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第106話 売春宿突入

 エリザベート商会はグラディウス商会から徒歩で10分位の城壁沿いにあった。建物は大きな邸宅が1棟と3階建ての集合住宅らしき物が10棟程建てられていた。庭には数人の子供達が剣術の稽古をしている姿が見えた。


 「エリザベート殿は孤児の保護もなさっていて、独り立ちするための支援も行っているのですよ」


 グラディウス商会からも、算術や文字の読み書きを教える為の人員と支援金を出しているとマルクスは言った。

 受付を済ませ、案内された2階の部屋で商会主エリザベートと向かい合った。


 「ディアナ・グラディウスです」

 「ベアトリーチェ・オブ・オクタヴィアです」


 ついうっかりカーテシーをとろうとして、苦笑いした。二人とも迷彩柄の戦闘服だったのだ。そして、手を出し握手をした。


 「こんな高位貴族の方々がなぜここに?奴隷をお求めですか?」


 ニッコリと笑うエリザベートは、三十代半ばといったところだろうか?少し妖艶な感じのある美人だった。


 「人を探しております。実は、ルーキウス王国グラディウス領内で盗賊団が住民を攫うという事件が発生しまして、捕えて尋問した結果、ローザリアの売春宿に3人の女性と奴隷市で1人の男性を売り渡したと白状しました」

 「その方達を探しているのですね?」

 「はい。何か情報をお持ちではないかと伺いたく」

 「見つかったら、どうするおつもりかしら?」

 「お金で買い戻し、家族の元に返してあげたいと思っております」

 「そう…女性はどうかしらね?」

 「故郷に帰りたくても帰るのを躊躇される事態を想定して、新たな住まいと仕事を斡旋するつもりで準備はしております」

 「ふふっ…若いのに随分と用意がいいのね。気に入ったわ。手をお貸ししましょう」


 ディアナは、ほっと胸をなでおろした。


 「まず男性の方は、私が奴隷市で買い取りました。あと数時間もすれば、仕事先から戻るでしょう。名前は…」


 告げられた名前は、ディアナが持っている行方不明者のリストにある名前と一致した。これで、一人確保できた。


 「女性については情報を得てますので、その店に直接出向こうと思うのだけれど、貴女方は大丈夫かしら?」

 「行きます。この目で確かめたいです」

 「わかったわ。では参りましょう」


 売春宿がある歓楽街まで徒歩5分。綺麗な建物やいかにもないかがわしさを醸し出した店、また女性を並べ見世場を設けた店など様々な娼館を横目に、最奥にある城のような店に辿り着いた。


 「まず、1軒目」

 「エリザベート様!?なぜ当店に?もしかして、その娘達を?」

 「違うわよ。こちらの方々は、ルーキウス王国の王女様と第一王子の婚約者様よ。人を探しにいらしてるの」

 「え?これは失礼をば…」


 店主らしき男が、冷や汗を拭いながら二人に頭を下げた。


 「ここに最近売られてきた娘が二人いるでしょ?会わせてくれないかしら?」


 冷ややかな目で男を見下ろすエリザベートの表情に、ベアトリーチェは「あ、この人は私と同族だわ」と感じた。

 男の案内で部屋のドアを開けると、そこには腕をベッドに縛り付けられた女性が一人。鑑定で連れ去られた3人の内の1人で有ることが判明した。ディアナは駆け寄り、紐をミスリルの剣で切り離し、彼女に呼びかけた。


 「あなたを助けに来ました」


 泣き崩れる女性を抱きしめ少し落ち着いたところで、もう1人を助け出した。


 「この二人を買い取る。いくら払えばいい?」

 「そ、そんな…新入りは稼ぎ頭なのに…」

 「ルーキウス王国を敵に回すというのなら、それでもいいけど?」


 ベアトリーチェが鞭を取り出し、店主の耳をかする程度に打った。耳から血がたらりと流れ、店主は耳を押さえながらガクガクと震えた。


 「一人金貨300枚」



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