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第八話

「どうして言ってくれなかったの!?。」

ヒメは久々に完全に怒りを露わにしながら声を上げる。


「どうしてもこうしても言ったらお前絶対毎回毎回ついてくるだろ?。」

俺は正座で床に座ってる牡丹の隣で正座で座り焦りながら弁明する。


「当たり前でしょ!!!。」


ヒメに怒られるのは慣れてるがやはりここまで怒らせたのはまずかったなぁ。


「ま、待ってよヒメちゃん、私もみつるも悪気があったわけじゃ。」

牡丹も必死に理解してもらおうと言う。


「悪気があろうとなかろうと私に隠してそんなことを何年も二人で背負っていたのがいけないって言ってるの!!!。」


ダメだ、完全にお怒りで何を言っても正論で潰される。


俺とヒメとカズ、それに俺や二人の契約者も含め伊達に長い間つきあってきたわけじゃないから余計に頭にきてるんだろう。

長年三人四脚でやってきたからこそそこには大切な絆があって、その絆の背景で俺と牡丹だけでヒメを守ろうと暗躍していたなんて言われたらそりゃヒメじゃなくたって怒るに決まっている。


だったら・・・。


「わ、わかったよヒメ!これからはそういう手紙が来たらちゃんと連絡はするよ!。」

かなり苦しいがいけるか?。


「ウソつくな!!!!!。」

やっぱダメか、どころか余計に火に油を注ぐことになっちまったな。


「幼稚園の頃から一緒にいるんだからあんたがそうやってウソついて丸め込むことなんてお見通しよ!!!。」


やれやれどうやってこの場を治めるか・・・。


「だいたいあんたは昔からなんでもかんでも一人で抱え込もうとする癖治しなさいってあれほど言ってきたでしょ!!。」

「それをまたこんな風に私のせいで迷惑かけられてるのに私に見えないようにこそこそと相談もせず勝手に動いて!!!。」


「・・・。」

何も言い返せない・・・こんなときカズがいてくれれば・・・。


「牡丹ちゃんも牡丹ちゃんだよ!!!。」

「この前『このバカが変なことしないようにちゃんと見張って』って言ったのにそれをこともあろうか共犯で私に隠してたなんて!!!。」


「・・・。」

牡丹もおそらく同じことを考えているだろう。


仕方がない、もうあの手で行くか。


俺はそう思い、ヒメにわからないように牡丹の肘をこづいた。


俺に目を合わせた牡丹は「わかった」という顔をして覚悟を決めたようだ。


「ごめんなさい。」

「ごめんなさい。」


俺と牡丹はその場で手を着いて頭を下げ心から素直に謝った。


「もうこれからはそういうのに巻き込まれたら私に連絡して最低でも現場に私を連れて行くこと!。」

「約束できる!?。」


「はい。」

「はい。」


「ハァ・・・全く・・・いつまで経ってもそういうとこ変わらないんだから。」

「まぁみつるのそういう優しさに助けられてたのも事実だし今回はこのくらいにしといてあげる。」

ヒメはようやく「しょうがない奴ら」という顔をして俺達を許してくれた。


「なぁヒメ。」


「何よ。」


「いちおうこれだけは言っときたいから言わさせてもらうが、俺は確かに今までそうやってお前のせいで見えないところであれこれと面倒ごとに首突っ込んでたけどな、それを面倒だとは思ったことはあっても迷惑だなんて思ったことはこれまで一度もねーよ。」


「っ!!///。」

ヒメは一瞬顔を赤くして「あっそ!」と言うとそのままキッチンに行き夕飯を作り始めた。


「なんだあいつ、変なやつ。」


その様子を牡丹はニヤニヤしながら見ていた。


そんな感じで俺と牡丹は正座から解放された。


まぁ結局のところ俺たちの絆ってのはそんなちょっとやそっとの行き違いや言い争いで無くなったり、ましてや関係にヒビすら入ることはない。


それはつまるところこれまで俺達がどれほどの苦難や修羅場を共に潜り抜けてきたのか、ということを意味していてこんな風にさっきまで険悪な空気だった現場だって自分が悪いことをしたと心から反省しちゃんと相手に謝ればまるでそんなことはなかったかのようないつもの穏やかな空気にあっという間に戻ってしまう。


最もこれほどの信頼関係を築くということは並大抵のことではない。


互いを愛し、互いを認め、互いと膨大な時間を共に過ごし、互いと困難に立ち向かう。


これが普段から当たり前のようにできるようになるというのはやはり俺達が召喚士であるという事実だけが証明材料となるのだろう。


一見そんなに大きな動機とは思えないような材料だが実際俺達はそういう材料の元互いの命を救いあったりしている。


しかし人間やはり命がかかるレベルの出来事や災害なんかに見舞われればこんな風な関係を築くことだって本当はそんなに難しいことではないのかもしれない。


そんなことを改めて頭で再認識してソファに座り牡丹とテレビを見てヒメの晩御飯が出来上がるまで三十分ほど待っているとヒメに「できたよー」と呼ばれたのでダイニングで牡丹と入れ替わった。


「うん!うまい!。」

いつもの調子で牡丹が言う。


「ありがとう、牡丹ちゃんいつもたくさん食べてくれるから私も嬉しいよ。」

ヒメもいつもの笑顔で答える。


「最もこのあとのみつるに負担かけちゃうからそこはちょっと苦しいところではあるんだけどねぇ~♪。」

と、牡丹は口では俺の心配を言うがその手は止まらず食べ続けている。


「牡丹ちゃんそれじゃ説得力全くないよ。」

ヒメも微笑ながら返す。


それから女性陣はわいのわいのと食事を続けていたが突然「ピンポーン」と呼び鈴が鳴った。


するとヒメが「私が出るよ」と立ち上がり対応に行ってくれた。


牡丹はその言葉に甘え料理を次々口に運んでいたが少ししたあとヒメが「みつるーお客さんだよー」と呼ばれたので俺と牡丹は入れ替わり俺は玄関に向かった。


玄関に向かうと俺の見たことのある二人組が俺を待っていた。


「千石みつる先輩ですね?。」

その二人組の髪の黒いほうが口を開いた。


こいつらは妖魔遊撃員会に所属する一年の辻兄弟、人呼んでブラックアンドホワイト。


珍しい双子の召喚士で常に二人で行動し、お互いの長所をお互いで引き出し闘うという二胴一心のコンビネーションアタックを得意とする妖魔遊撃委員会の中でも有名な副委員長の右腕と呼ばれる召喚士である。


「何の用だ?。」

俺はだいたい予想はついているが質問してみる。


「またまたとぼけなくても、あなたなら分かっているでしょう?。」

白い髪をしている辻白こと辻弟は言う。


「みつるどういうこと?なんなのこいつら?。」

ヒメは困惑した声で言う。


「どうもこうもただの敵だよ。」

俺は冷たい空気を放ちながら答えた。


「そこまで分かっていらっしゃるのであれば外でお話をしませんか?。」

「こんなところで暴れられたらあなたも一溜りないでしょう。」

辻黒こと辻兄がわかったように口を開く。


牡丹はいつでもすぐに戦闘に入れるように臨戦態勢をとっていた。


俺は言われるがまま靴を履き辻兄弟に連れられ家の外に出た。


ヒメも流石に心配になったのか俺についてきて家の外まで出てきた。


家の外に出ると早速辻兄弟の兄である辻黒が召喚を行った。


辻黒が召喚を行うと黒紫色の召喚陣はまばゆく光り中からは蛇骨婆が出てきた。


「ほぉ、もうはなからそういうつもりで来たんだな。」

俺はやっぱりという態度で返す。


「あなたに口で挑むのは愚策だと思いましてね。」

辻黒は計算通りという顔で言う。


「ほう、なら白のほうも出させろよ、一体で俺に勝とうなんてそんな浅はかな作戦を考えるお前らでもあるまい?。」

俺はさっさと終わらせるために挑発をしてみる。


「残念ながら白の蛇五右衛門には別の任務を与えているのであなたの相手はこの蛇骨婆一体ですよ。」

辻黒も白も余裕の態度を崩さず言う。


「そうか、なら憑依をするまでもないな。」

俺は書きかけていた憑依陣の紙を破り捨てながら肩をすくめて言う。


流石にその言葉には頭がきたのか辻黒が言った。

「はて、そんな余裕がいつまで続くでしょうか!。」

そう辻黒が言うと蛇骨婆がその手にまとわりつく蛇を伸ばして攻撃をしてきた。


その攻撃を牡丹が物凄い速さで反応し俺の前に立ちふさがり団扇を一振りして薙ぎ払った。


やれやれ、最近は蛇も流行っているのか?。

俺はそんなことを思いながら俺の前で凛とした態度で仁王立ちをしている牡丹を見た。


流石の牡丹もこんな雑魚に傷一つ付ける気すら起こらなかったらしくただ圧倒的なまでの風圧で辻黒の蛇骨婆を退ける。


辻黒の蛇骨婆は何度も俺に仕掛けようと攻撃をするがことごとく、牡丹が弾き返しその攻撃をその場から動くこともなく団扇でペシペシと払い落としている。


「そろそろ諦めたら?。」

牡丹も飽きが来たのか辻黒に向かって言い放つ。


「天狗ごときが僕らに口を挟むな!。」

辻黒がそう言い蛇骨婆の最大の攻撃であろうその身に纏う蛇が顎を外し大きな口で牡丹と俺を飲み込もうと攻撃をしてきた。


しかし牡丹はそれを下顎を足で踏みつけ上顎を団扇を持っていない手で持ち上げ塞ぎどうあがいても蛇の頭が動けないような状態にして団扇を持っているほうの手で蛇の口の奥に向けて団扇を向けた。


「王手。」

牡丹がそう言うと流石の辻黒も身じろぎ焦りを露わにしていた。


「白!まだか!。」

辻兄は焦りながら弟に聞く。


「さっきからやってるんだけど邪魔が!。」

辻白は焦りながらその質問に答える。


「邪魔!?、そんなやついるわけ!。」


ドッカーン!!。


辻黒が言葉を繋げようとしたとき俺の家の俺の部屋にとてつもない音を上げながら大穴が空いた。


煙が風に流されるとそこにはヒメの契約者である百が白の召喚したであろう蛇五右衛門の首を掴みギリギリと締め上げながら片手で持ち上げていた。


「な!?そんな!?蛇五右衛門が!?。」

辻黒が驚きながら声を上げる。


「簡単な話だよ。」

みつるが不気味な笑みを浮かべながら説明しようと言葉を発する。


「委員会がまず攻撃を仕掛けてくるならお前らをまず送って、俺がどれほどの力を持って百合を守ろうと測ってくるだろうと考えた。」

「だから俺は事前に二階に百合を一人にして護衛にヒメの契約者である百をつけておいた。」

ギイイィィと俺は口角を上げながら答える。


「俺の予想通りお前らは己の契約者を別々に動かし俺を攻撃して動けなくする役割と百合を誘拐する役割を立て俺達を襲った。」

「その証拠に実際お前達は俺と牡丹をたった一匹で襲わせた。」

「だから俺はあえて牡丹に兄である黒の攻撃を集中させその間に百合を攫おうとしている白の契約者である蛇五右衛門に百の相手をさせた。」

「その結果がこれだよ。」

みつるはその笑顔のまま答えた。


「つ、つまりお前は俺達がはなっから来ると分かっていてあえてターゲットである鬼のガキを一人にして迎撃がスムーズに行くように放っておいたってことか!?。」

辻黒と白は驚き怯えながら言葉を発する。


「そういうことだよ一年坊、お前らがどう策を巡らせようとアラートはなるようセッティングしておいたのさ。」

みつるは変わらない不気味な笑顔で続ける。


「お前たちはネズミ捕りを避ける作戦のお前たちの作戦でみすみす俺の敷いておいたネズミ捕りに引っかかったんだよ。」

みつるはもはや悪魔のような笑みで辻兄弟を見下し指を指す。


「さて、俺の部屋にドデカイ穴を空けてくれた罪をお前たちはどうやって償うつもりなんだ?。」

いつもながらみつるが指を指しながら更に不気味な笑顔を浮かべヒメや牡丹が引くほどの態度と発言に辻兄弟は完全にビビり後ずさりしていた。


「イ、イカれてやがる!?。」

「兄さんここは一旦引こう!。」

辻兄弟は慌てながら召喚の紙を破き走ってその場から逃げて行った。






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