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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで
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従魔の暴走〜ゲーム世界に消えた王子〜 ※従魔チョコ視点

【※注意】主人公ではなく、第3王子ダルテの従魔:チョコ視点です。第153話『お姫様の逃走』以降、チョコに起きた出来事を書いております。

「クソッ……! 待てよ!」


 男装の姫様をあと一歩まで追い詰めたものの、ニコが彼女を庇うように抱き寄せ、移動魔法を使いやがった。


 どうやら、ニコ自身の部屋に連れて行ったようだ。


 俺様は急いで、ご主人様の容姿から、いつものコウモリ姿に戻る。

 そのまま一般科の男子寮へ飛び、ニコの部屋へ突入しようとしたが――すでに強固な結界が張られていて、中に入り込めない。


 元々、ニコは頑固な性分だ。

 俺様の気配を察知した上で、頑なに結界を解除しない。


(まぁ、今日は撤退しよう。たまには、ご主人様の部屋でゆっくり休憩してもいいよなー)


 これ以上待機するのは時間の無駄だと諦め、俺様は一般科から特別科の男子寮へ引き返した。


「ただいま、俺様〜」


 誰もいない静かな部屋。

 ご主人様がいないだけで、思いっきり緊張感が緩んだ俺様は、お気に入りのブランケットの上で爆睡してしまった。


 ――あれ。俺様、一体どのくらい寝ていたのだろうか……?


 パッと部屋の明かりが灯り、大きな人影、そして仄かに漂う「花の香り」で、目が覚める。


(ご主人様だ!)


「お帰りなさいませ!」

「……ただいま」


 ご主人様はすぐに制服のジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めると、ソファに腰掛けて、何やら書類を読み始めた。


「あれ、その書類は何ですか?」

「レンゲ様の論文だ。ビル様の従魔が渡してくれた」

「へぇ。どんな動物の従魔だったんですか?」

「わからない。終始、ヒトの姿をしていたからな。それより、チョコ。何か手がかりは掴めたのか?」


 一瞬、何の動物の仲間なんだろう? とワクワクして尋ねてみたら、逆にご主人様から問われてしまった。


「直接、姫様に会えたのですが、ニコと一緒に逃げられてしまいました! 急いで追ったのですが、結界を張られてしまって……以上です!」


 しまった!

 

 俺様は嘘がつけない。

 馬鹿正直に答えてしまった。


 ご主人様は俺様に何も言ってこない。

 だけど、「はぁ……」と大きなため息を吐き出して、論文に目を通す。


 ご主人様はひとりの世界に入ってしまった。


 無言の圧力。


 冷静なご主人様のことだから、声を荒げることはないけれど、落胆したご様子から、失望されたことが嫌でも伝わってくる。


 俺様は気まず過ぎて、「もう一度行ってきます!」とだけ告げて、ニコの部屋へ飛んでいった。


 ご主人様のところから離れたら、気持ちが落ち着くかと思ったが、心臓の音がうるさくて、動悸が収まらない。


 それでも、さっきと違って、ニコの部屋は結界が張られていなかった。

 

 ベランダ側の窓から明かりが漏れている。

 窓も開いていて、黒いカーテンが揺れていた。


 今の時間は0時過ぎ。

 なのに、まだ起きているのか。


 部屋の中に入り、声をかける。

 

「もう深夜だぞ。何をしてるんだ?」


 カチカチカチカチカチカチカチッ――。


 ニコはベッドの上でだらしなく寝転び、携帯ゲーム機に熱中していた。

 画面に映っているのは、淡紫色の髪で可憐なバニーガールと、ニコに似ている狼男。


「ニコー? ニコ!」


 何度も名前を呼んでも、俺様のことに気づいてくれない。


 なぜなら、ニコはゲーム画面を食い入るように見ながら、ひたすらボタンを連打している。

 しかも、ヘッドホンをしていて、ずっと無反応だ。


「おーい! 何やってるんだよ?!」


 俺様は画面の前でバサッと翼を広げて、威嚇した。

 すると、ニコは嫌そうな顔をして、ようやく動きを止めた。


「いいところだったのに、どうして邪魔を?」

「ご主人様に報告しないといけないんだよ!」


 俺様が叫んでも、ニコは視線すら向けない。

 その無関心さが、俺様の心に冷たい楔を打ち込む。


「ニコ! 俺様は真面目に相談してるんだ。少しでいいから、俺様の相談に乗ってくれ!」

「無理だ。数時間後には好きな子と映画を観に行くんだ。悪いけど、明日以降にしてくれ」


 ゲームに、好きな子と映画――羨ましいなぁ。

 

 ブラッドリー家の養子になり、第6王子として、自由に青春を謳歌しているニコ。


 一方で、ご主人様の命は絶対だから、毎日せっせと働いている、従魔の俺様。


 元々、俺様とニコは同じ施設にいたはずなのに。


 どうして、こんなに天地の差が生じたのだろう。


 俺様の中で、プツリと何かが切れた。


「いいよな、お前らは……」

 

 ご主人様に負荷をかけたくなくて、今までずっとコントロールできていたのに。

 

 俺様の身体が魔力で黒く染まっていく。


 ダメだ、制御できない――。


「わかってるぜ! 従魔である俺様の気持ちなんて、ご主人様も、ニコも、みんなわかってくれないんだよォオオオ!」

「おい、チョコ! どうしたんだ、その魔力は――」


 ニコが慌てて身を起こしたが、もう遅い。


「リア充なんて、爆発してしまえ――――――!」

 

 俺様の怒りに呼応したのか、ゲーム画面が異様な光を放つ。

 湧き出る強大な魔力が、俺様の意思を置いてきぼりにして、暴走していく。


「俺様は決めたぜ、大好きなゲームの中に閉じ込めてやる! デートなんて自惚れやがって! 絶望の中で指を咥えて見てろぉおおおお! ウォオオオオオオ!」


 画面の光が部屋全体を覆ったと同時に、俺様の意識もぷつりと途切れた。


 ……それから、どのくらい経ったのだろうか?


「あれ。俺様、どうして魔力が?」


 ようやく我に返った俺様の目の前で、ニコが倒れていた。

 

 それだけなら、まだよかった。


 微かに呼吸はしているものの、ピクリとも動かない。

 まるで、魂だけがどこかへ抜け落ちてしまったように。


「おい、ニコ? ニコ、どうしたんだよ?!」


 俺様は羽根をパタパタさせて、必死にニコを起こそうとした。

 けれど、ニコは微動だにしない。


「なんでだよ!」


 ふと、電源がついたままのゲーム機に目を向ける。


 そこに映っていたのは、狼男の姿で、ゲームの中で眠っているニコだった。


「アアアアアアア! どうして、こんなことをしちまったんだ!」


 初めて怒りで我を失い、ニコをゲームの世界へ閉じ込めてしまった己の愚かさを、俺様は骨の髄まで後悔した。


 最近、まともに仕事ができていない俺様が、こんな大失態をご主人様に相談できるわけがない。


 どうすればいいのか、もう何もわからない。


 俺様はフラフラと外のベランダへ向かい、朝日が昇る中、声を殺して泣くことしかできなかった。

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― 新着の感想 ―
チョコ視点、かなり面白かったです(o^-')b 最初は俺様口調と嫉妬がコミカルで笑えるのに、ニコとの差を感じて感情が爆発していく流れが切なかったです。 「リア充なんて、爆発してしまえ」が勢いありすぎ…
 あらららららーーー!!  優しいニコ君が、  大変なことになってしまいましたね……  チョコちゃんのベランダで泣いてる姿が目に浮かび、ホロリ(T . T)
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