13、お茶会inネッデラトゥ家
久しぶりの投稿。亀更新ですみません…。
暑くなってきましたが、優しい肌触りで通気性のある画期的な最近出たドレスのおかげで、私は熱中症にならずに今日という日を迎えられました。
お茶会の日です。あ、アルセンでもファルフォンドでもなく、勿論この前招待状が来たネッデラトゥ公爵家の大きなお茶会。何故大きなお茶会と言うかといえば、この世界での地位関係は上から王族、公爵家、伯爵家、男爵家、市民。なので比較的地位が上の方にいる公爵家では大きなお茶会が開かれる。
「どうでしょう、お嬢様。新しいドレスの着心地は?」
衣装部屋から最新ドレスを引っ張り出して私を着飾った私付きの侍女さんのジェンミさんがニコニコ笑顔で私に問いかけてくる。とっても良いわ、と答えると、ジェンミさんはそれは良かったと言わんばかりに微笑んでくる。
私は目の前の鏡に映る自分の姿を見る。今日の私の姿は、ジェンミさんお気に入り二つのゆるい三つ編みヘアーで夏らしく涼し気な淡い水色と白色のフリルの可愛らしいドレスを着た、可愛い女の子。やはりシャルロッテは可愛い姿をしているよなぁ…なんて思いながらも、私は鏡からジェンミさんに視線を移して行ってきますと告げて部屋から出る。
ジェンミさんは行ってらっしゃいませとこたえて、その場でお辞儀をして送り出してくれた。
部屋を出て、途中他の使用人から行ってらっしゃいませ!と元気よく叫ばれて私は笑顔で行ってきます!と返事する。何故か記憶を取り戻した後くらいから私はこうして使用人たちに声をかけられるようになったのだが、まぁ皆笑顔なのはいいことだし、理由はよく考えないでいる。
こうして玄関で出迎えてくれているお父様とお母様に楽しんできますと声をかけると、お父様からは狼には気をつけろと凄まれながら言われ、お母様からはマナーには気をつけてねぇとのんびりしたように言われた。私は笑顔で答えたが、お父様、その言葉は7歳の少女にはまだ早いですわよ…覚えときなさい、と思っておく。
まぁ私が何もせずともお母様が肘で横に立つお父様のみぞおちらへんをどついてくれたので良かったが。
玄関を出て門の前にある馬車の横で私が来るのを待ってくれていたダーシェイさん、クロエ、アルトが私が駆け寄るなり笑顔になって迎えてくれた。今日のお茶会へは従者のダーシェイさん、強い草属性の力を持つクロエ、そして色々と知っている精霊のアルトが同行してくれることになった。アルトは久々に見る外の世界にワクワクしたようにぴょんぴょん飛び回っては落ち着けとクロエにツッコミを入れられる。
「じゃあネッデラトゥ公爵家まで行こうか。」
「はい、よろしくお願いします。」
馬車に乗り込み、御者さんが私ににこやかに問いかけ、私は笑いながら答える。かしこまいりましたと恭しくお辞儀をする彼はこの前の図書館へお忍びするときもお世話になったのだ。
馬車がどんどん進んでいく。その中でダーシェイさんが私のドレスを褒めてくる、続いてクロエとアルトもよく似合っていると言ってくれる。
「このドレスね、最近発表されたもので通気性が良いドレスなの。男爵家の方が夏用ドレスを作ろうと試みて出来た物なんだって。」
『へぇ〜凄いことするねぇその人。』
『着心地もすごく良さそう。良かったねシャロ、夏はドレスが暑そうって言ってたし。』
苦笑してクロエに答えながら、本当にと言う。夏にあのフリフリドレスは凶器と言っても過言じゃない。まず暑苦しいし、何層も生地を重ねているので尋常じゃなく暑いのだ。まさにその男爵家のお方は私の救世主と言ってもいいだろう。
そう考えながらふと、あまり喋っていないダーシェイさんに視線を向けて何かありましたかと問いかける。ダーシェイさんはハッとしたようになってから、少し考え事をしていたと困ったように笑いながらも言ってきた。
「…もしかしたら前世で一緒になくなってしまった彼女と、会えるんじゃないかと思ってね。」
「彼女さん、ですか。」
「そういえば話してなかったね。」
穏やかに微笑みながら、ダーシェイさんは話をしてくれた。前世で付き合っていた彼女さんの話を。その彼女さんは同じくゲームの製作者らしく、いわゆる職場恋愛なるものをしていたらしい。そしてこのゲームの派生作品などを作るのに一区切りついた頃、ダーシェイさんは彼女さんにプロポーズをした。
そこに、急に現れたトラックが突っ込んできて二人の命を奪ったのだという。無情にもプロポーズをした後に。
そして気がつくと、自分がグレッグ・ダーシェイになっていることに気がついたという。
「それは…なんというか、お悔やみ申し上げます…。」
精神年齢16歳の精一杯の語彙力で伝えると、ダーシェイさんは過ぎてしまったことだからと言いながらも、無理して笑うその顔には明らかに悲しみも表れていた。
ダッダッと馬車が進んでいく中で、重い空気を壊したのは出会ってまだ日の浅いアルトだった。
『そんなに好きならさ、願ってりゃ良いじゃんか。』
「願う…。」
『そう、前に本で見たぜ。願ったことはいつか叶う、だから精一杯生きるって。』
そういうもんじゃないのか?とあっけらかんと言うアルトに、クロエがそれもそうだなぁなんて笑って言う。アルトも良い事言うじゃんとニヤニヤしながら言い、アルトはそれに恥ずかしそうにそっぽを向いて別に!と叫ぶ。和やかな雰囲気に、張り詰めていた空気のことを忘れて私は思わず小さく笑う。
やがて、アルトの言っていたことに驚きながらも、ダーシェイさんは次第に悩みを消し去って笑った。
「そうだね、この世界で彼女に会う、それまでは僕なりに頑張ろうと思うよ。」
何かを決意したように言うダーシェイさんに、その場にいたみんなが優しくその姿を見た。みんなそれぞれ悩みとかを持って生きている。けれどもその悩みを超えて、人は輝くものだなと、私はふと思った。
しばらくして、御者さんが着きましたと声をかけてきた。私は両肩にそれぞれクロエとアルトを乗せて、招待状を握りしめて先に出たダーシェイさんの手を取りながら馬車から出る。
そこはアーチ状の門があり、そこで警備をしている兵士さんに招待状を見せると、私の相手をしている兵士さんは私の姿をまじまじと見ながらも、どうぞ、と小さく言って笑いかけてくる。クロエやアルトが何故か上機嫌になる中で門をくぐりネッデラトゥ公爵家の敷地に入ると、そこにはすでに多くの人で賑わっていた。
屋敷内で行われることが多いお茶会も、公爵家主催となれば話は別だ。天気が良ければ外でガーデニング用のテーブルやチェアを用意してお茶会をするということがあるそうだ。私は早速どこに行こうかと足を進めながらも、ダーシェイさんが小声で言ってくれたようにギュリューには気を付けながら行く。
ギュリューはイケメンでスタイルがいいのでおそらくお嬢様方から囲まれてるんじゃないかと迷探偵推理で人が塊になっているところを避けて通る。途中何故か通り過ぎる人たちから不思議そうな目をされるのに疑問を感じながらも、私はギュリューの姉でありネッデラトゥ公爵家長女のエーファを探す。
『なかなかいないね、エーファって子。』
「まぁ内気でおまけに弟があれだからねぇ…どこかに隠れてるかもしてないから、探してみようか。」
「そうですね。」
返事をしながら、私はクロエに話しかけてどういう事?という顔をしているアルトに説明するように頼んだ。ザカザカ庭を進んでいくうちに話は終わったらしく、話を聞き終わったアルトから破天荒なことするなぁ…なんて呆れたように言われる。なんで苦笑しながら言うの、私が変わってるみたいじゃない。
そんなこんなで歩いていると、ふと何処からか紅茶か何かを注ぐ音が聞こえ、私はダーシェイさんと顔を見合わせて二人して頷いたあとに音が聞こえた方へ行く。
「…ッ、きゃっ…?!」
突然の私の登場に、輝いて白にも見える美しい金髪をして愛らしい桃色のドレスを身にまとった少女_エーファが椅子から立ち上がり、小さく悲鳴を上げた。
私は申し訳ありませんと謝罪を述べて、笑いかける。そして私はシャルロッテ・フィルフィテッシャオと自己紹介をし、続いて同行してきた他の三人の紹介を済ませてから、お招きいただきありがとうございますと第一ミッションの主催関係者への挨拶をする(一応こちらはあなたの事を知っていますよ、という体でいくことにした)。
当の挨拶されたエーファは、驚きながらもお辞儀をし返してくれた。私は微笑みながら席をご一緒しても?と言うと、彼女は息を呑んで目線を左右にそらしながらも、決心したのかどうぞと自分の座る席の反対の椅子を手で示してそこに座るよう促してくる。内気な彼女の精一杯の譲歩なのだと私は感じながらも、静かに席について彼女が淹れてくれた紅茶を前に話を始める。
「私、こういった催しに参加するのは初めてなんですの。」
「…知っています。フィルフィテッシャオ家の長女様は、溺愛故に箱入りになって、その姿を見るものはフィルフィテッシャオ家の者だけだと。」
その返事を聞いて、私はせっかくの笑顔が壊れてしまうかと思った。おいお父様、何箱入りお嬢様にさせてるのよ。そりゃエーファがおどおどするわな、誰も見た試しがなかったお嬢様に話しかけられたんだもの。内気な彼女のことだ、内心どう接したらいいかを模索してるに違いない。
お父様に本日二回目の怒りの念を飛ばしつつも、私はどうか緊張なさらないでと言う。本来なら言う立場逆だろというツッコミを入れるものがここに居なくて良かった。話がややこしくなるから。
エーファは私の言葉に驚きつつも、いろいろと話す私に対して次第に緊張がほぐれていったのか、だんだんと笑顔で話に答えたり、向こうから話題を振ってくれるようになった。
「…じゃあ、本日のお召し物はあの最新のドレスなんですのね。」
「そうそう、いつものじゃ暑いでしょう?エーファも着てみたら?あなた可愛らしいからきっと似合うわよ!」
「フフ、そうですね…シャルがそう言ってくれるなら。」
それでは今度私のドレス姿を見た時にはぜひ感想を聞かせてください、と言うエーファに笑顔で勿論!と答えると彼女もつられて笑った。気が付くとお互いのティーカップの中は話の最中喉を潤すためにこまめに飲んでいたためかすっかり綺麗に何もなくなっていた。
笑いながら、エーファ、シャル、そう呼びあう仲にまでなった私達。エーファがいつも弟目当てで話しかけてくる人たちに嫌気が差してひっそりと一人寂しくお茶会をしていたのだと話してくれると、私はそうだったのかと驚きながらも、反面そうやって近づく人は居るもんか〜と考え、私はネッデラトゥ公爵家の長女様に会ってみたかったから他意は無いと素直に思っていたと話す。
ギュリューの姉だから、という理由ではなく、同じ貴族の女の子同士話をしてみたかったと。そう打ち明けると、私が箱入り娘で会う人も限られていたから話の信憑性が増し、エーファが疑うこともせずにありがとうと嬉しそうに微笑んでくれる。クロエやアルトも笑ってくれて、幸せな雰囲気になる。
はじめは確かにフラグを壊すために近付こうとしていた私も、彼女と話しているうちにそんなことも忘れていった。目的は仲良くなるということでもあったから、結果上手くいったことに変わりはないけれど。
そうして談笑していたら、気がつくとお開きの時間になっていた。そういえばお菓子をつまみながらも話しこんでいたので全く気が付かなかったが、エーファ以外の令嬢などとは会話することなく過ごしていたらしい。お別れの時間になったことに気がつくと、エーファが申し訳なさそうな顔で他に予定があったんじゃ…と私に問いかけてくるが、私はエーファに会う予定しかなかったわよと安心させるために笑いかけると、エーファはすぐに眉を下げながらも笑って気障な人とからかってくる。
手を振って、またね、と言いながら私はエーファと別れる。今度お茶会を開いたら必ず招待するとお互い約束をして。そこにギュリューという名前がないということにエーファが嬉しいような気持ちになった事は、エーファ自身にしか分からないことであった。
クロエとアルトが私を見せびらかしたかったと悔しそうな顔をしながらよく分からないことを言い、ダーシェイさんがそれじゃあギュリューにバレるでしょ、とこれまた的確なのかよく分からないことを言って答え、その日はすれ違い様に人によく見られる日となって終わりを告げたのだった。
_後日、ネッデラトゥ公爵家にて二人の妖精と強い魔力の人物を連れた美少女が現れたという話が貴族の間では有名になり、その正体が元箱入り娘のシャルロッテであるということをこの時知っているのは、残念ながらその話に密かに笑っていたネッデラトゥ公爵家の長女と、シャルロッテ以外の話を聞いたフィルフィテッシャオ家の者たちだけであった。




