秘密のファッションショー〜第一王女と白いワンピース〜
あの後、おじさんがおじいちゃんと連絡を取ってくれたようで、急遽、明日会いに行くことになった。
夕方。おじさんと晩ご飯を食べ終えたところで、キーちゃんと出かけていたオーちゃんが帰ってきた。
「ただいま! サラちゃん、トレーニングルームに来てっ!」
何か嬉しいことがあったのか、オーちゃんは目を輝かせながら、ぼくの両肩にトン……と優しく手を当てる。
そのまま、ぼくはオーちゃんと一緒にピラティスのトレーニングルームへ向かった。
「オーちゃん、今から何するの?」
「ファッションショーよ!」
オーちゃんが勢いよくドアを開けると、目の前にいたのはキーちゃんと……。
「えっ、貴女は!?」
「ごきげんよう。お元気そうで何よりです、お嬢さん」
以前、大変お世話になったドレス屋さんの奥様がいた!
しかも、部屋のあちこちに衣装ケースが置かれている。
でも、ファッションショーって、どんなことをするの?
「あの、どうして……奥様がこちらへ?」
「ふっふっふ! 私が答えようッ!」
キーちゃんが豪快に笑いながら話を切り出した。
「ケイさんから聞いたんだ! サラちゃんはちゃんとした女性用の下着を持っていないと!」
「うぅっ……!」
「き、キハダさん! デリカシーが無さすぎます! 破廉恥ねッ!」
知られたくない事実を暴露されてしまい、ぼくは顔を真っ赤にして、唸ることしかできなかった。
頬を染めたオーちゃんも両手で顔を覆い隠しながら、キーちゃんを窘めた。
「ふふっ、すまないね! 二人とも反応が可愛いから、揶揄っただけさ。さて、本題に入ろうか」
キーちゃんは表情を崩すことなく、奥様が来た理由を教えてくれた。
「明日の件だが、レンゲ様のお父様はサラちゃんを第一王女だと認識しているから、女性用のお洋服で会った方がいい。それで今回、外商として連れてきたんだ」
「はい。ウェディングドレスの時と同様に、私がしっかりお洋服をお選びいたします。では、お嬢さん。こちらへ」
「えぇっ!?」
ドレス屋の奥様は眼鏡をカチッと装着すると、ポケットからメジャーを取り出し、ぼくを連れて、洗面所へ移動した。
「早速ですが、バストを確認させてくださいまし!」
「キャァアアア!」
いきなり胸周りをメジャーで測るなんて!
驚いて悲鳴を上げてしまったものの、奥様はにっこり微笑みながら、採寸を続ける。
「あらまぁ、お胸がカップに押し潰されていらっしゃる! もうワンサイズ大きい下着を持ってきますね?」
「そ、そんな……っ!」
ぼくが衝撃を受けている間に、奥様は別サイズの下着を取りに、そそくさとトレーニングルームに向かった。
「お待たせいたしました。サイズを多めにご用意しておいて、大正解でしたわ!」
奥様が新しく用意してくださった下着を身につける。
今度はピッタリだ。
さっきと違って、窮屈さがなかった。
「すみません。ご迷惑をおかけして……」
「いいのよ。謝らないでくださいな。むしろ、王妃様の愛娘であるサラお嬢さんをサポートできて、とても嬉しいのです。それにしても、花柄のレースがお似合いですわ。スタイルも良くて、お花のように美しい」
「ありがとうございます……。でも、まさか、こんなに大きくなっちゃうなんて……。男装して隠さないといけないのに……」
自分の胸の成長を愚痴っていると、奥様がガウンを肩に掛けてくれた。
「大切なお体、冷えてはいけませぬ。次はお洋服を選びましょうね」
奥様に勧められて、トレーニングルームに並んでいるお洋服を選ぶことに。
ぼくは一目惚れした黒いワンピースに触れてみる。
「パフスリーブのチュールワンピース! 大人っぽくて素敵なデザインね、サラちゃん!」
ずっとぼくの隣で見守っているルルが褒めてくれた。
それで、ぼくはワンピースに着替えて、オーちゃんとキーちゃんに披露してみた。
「どうかな?」
「可愛い……っ! 綺麗!」
「サラちゃんは非常にセンスが良いね、美しい!」
二人ともベタ褒めしてくれて、とても嬉しい……。
このワンピースにしようかなと思っていたけれど、奥様が衣装ケースから色違いのワンピースを取り出した。
「今のお嬢さん、とっても上品でお似合いです! しかし! 大切なご家族と久しぶりの再会であれば……こちらの色もおすすめしたいですわ」
「ふむ、一理あるな。黒はサラちゃんが普段着ている制服と同じ色だからね」
奥様とキーちゃんは顔を見合わせて、ハイタッチを交わした。
こうして、ぼくは色違いである純白のワンピースを着てみることに。
ふと鏡を見ると、黒よりも白の方がぼくの雰囲気に合っている気がしたけれど……。
「ルル。可愛くて素敵なワンピースだけど、白色って、汚しそうで心配かも……」
「サラちゃん、気にしすぎよ! せっかくの再会なのよ、好きなお洋服を選びなさい? まぁ……わたしとお揃いの白だと嬉しいわ!」
「ありがと。ぼくはルルが好きだから、お揃いにするね」
モフモフで真っ白なルルが、ぼくの不安を払拭してくれた。
勇気を出して、白いワンピースに着替えたぼくは、もう一度オーちゃんたちの前でお披露目することに。
「着てみたよ、どう?」
「あぁっ……! 天使のお姫様みたいだわ……!」
「オウレン、サラちゃんは正真正銘の天使族だよ。本当に似合ってるね」
「サラちゃん、可愛すぎて滅ッ!」
なぜかおじさんもトレーニングルームに来ていて、人差し指と中指をビシッと立てた、不思議なポーズをドヤ顔で決めていた。
というか、さっきと違って、いつの間にか、オーちゃんとキーちゃんもオシャレな格好をしている――?
「私たちの服装が気になっているのね?」
「実はね、サラちゃんがお着替えしている間に、オウレンの部屋で着替えていたんだ」
オーちゃんとキーちゃんのお洋服だけど、二人とも同じ紺色のジャケットにベージュのスキニーパンツ、そしてブーツを履いていた。
「乗馬コーデっぽい! 二人とも、とっても似合ってるね!」
「サラちゃん、よくわかったね。オウレンとキハダさんは明日乗馬体験のレッスンを受けるんだよ」
「へぇ、いいね!」
ぼくもお馬さんに乗ってみたいかも。
でも、素人だし……。
「そうだ、サラちゃん! 僕から確認したいことがあって、ここにやって来たんだ。レンゲのお父さんがね、明日は川で釣りをしよう、と誘ってくれて。でも、サラちゃんがやりたいことを優先したい。どうかな?」
「……じゃあ、明日は釣りにしようかな?」
せっかく、おじいちゃんに会うのだから、まずは一緒に過ごしたいと思い、釣りを選んだ。
「大丈夫だよ。今回は一泊二日で行くから、明後日、みんなで乗馬体験してみよっか?」
「うん! そうする!」
明日以降の予定が決まったこともあり、ぼくはワンピースの他に乗馬用のお洋服も試着して、わいわいとみんなでファッションショーを楽しんだ。
だけど、はしゃぎ過ぎて疲れたのか、自室に戻ったぼくは猛烈な眠気に襲われる。
明日着ていくお気に入りの白いワンピースと大切な馬蹄ネックレスをクローゼットに飾ってから、ぼくは夢路をたどった……。




