五十歩百歩な王子たちと馬に導かれた第一王女 ※第三者→第一王女視点
【※注意】今話は前半:第三者視点(王子サイド) → 後半:第一王女サラ視点に切り替わります。
第5王子・シアンが会議室を去り、定刻まで残り3分となった頃。
「おっはようございますー!」
「おはようございます……」
紫髪の第4王子・ノイラと眠たげな第6王子・ニコが姿を現した。
「シアンさんと入れ違いになったんですけど……何が起きたんですかー?」
ノイラはヘラヘラ笑いながら、第1王子・ビルに問いかける。
「愛馬に会ってくる、と言って消えた」
「愛馬に会ってくる?! シアンさん、とうとう会議より競馬を優先したのかぁ〜」
「なるほどねぇ」と頷いたノイラは、用意されていた空のマグカップにコーヒーを注ぎながら、一緒に来たニコへ話しかける。
「ニコ、残念だと思わない?」
「狂気の沙汰だ」
「えっ?」
「ギャンブルは一度ハマるとやめられないさ……」
「えっ……?」
キョトンとしているノイラを気にすることもなく、席についたニコは自前のプロテインシェイカーを取り出し、無心でシャカシャカと振り始めた。
ニコのシュールな言動に、第2王子・ダンは大笑いする。
「はっはっは! ニコ、君が一番若いのに……。なんで酸いも甘いも噛み分けた大人のような発言をするんだ!? しかも、プロテインを持ってくるとは……ふふっ!」
ダンが笑い続ける中、第3王子・ダルテは手元の名簿に目を落として、欠席者を確認し始めた。
「ビル様。ルパタさんとエバスは……」
「三族山で緊急事態が発生したと報せを受けた。今回は不参加だ」
「承知いたしました」
「さて――定刻だ。これより会議を始める!」
パンッとビルが手を打つ。
いつもより参加者の少ない王族子女会議が始まった。
なお、今回も第一王女の捜索に関して、誰も有益な情報を掴めていないようだった。
♡ ♡ ♡
王族子女会議の翌日。
ぼくはおじさん家でのんびりと充実した夏休みを送っていた。
ルルと一緒に少女漫画を読んだり、キッチンでバナナケーキを焼いたり……。
今日の朝ごはんは、おじさん特製のしそわかめのおにぎりに、出来立てのハムエッグ、そして新鮮なサラダ。
「うーん! おじさん、全部美味しいよっ!」
「良かったー! サラちゃん、いっぱい食べてね。オウレンもね?」
ぼくの隣でオーちゃんも美味しそうに食べている。
「ありがとう、兄さん。そういえば、明日からはみんなで三族山のキャンプに行くのよね?」
「うん。一応、新聞で天気予報を確認しておこっか」
おじさんは朝刊を取りに玄関に向かった。
だけど、しばらくして、ドタドタと大慌てでリビングに戻ってきた。
「どうしよう! 三族山が大変なことになってるよッ!」
おじさんがぼくとオーちゃんの前で新聞の一面を広げて見せてくれた。
オーちゃんが率先して、新聞の見出しを読み上げる。
「えっと、『某宗教団体が三族山の登山口を封鎖、通行止めに』って書いてあるわ。兄さん、これだとキャンプ場も……」
「うん。今回のキャンプは中止だね……」
「そんなー……」
楽しみにしていただけに、みんなで落ち込んでしまった。
キャンプ場でバーベキューをして、釣りも楽しむ予定だったのに。
「じゃあ、明日はどうしようかしら? せっかくの夏休みだし、他のところに行く?」
「どこにしようかなぁ……」
オーちゃんとおじさんが腕を組んで考え始めたところで、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
「あれ? おじさん、今日は漫画の打ち合わせ?」
「いや、担当者さんとは先週会ったから違う気がするけど……。ちょっと行ってくるね!」
再びおじさんが玄関まで様子を見に行ってくれた。
やがて、リビングのドアがバンッ! と開いた。
「サラちゃん! ルルちゃん! オウレン! みんな元気だったか!」
快活な声で挨拶したのは、草野球大会ぶりに再会したキーちゃんだった。
ぼくの膝上にルルがちょこんと座っているのに気づいて、手を振ってくれた。
(キーちゃんがきてくれた! 嬉しい……!)
「キハダさん!? どうしてここに?」
オーちゃんが頬を赤らめながら、訪問理由を尋ねる。
「レンゲ様のお父様から手紙を受け取ってね」
キーちゃんは胸ポケットから、一通の白い封筒を取り出した。
一緒に戻ってきたおじさんは、玄関先で話を聞いたからか、真一文字に口を結んだままだ。
ぼく自身、お母さんのお父さん――おじいちゃんに会ったことはない。
でも、おじいちゃんが手紙を送ってきたってことは……何か困っているのかな?
「キーちゃん。もしよろしければ、ぼくも手紙を読んでいいの?」
「もちろん。ニボルさん、いいかな?」
「うん。僕とサラちゃん、二人で読んだほうがいいかもね……」
おじさんは神妙な面持ちで、キーちゃんから手紙を受け取った。
「お願いします、ニボルさん。さぁて、オウレン! 君は私とドライブデートだ。買い出しに行こう」
「ちょ、ちょっと! キハダサン?!」
キーちゃんはあたふたしているオーちゃんを連れて、リビングから去ってしまった。
リビングに残ったぼくとおじさんはダイニングテーブルに腰を下ろす。
「サラちゃんはレンゲのお父さんがどんな人物なのか、知らないよね……」
「うん、生きていることしかわからない。どんなおじいちゃんなの?」
「その答えは手紙に書いてあるよ。実はね、さっき玄関でキハダさんに見せてもらったんだ。読んでごらん」
「ありがとう。読んでみるね」
少し緊張して手が震える。
それでも、封筒から便箋を出し、手紙を読んでみることにした。
『レンゲの娘へ。
生きているか。
最近、病気が見つかった。
いつ亡くなってもおかしくない。
私は今、競走馬の生産牧場で暮らしている。
かつて、レンゲと共に過ごした、思い入れのある場所だ。
会いに来てくれたら嬉しい――』
ぼくのおじいちゃんは優しい人だ……。
病気で苦しいはずなのに、ぼくのことを気にかけて、手紙をよこしてくれたんだ。
思わず目頭が熱くなる。
「サラちゃん……」
「サラちゃん、わたしがいるわ。大丈夫よ……」
ぼくの涙が落ち着くまで、おじさんとルルはずっと優しく見守ってくれた。
そして涙を拭ってから、ぼくはおじさんにお願いをした。
「おじさん、ぼくをおじいちゃんのところにつれてって」
<余談>
ニコくんの「狂気の沙汰」はある麻雀漫画が由来です。
一方、サラちゃんの「つれてって」はある野球漫画が由来です。
ニコサラコンビは漫画好きという共通点があります。
次回もお楽しみに!




