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プロローグ

〜プロローグ〜


2045年 10月30日


この暁市が生まれて100年目の記念の年。

暁市の商店街や、デパート。駅などは100年の記念として一年中を通してのイベントに忙しくなっている筈だった。

しかし当初の予定を裏切られる、とある事件がこの暁市を震撼させていた。


「警部! また出ました! これで4人目です!」


警部と呼ばれるこの人物は暁署の警部補『平(たいら) 一直(かずなお)』

その名の通り、どんな事に対しても真っ直ぐで曲がった事が大嫌い。

そして、辛抱強く捜査をする事から暁署内でもその地位以上に信頼を得ていた。


「またか! ヤス! 今度はどこだ!!」


平にそう呼ばれた男は、『元巻(もとまき) 康弘(やすひろ)』

今年の新人警官で若干22歳でありながら全国の新人の中ではトップクラスの『嗅覚』を持っている事から平が直々に、異例中の異例で自分の補佐として大抜擢したのだった。


「場所はまたしても暁公園です。被害者のそばに落ちていたバッグから身分証が見つかりまして、照合の結果本人と断定。年齢は24歳。市内の旅行会社に務める佐藤美香と言う女性です。」

「くそ! 何でだよ! 何で暁公園ばっかりで事件が起きるんだ!あんなに厳重に警備していたんだぞ!


平は、自分の机を大きく叩いた。


「ええ、私もそれは思ってました。1人目も暁公園の池のほとり。2、3人目も暁公園のトイレ。そして今回も暁公園。なぜ暁公園ばかりでしょうか?」

「わからねぇ……ターゲットもバラバラ。脅迫文なんかもありゃしねぇ」

「ああ、それと……」


元巻が、手に持っていたファイルから一枚の写真を取り出し、平の目の前に置いた。


「ッ!! 次は『左腕』か……」


写真には、左腕が無くなっている女性の姿が痛々しく写し出されていた。


「ええ、女性には暴行の後は見当たりませんでした……この左腕だけが目的だった様に、其の外は目立った外傷もありません……」


平は、自分の椅子に腰を下ろしかれこれ20年吸い続けている煙草に火を点けた。


「ふぅ……。1人目が右足。2人目が……左足か。3人目が右腕で今回が左腕……。まあ、バラバラ殺人事件だよな……なあヤス、お前はどう思う?」


平は自分の捜査の一環として、まず第一に自分一人で考えない事にしていた。

それは、自分の考えに自信がない訳では無く、人間一人一人の力の限界を知っているからであった。

それゆえ、色々な人の意見を聞き、吟味し全員で事件を解決に導いて行く、その手腕が信頼を得る要因の一つとなっている。


「ええ、まず私が気になったのは切断面です」

「切断面?」

「はい。これを見てください」


元巻は先ほど平に見せた写真の横に3枚の写真を並べた。


「これが、1人目の被害者の右足の切断面です。人間の足って骨もあるし、筋肉もある。思ったより硬いって言うのを鑑識の梅さんから聞きました。だから、物凄く切れる刃物でも、切断面は肉が削ぎた様な形になる。それなのに、見てください。この切断面は刃物を使った形跡が無いんですが『真っ直ぐ綺麗に切断されている』んです」


「ほう」


平は2本目の煙草に火を点けて、元巻の話を静かに聞いている。


「で、この2人目の左足。これも1人目と同様『真っ直ぐ綺麗に切断』されてます。3人目も同様です。しかし今回の4人目の切断面がどうも違う」

「違う?」

「はい、ぱっと見は分からないんですが、よく見てみると『斜めに切断』されているんです」

「斜めに?何の為に?」

「それは分かりません……切断場所が平坦では無かったか、あるいは何かに邪魔をされて真っ直ぐに切断出来なかった……か」

「何かに邪魔をされた?何が言いたい?」

「いえ、これは鑑識待ちなんですが……もしかすると、被害者は『生きたまま切断された可能性がある』かもしれません」

「……」


平は元巻のこう言う所に、自分の補佐に大抜擢した理由があると感じていた。

自分一人ではもしかしたらこの違いに気が付かないかもしれない。

ここで結論を出すのは早計だが、間違ってはいなかったと平の心の中ではそう感じていた。


「なるほどな。よし、ヤス! 今から行くぞ!」


平が椅子に掛けていたジャケットを羽織りながら、元巻に指示を出す。


「平さん、行くってどこへ?」

「決まってるだろ! 暁公園だよ! 刑事の基本は足だ。足を使って調べるぞ!」

「はい!!」


「その必要はありません」


ジャケットを着た平がタバコを消し、元巻が写真をファイルに直して刑事課を出ようとした時に

奥から軍服に身を包んだ数人が廊下の奥からやってきた。

帽子を深く被り、その横から腰まで伸びた銀髪の女性が平にそう告げた。


「あなた達は何ですか!?」


元巻がそう言うと同時に、その時刑事課にいた他の警官達も2人の元に集まってくる。


「ヤス……ちょっと待て。その軍服、その軍章……あんたら、もしかして『暁軍』か?」


平が顎の無精髭をこすりながら何かを思い出したように、その軍服の女性に問いかけた。


「平さん、暁軍ってまさか!」

「ああ、俺も実際に見たのは始めてだが、俺が新人の時だから、20年前か。その時の上司のゲンさんに聞かされた事があった。……自衛隊とは別に日本政府に設立された唯一無二の日本国の独立軍、それが暁軍だ。目的は一切分からねぇがな……実際に存在していたとはな」


平を始め、その場にいた暁署の全員が、目の前に起きた状況を飲み込めないのか、銀髪の女性へ視線を外す事が出来なかった。


「平警部補、よくご存知ですね。まさしく私達は暁軍です。そして、私は『柊(ひいらぎ) ミカサ』。暁軍特別治安維持部隊司令官です」


そう言うと柊ミカサは、被っていた帽子を取り平に向かって敬礼を行った。

その姿は、とても美しく、見るもの全てがそのオーラに圧倒され、柊ミカサに魅入っていた。


「その司令官が、この暁署に何の用ですか?」


平は、敬礼を返し柊に訪ねた。


「そうですね……時間があまり御座いませんので、単刀直入に言わせていただきます。先ほど、私達暁軍へ日本政府より通達がありました。『本日1300を持って、暁市における全ての権限を我々暁軍へ移行。同時に、暁署内の全ての人は暁軍の命令に従う事』まあ、権限と言うのはあなた達が行っている全ての事ですね」


「な!!」


平を始め、刑事課の人間が一斉に声を上げた。


「では、まず始めに私、柊ミカサよりあなた達に命令します」


柊は落ち着いた声で、全員に伝わる様に


「全員を解雇します。速やかにここより出て行きなさい」


……。


「なにーーーーー!!!」

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