼には何が見えている?」
「えっ?」
孫悟空兄貴の眼には自分の身体から、四色のモヤが出て来ているのが見えていたのです。
赤、青、黄色、緑?
「何だこれ?気持ち悪いぞ!?」
孫悟空兄貴はビックリして、自分の手に絡み付く赤いオーラを右手で払うように触れると?
その赤いオーラのまとわりつく右手から炎が立ち込めたのです!
「うわっ!あれ?熱くな~い?」
試しに青いオーラに手を触れると、今度は水が湧き出して孫悟空兄貴のはびしょ濡れになったのです。
「ウッジャバァ~」
そこで孫悟空兄貴は何かを掴んだようで?
「頭が濡れてスッキリした!ようやく理解したぜぇ!俺様!」
孫悟空兄貴は次に黄色のオーラに触れると、そのオーラを襲い掛かって来た妖怪達に向けて投げつけたのです!
「次は当然!これだよなぁ!」
黄色いオーラは雷と化して、八戒兄貴の後ろから刀を振り下ろそうとしていた妖怪に直撃したのです。
「うわぁーー!」
更に孫悟空兄貴に向かって来た妖怪達には、白いオーラを振り払ったのです。
それは気流をうみ妖怪達の動きを止め、すかさず動けなくなった妖怪達を、八戒兄貴と私がボコりに入ったのです。
「おっ?面白いぞ!これ!」
それは炎、水、雷、風の五行の気でした。
「キッカケは教えた!後は好きにやってみろ」
三蔵様は全てを理解していたのか、孫悟空兄貴の新たな力を見ていたのです。
「ハハハ!それに何か身体が軽くなったみたいだぜ!」
すると先程から乱れていた孫悟空兄貴のオーラが安定していく。
「そうと分かれば先ずは!」
孫悟空兄貴は両腕に赤いオーラを凝縮させていくと、次第にそれは業火の塊と化して火炎弾となる。
その火炎弾を妖怪達に目掛けて投げつけると妖怪達を燃やし消滅させた。
次に孫悟空兄貴の身体から風が巻き起こり竜巻を起こしたかと思うと、孫悟空兄貴の周りを囲んで来た妖怪達を吹き飛ばす!
更に更に!
孫悟空兄貴の左右の手に巨大な水の塊が現れ、残っていた妖怪達に向かって投げつけた後、そのまま飛び上がり雷を落としたのでした!
「さぁ!俺様をナメた事を後悔しやがれぇ!」
辺り一帯は雷に撃たれた妖怪達と・・・
雷から逃げ遅れ、巻き込まれた八戒兄貴と私が倒れていたのでした。
酷い・・・
「三蔵!すげぇ!すげぇ!何だよ?これ!」
三蔵様は突然手に入れた力に喜ぶ孫悟空兄貴に説明する。
「それが五行の力だ!」
「五行?」
五行とは炎、水、雷、風…それに土の属性の力の事です。
本来土属性だった兄貴に、いつの間にか他の属性が備わったのです?
ちなみに八戒兄貴と私は水属性の力を使えるのですよ~
と、その時、
「ウッ!」
再び孫悟空兄貴が腹を抱えて苦しみ出したのです?
同時に孫悟空兄貴が纏っていた四つのオーラが孫悟空兄貴の身体から吹き出したかと思うと空中で分かれて塊となって凝縮していく?
宙に浮かぶそれは、まさに四色の卵のようでした。
「なんか卵になっちゃいましたよ?」
「食えるらか?」
「おおっ!俺様から卵が!?」
「あれ?」
すると、その卵が突然ひび割れたのです。
「今度はなんらか?」
「俺様の子供か!?」
「いやん!」
「何がいやん!だ!」
「見るら!なんか出て来たらよ!」
卵が割れたと同時に孫悟空兄貴に向かって何かが飛び出して来たのです?
「うええ??」
そこに現れたのは?
炎を纏うヒヨコに、雷を放つ子猫に、水に濡れた亀に、気流に覆われた蛇の姿をした可愛らしいマスコット達だったのです。
「何だ?コイツ達は!あああ!」
その四匹は光り輝くと再び孫悟空兄貴の身体の中へと入って消えてしまったのでした。
「ヒィイイ!怖い!怖い!あいつ達!また俺様の中に入っていったぞ?俺様大丈夫なのか?」
「腹をかっさばいて引きずり出すらよ!」
「ヒィーヒィー・ふぅ~です!孫悟空兄貴!」
「いやぁああ!」
と、私達が騒いでいる中・・・
三蔵様は遥か上空を見上げていました。
「あの、仙人…とんだ置き土産を…」
三蔵様が見上げた遥か上空に、小さな雲に乗った者が私を覗いて見ていたのです。
「フォッフォッフォッ…」
それは桃源郷でお世話になった太白金星仙人様でした。
「孫悟空よ!元々その聖霊獣の卵は、お前が封印されていた岩から生え出た桃の枝から現れたのじゃよ。つまり本来の在るべきお前の元へ戻った訳じゃな~」
えっ?それって最初から渡すつもりだったのですかね?
「そもそもその聖霊獣の卵はお前にやる物だったのじゃよ?これでお前に不足していた五行の力が備わった訳じゃ!今後のオヌシ達の前に降り懸かるであろう険しく困難な旅には、必ず必要となろう力じゃ。運命の子達よ!儂に出来る事はこれだけじゃ・・・
今後、お前達の旅の末に何が待ち受けているかは」
「蟹の味噌汁…」
ほえ?
「神のみぞ知るじゃ!」
「いや…神でも解らぬ未来に向かって進むのじゃよ。フオッフオッフオッ…」
すると太白金星様の姿は霧のごとく消えていったのでした。
次回予告
孫悟空「あははは!俺様の時代来たぁ~!滅茶苦茶強くなってないか?五行だったか?この力があれば何でも出来る!世界征服も夢じゃないぜ!」
沙悟浄「馬鹿言ってないでくださいよ!そんな事より次話から新たな展開で、もうピンチピンチで、ドッキュンバンなんですから!」
孫悟空「何だよそれ?」
沙悟浄「実は、とんでもなく強く、凶悪な妖怪達が現れるみたいなんですよ」
孫悟空「へん!しゃあらくせえぜ!そんな奴達、俺様の新たな力で!いや?それでも足りないと言うなら、再び俺様の転生変化を見せてやるぜ!あはははははははははは」




