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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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回想

1年ぶり(現実世界では3年ぶり)に、自分のベッドと布団で目覚めた真央。


向こうの世界での寝泊まりは、迷宮の硬い床と、モンスターへの警戒が常につきまとった。

安全なベッドで眠れてるはずなのに、逆に落ち着かず、時計を見るとまだ5時前だった。


灯りをつけて部屋を見渡す。


昨夜は気づかなかったが、部屋は隅々まで掃除されている。

3年間の行方不明の間、母がどんな気持ちでこの部屋を保ち続けていたのかと思うと、胸が痛んだ。


ふと、部屋の片隅に段ボール箱が置かれているのに気づく。


「なんだこれ?」


自分の部屋に段ボールなどなかったはずだ。

真央は近づき、そっと蓋を開ける。


「あ、オレの机の・・・」


学校の机の中身が、そのまま返却されたのだと気づく。

真央は段ボールの中身をひっくり返すように確認し、ひとつひとつ手に取っては戻していった。


確認を終えると、ゆっくり立ち上がる。


「タブレットがない・・・予想通りか・・・」


机の上には、あの日拾った“アクチュアリー”のパッケージが、1年前(実際は3年前)のまま置かれている。


真央はパッケージを手に取った。


(このゲームを拾ったあの日・・・近所のおばさん達が話していた“矢島さん”・・・

『聞きました? 矢島さんとうとう慎吾君の事諦めて整理するみたいよ。』)


首筋に冷たいものが走る。


(やっぱり、この中だよな・・・)


真央は考えるのをやめ、ゲームのパッケージを机に投げた。


「ん?」


その時、自分の体に違和感があることに気づいた。

両手を何度も開いたり握ったりし、軽くジャブを打つ。


ビュッ!!


風切り音が響いた。


「え? もしかして・・・」


真央は灯りを消し、ミルマを発動させる。

すると、迷宮と同じように部屋がふわりと明るくなった。


「ま、マジかよ・・・

じゃ、じゃあ・・・」


窓を開けて外へ出る。

部屋は2階なので、瓦屋根を歩いてから地面へ飛び降りた。


着地すると、すぐにジャンプしてみる。


「よっ!」


助走もないのに1メートル以上跳び上がった。


「体も向こうのままだ・・・」


ふと、昨日隠した鎧と刀が目に入る。


「そうだ、これ処分しないと・・・

でも、村正は苦労したから処分はしたくない・・・」


村正を持つ手が震えた。


「どこかに隠すか・・・」


東の空は明るくなっている。

世界は暗闇からうっすらと景色が見えるようになっていた。

周囲を見渡すと、1キロほど先の愛宕山にある愛宕神社が目に入った。


「あそこが良いかな?

見えてるからいけるよな・・・」


真央はマーカーを発動させる。

次の瞬間、体がふっと軽くなり、視界が切り替わった。

愛宕神社へとテレポートしていた。


「おおお・・・

向こうでは普通だけど、こっちでやると実感やべえ~~」


テンションが上がり、思わず笑いがこぼれる。


愛宕神社は、すでに跡形もなくなった古い神社だ。

今は鳥居と石碑だけが残り、道は狭く、木々に囲まれて薄暗い。

運動がてら登る人はいるが、その数は少ない。

人目につきにくい場所だった。


「ここなら、そう簡単には見つからないだろう・・・」


真央は、神社の石碑の裏にある草むらへ鎧と村正を隠した。

そしてマーカーを発動し、自分の部屋へと戻る。


狙ったのはベッドの近く。

思った通りの位置にテレポートできた。


「これ・・・やべえ・・・無双できるんじゃね?」


肘を曲げ、手のひらを見つめる。

胸の奥が熱くなる。


「あ、そうだ。」


何かを思い出し、部屋のドアを静かに開ける。

ヒンジがわずかに鳴ったが、気にするほどではない。


階段を降り、風呂場に干してあった昨日の服を手に取る。

そのまま再びマーカーで愛宕神社へ移動した。


「燃やしておくか・・・」


服を地面に置き、ヤリトを発動させる。

炎の矢が命中し、布は一瞬で燃え尽きた。


「これで証拠はなくなったかな・・・」


部屋に戻り、布団にもぐり込む。

証拠を隠した安堵と、布団のぬくもりが真央を再び眠りへ誘った。


―――3年前(真央にとっては1年)


あの日、ゴミ集積場で手に入れた『アクチュアリー』を自分の部屋へ持ち帰った。


アクチュアリーは30年ほど前に発売された本格3D・RPGで、頭の3文字を取って『アクト』と呼ばれ、当時は絶大な人気を誇った作品だ。


真央はこのレアゲームをどこでもプレイできるように、FDDをイメージ化し、借りていたVPS(Virtual Private Server)に98エミュを入れてインストールした。


「よっしゃ!!」


ゲームが無事起動すると、真央は肘を曲げてガッツポーズした。


――チーン!


そんな時スマホがメッセージ音を響かせる。

グループメッセージだ。


――チーン!チーン!

立て続けに通知音が鳴り続ける。


「今、そんな時間はないのよ・・・すまぬ!」


真央はスマホを見てそう言い、すぐにPCモニターへ視線を戻した。


――チーン!チーン!・・・


ファミコン版を一度プレイしていた真央は、訓練所へ行きキャラメイクを始める。


「キャラ名は・・・そうだあいつ等にしよう。

まずは『コータ』だな。」


このゲームのキャラメイクは、ボーナスが変動するのが特徴だ。

そのため、高ボーナスが出るまで何度もキャンセルを繰り返す。


5人の友人をキャラメイクし終えた頃、スマホはすっかり静かになっていた。


「スマホ静かになったな・・・

さっきまでメッチャうるさかったのに・・・」


時計に目をやると、時間は1時28分。


「やっべ、もう寝ないと。

そうか、みんな寝ちゃったのか・・・

返信しなくて悪かったかな?」


―――翌日


学校の教室に行くと、同じクラスのコータは来ていなかった。


「あれ? コータ休みか?」


(そういや、今日グループメッセージ全然来ないな・・・?)


胸の奥に小さな引っかかりが生まれる。


真央は他のクラスへ向かい、残りの4人の姿を確認しに行った。

だが、誰一人として学校に来ていなかった。


(全員っておかしいだろ・・・

メッセージ入れてみるか・・・)


【今日は全員休みか?】


送信したが、既読はつかない。


(ん?)


グループメッセージを遡って確認すると、奇妙なことに気づく。

既読数が、時間を追うごとに減っていた。


そして、最後のメッセージの既読数は「1」。 真央自身だった。


「・・・なにがあったんだ?」


胸のモヤモヤが、じわじわと大きくなっていく。


キーンコーンカーンコーン!


始業ベルが鳴った。


「やべっ!」


真央は慌てて自分のクラスへ走る。

ちょうど授業の先生が教室に入ろうとしていた。


「席につけ~~

もう始業ベル鳴ってるぞ~~」


生徒たちはまだおしゃべりの最中だったが、ぞろぞろと席へ戻っていく。

真央は後ろのドアから駆け込むように教室へ入り、自分の席に滑り込んだ。


「ふう・・・間に合った」


授業が始まる。


「今日は教科書85ページな」


真央は机の中からタブレットを取り出し、隠すようにして立ち上げる。


「オレは、授業よりこっち・・・」


ニヤニヤしながら画面を見つめる。


(タブレットからVPSに接続してアクトやるぜ~~)


ゲームを起動すると、昨日作ったはずのキャラクターが存在しなかった。

真央は眉をひそめる。


(んんん? オートセーブなのに、キャラがいない・・・どうなってんだ??

しょうがない、もう一度作り直すか・・・)


名前を入れ、リターンキーを押す。


ゲームはエラーメッセージを出した。

【同じ人間は作れません】


(えっ? そんなシステムだったっけ?)


他の4人の名前でも試すが、結果は同じだった。


仕方なく、新しいキャラクターを作ることにする。


(じゃあ、新しいキャラ作るか~

・・・作るならやっぱオレが密かに想ってる・・・)


ちらりと教室の女子へ視線を向ける。

少しだけいやらしい顔になる。


(柏木彩乃さん!

彩乃さんのエルフとかサイコーっしょ!!)


名前を入力し、種族をエルフに設定する。


【エルフは作れません】


(は? なんだこれ?

PC版ってこんな縛りあるのか??)


他の種族も選択してみるが、ヒューマン以外選択できなかった。


あきらめて人間を設定し、画面に【決定しますか?Y/N】のメッセージ

真央はYをタップする。


その瞬間、教室が急にザワザワと騒ぎだした。


「な、なんだ?」


画面を見ていた真央は顔を上げる。

教室中の生徒が授業そっちのけで立ち上がり、隣同士でざわざわと話し合っていた。


全員の視線が一点に向けられている。

真央もその方向を追う。


「う・・・ウソだろ!?」

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