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第170話 ゼノン11

 「ふっ…くっ…」


 ゼノンはネイサン王国の牢から鉄格子越しに、兵士達に蹂躙されるレベッカを見て「やめろ!」と何度も叫んだ。

 ビーツの検問所からネイサン王国に入った途端に、ゼノンは拘束され牢に繋がれた。ゼノン達の前の牢に繋がれていたのがレベッカだった。


 「レベッカ!」

 「あ…ゼノン殿下だ…私を助けに来てくれたのですね。やはり、私の方がディアナより…」

 「レベッカ、しっかりしろ!」


 声をかけ続けたが、日に何十人もの男達に強姦され続けるレベッカは、既に可笑しくなっていた。兵士達に強姦されているのに、あたかもゼノンに抱かれているかの様に錯覚し、「殿下いいっ!そこ気持ちいいの、もっと!」などとあられもない喜声をあげた。


 「ディアナを釣る為のいい餌が手に入っちゃった」


 ネイサン王国の皇太子イスラがゼノンの前に立った。


 「偽の聖女様では、どうにも喰い付きが悪かったからね」

 「貴様!こんな事をしてタダでは!」


 イスラの護衛騎士の槍がゼノンの肩を突き刺した。


 「くっ…」

 「あはは!いい気味。結界を張ることも出来る本物の聖女様を独り占めしようとするからだよ」

 「本物の聖女?誰の事だ?」

 「おや?とぼけちゃって、ディアナ嬢の事に決まってるじゃないか」


 どうやら皇太子イスラは、ディアナを本物の聖女だと過小評価しているらしい。あれは聖女などというものではなく、その気になればネイサン王国をいとも簡単に潰す事が出来る位の力を持っている筈だとゼノンは思った。


 「貴様の婚約者でありながら、他の男にうつつを抜かす女でも庇い立てするのだな?」


 シャーメンの第一王子王芳がゼノンに向かって言った。

 やはり、ゼノンの持つ記憶を読み取られていたらしい。


 「ガイウス・オブ・ルーキウス。貴様の父親だな?」

 「へえ?ゼノン殿下、実の父親に愛おしい婚約者を寝盗られちゃったんだ?かわいそう」

 「よく考えろ。そんな女はいない方が、お前のためだ」


 王芳とイスラは地下牢から出て行った。


 「殿下!奴らの言った事など気になさらずに!」

 「ああ、判っている」


 護衛騎士であるジンに返事を返す。

 しばらくすると、地下牢の入り口付近でドカン!と大きな音がして、数人の兵士が即座に倒された。

 何だ?と振り返ると、ミスリルスパイダーの鞭が鉄格子を切り裂いた。


 「お兄様、助けに参りました!」

 「ベアトリーチェ?沙織?」


 ゼノン一行はベアトリーチェと沙織に助け出された。魔法で作られた拘束具をディアナから預かった解呪の魔石で外しながら、沙織は皆に回復魔法を掛けていく。


 「お兄様、装備品を新たに作って来ました。これを…」


 一番最初に、ディアナの結界魔法を注入した魔石付バングルを渡された。そして、それぞれの武器や防具を手渡した。


 「ディアナも来ているのか?」

 「ディアナは、地上で戦ってます」

 「そうか…沙織、レベッカを頼む!」

 「「レベッカ!?」」


 ベアトリーチェと沙織は、ゼノンの視線を追い振り返った。


 「こ、これがレベッカなのですか?」


 豊かだった髪は抜け落ち、目には目ヤニがこびりつき、口の端からはだらしなく涎が垂れ落ちていた。くっきりと浮かぶアバラ骨に痩せた胸が並び、足の間からは血が混じった何かが流れ出ていた。

 

 「なんて酷い事を!」


 沙織は駆け寄り拘束具を解呪し、ゆるやかに体力が戻っていく回復魔法をレベッカにかけた。インベントリからローブを取り出しレベッカを包んだ。そして、ディアナから預かっていた亜空間部屋の入り口に繋がる魔石で部屋を出し、その中にレベッカを寝かせ沙織が付き添った。

 

 「よし、地上に出るぞ!」


 先頭をゼノンとジンが、間にベアトリーチェを挟み、ロイズ達がしんがりになり、地下牢を脱出した。



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