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傷だらけのGOD 樹海の怪 地獄のサバイバル!  作者: 吉田真一
第8章 銃殺
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第1話 噂話

挿絵(By みてみん)


「全くクリスマスイブだっつうのに、こんな夜まで仕事させられちゃ、たまんねぇな」


「まぁ、うちらみたいな一線を引いた身分じゃ文句も言えんだろ。年金貰える年になるまでは頑張るしかないわな」


東京青年ホールの防災センターでは、凡そ犯罪などとは無縁な老骨管理人が茶をすすりながら日常の会話を楽しんでいた。


12月24日(日)PM9:30 大賑わいだった今日のショーも終わり、モニターに映るホールはライトが落とされ、投げ込まれた紙テープを拾う清掃員の姿がおぼろげに映し出されている。


「還暦過ぎてまだあんなに頑張ってんだもんな。同年代として誇らしい限りだ」


「ああ見えて心身は結構若いらしいぞ。話によると若い男買ってるって噂だ。金持ちに買えないものは無いってことだな。羨ましい限りだ。ハッ、ハッ、ハッ......」


「お前止めてくれよ。麗子ちゃんのイメージ狂うだろ! 永遠のアイドルを悪く言わないでくれ」


「アイドル? どこが? ......まあいいか......聞いた話によると、青島麗子はコンサートが終わっても、打ち上げには絶対出んそうだ。夜は日替わりで若い男と湿気こんでるってもっぱらの噂だぞ。コンサートの行き帰りは、専属運転手をつけないで必ず自分で運転するらしい。プライベートは誰にも知られたくないんだろうな。.おや......噂をすれば何とやらだ。もう控室から出てきたぞ。お早いお帰りだこと......」


管理人の二人はポカンと口をあけてモニターを眺めた。複数設置されているモニターの一つに歩く女性の姿が映し出されている。


「青島麗子か......確かに普通の60歳とは何か違うよな。他を寄せ付けないオーラっていうのか、何ていうのか......怪しい妖気を放ってるような気がするわ......」


タッ、タッ、タッ......


タッ、タッ、タッ......


静寂しきった廊下に響き渡るヒール音......ミュージシャンが奏でる踵だけあって、そのテンポは実にリズミカルだ。職業病とも言える。


今何時?......青島麗子はミンクの毛皮の袖を上げ、ダイヤの散りばめられた腕時計を見詰める。


21:40 時計の針はその時刻を示していた。


もうこんな時間か......


心なしか麗子の歩調が速くなる。


タッ、タッ、タッ......


タッ、タッ、タッ......


青島麗子は何をそんなに急いでいるのか? やはり今宵も若い男と待ち合わせでもしているのだろうか? もし噂が本当ならではの話だが......


扉を開けるとそこは、地下駐車場。幾台もの車が連ねる中、一際目立つスポーツタイプの外車の前で麗子は足を止めた。到底一般人には縁の無い車だ。ワックスで黒光りするそのボディーには、緊張感漂う麗子の顔が写し出されていた。


百戦錬磨の麗子でも、夜の密会に緊張するような事があるのだろうか? 現時点ではベールに包まれたその心うちを計り知る事は出来ない。


麗子は左ハンドルのシートに腰を埋めると、モノグラムのバッグからキーを取り出し差し込んだ。ブルルルン......白々しい程の重低音がだだっ広い駐車場内に響き渡る。


麗子はディオールの細いシガレットに鼈甲柄のジッポで火を灯す。


フゥ......


美味しい......


一人になると何故か妙に落ち着く。決して孤独を愛するようなタイプの人間ではないが、何百人もの前で二時間も愛想を振り撒き続ければ、誰でも一人の時間を楽しみたくなるものだ。


麗子は半分吸い掛けたシガレットを灰皿の中で押し消した。


さぁ、行くぞ......


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