表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスメイトがSNSで炎上してもう遅いところじゃない。  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/9

7話



「おい!」


「人が倒れてるぞ!」


遠くから誰かの声が聞こえた。


ぼんやりとした意識の中で、誰かに肩を揺さぶられる。


「大丈夫か!!」


返事をしようとした。


だけど声が出ない。


体も動かない。


空腹と疲労で、意識だけがどんどん沈んでいく。


「救急車呼べ!」


「早く!」


騒がしい。


だけど、不思議と嫌じゃなかった。


少なくとも、あの家に帰るよりは。


そんなことを考えながら、俺の意識は途切れた。



次に目を覚ました時。


見慣れた天井が視界に入った。


「・・・またか」


思わず呟く。


病院だった。


ついこの前まで入院していた病院と同じだ。


「目が覚めましたか?」


看護師さんが安心したような顔をする。


「二日近くまともに食事をしていなかったそうですね」


「・・・」


否定はできない。


「脱水症状もありました。病み上がりなんですから無理をしないでください」


無理をしたつもりはなかった。


ただ、どうしていいかわからなかっただけだ。


「ご家族には連絡してありますので」


その言葉に少しだけ気まずくなる。


家族。


正直、来てほしくない。


だけど他に呼ぶ相手もいなかった。



数時間後。


病室の扉が開いた。


義母か。


それとも義姉か。


どちらにしても面倒だなと思った。


だが、入ってきた人物を見て驚く。


「失礼します」


見覚えのある女性だった。


「・・・あ」


火事の後、病院で会った。


叶のお婆さんだった。


「こんにちは」


そう言って頭を下げる。


俺も慌てて頭を下げた。


「どうしてここに・・・」


「病院の方から連絡をいただいたんです」


祖母は苦笑する。


「ご家族に連絡はしたそうなんですが、すぐには来られないそうで」


「・・・そうですか」


不思議と驚きはなかった。


そんなものだろう。


「それで、もしご迷惑でなければと思いまして」


祖母はそう言いながら紙袋を取り出した。


ふわりと湯気が立つ。


「お粥です」


「・・・」


「食べられそうですか?」


湯気が立っていた。


温かかった。


ただそれだけのことなのに。


言葉が出なかった。


家を出てから二日。


まともな食事なんてしていない。


それどころか。


誰かが俺のために何かをしてくれたのも久しぶりだった。


視線を落とす。


情けないな。


助けた側のはずなのに。


今は俺の方が助けられている。


「・・・ありがとうございます」


気付けばそう言っていた。


祖母は優しく微笑んだ。


「こちらこそです」



しばらく静かな時間が流れる。


やがて祖母が少しだけ迷うように口を開いた。


「実は・・・」


「はい?」


「叶も来ているんです」


「・・・え?」


思わず聞き返す。


「会ってみますか?」


祖母は病室の扉を見る。


つられるように視線を向けた。


少しだけ開いた扉の向こう。


誰かが立っているのが見えた。


小柄な少女。


けれど病室に入ってくる様子はない。


ただ、こちらを見ているだけだった。


「・・・」


あの日。


炎の前で立ち尽くしていた少女。


助けたはずなのに。


一度もちゃんと話したことがない少女。


叶だった。


「無理にとは言いません」


祖母は静かに言う。


「叶もまだ色々と整理がついていませんから」


それは俺も同じだった。


何を話せばいいのか分からない。


謝るべきなのか。


それとも。


「・・・でも」


祖母は少しだけ笑った。


「会いたいとは言っていましたよ」


その言葉に。


扉の向こうの少女が小さく俯いた。



助けた少女との再会。


それは、大の止まっていた時間が少しだけ動き出す瞬間だった。


「面白かったらブックマーク、下の評価よろしくお願いします!」

ブックマークや高評価、ランキングでこれからの投稿に力が入ります

___

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ