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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで

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第一王女の秘密〜18歳までのカウントダウン〜

「サラちゃん、おはよう。大丈夫?」

「ルル、大丈夫だよ。おは……よう」


 昨夜の出来事が頭から離れず、ぼくは、ほとんど眠れなかった。

 

(「愛してるよ」って言われたんだもの……。どんな顔で会えばいいんだろう?)


 鏡の前で何度か深呼吸をして、ぼくは浴衣を脱ぎ、「よしっ!」と気合いを入れて制服に着替えた。

 剣術袋を背負い、いつもの「後輩のサラ」を演じる準備を整える。


 第一王女だと、バレていないよね?


 いや、大丈夫だと信じるしかないんだ。

 

 決意を固めて、朝食ビュッフェの会場へ向かうと、おじさんと、特別科の制服を着たダン先輩の姿が目に入った。


(あっ、いる……!)

 

 心臓がドクンと大きく跳ねる。

 

 それでも勇気を出して、「おはようございます!」と声をかけようとした、その時だった。


「……っ!」

 

 ダン先輩の顔が、沸騰したヤカンのように、耳の先まで真っ赤に染まっていた。

 

(えっ? ダン先輩、どうしたの?)

 

 不思議に思って視線を向けると、ダン先輩の手の中に、一枚のカードが握られているのが見えた。


 そこに描かれていたのは……例の、胸の谷間や太ももを大胆に露出した、バニーガール姿のシコンちゃんだった。

 

 おじさんが楽しそうに語りかけている一方で、ダン先輩は顔を真っ赤にして、そのカードを凝視していた。

 

(なっ……!?)

 

 ぼくは思わず立ち止まった。

 昨夜のダン先輩の、マシュマロみたいに蕩ける甘い声が、脳裏をよぎる。

 

『お花の良い香りに、砂糖菓子のように可愛らしい声。あぁ、お会いしたかった……第一王女様』

 

(第一王女様を愛してるって、泣きそうな顔で言ってたのにッ! シコンちゃんみたいなナイスバディの女の子が好きなの!?)

 

 しかも、あんなに顔を真っ赤にして照れているなんて、よっぽどドストライクだったんだ!

 

 なんだか急に、昨夜ひとりで、ルルにも相談しづらくて……お風呂で悶々としていた自分が馬鹿らしく思えてきた。


 胸の奥に小さな棘がチクリと刺さっていく感じがして、自然と口元がムーッと尖っていく。


 そういえば、「部下にならないか」とダン先輩から打診された時に言われた内容を思い返す。

 

『女性はか弱いから、わたしたちがしっかり守らないとな』


(やっぱり、ダン先輩は『可憐で、女の子らしい乙女』が好きなんだ……!)

 

 おじさんたちがぼくの方を向いて声を掛けてくれたけれど、ぼくは「おはようございます!」と挨拶した後、二人のテーブルには近づかず、ビュッフェに移動して、チョコクロワッサンをお皿に乗せた。


 そのまま会場の隅っこの席にぽつんと座ったぼくは憂さ晴らしに、チョコクロワッサンを口に運ぶ。

 

 サクサクの生地の中から、甘いチョコレートがとろけ出す。


(お、美味しいっ……! って、あぁっ! 忘れてた!)


 昨日、無人売店で買ったミルクチョコレートを食べ損ねていた。


(ルル、ごめん! 自主トレの後、部屋で一緒に食べようね?)

 

 心の中でルルに謝りながらも、口いっぱいに広がるチョコレートの甘みは、昨夜の「甘くて苦い」記憶を、少し上書きしてくれた気がした。


 食べ終えたぼくは、旅館が管理している体育館の鍵を借り、一人で剣術の練習に励んでいた。


 体を動かすのは楽しい。

 それでも、不安が拭えない。

 

(前より踏み込みが鈍い……? 下半身が重いというか、重心もブレている気がする……)


「はぁ……」

「あぁ……」


 ぼくのため息が、背後から聞こえた誰かの吐息と、ぴたりと重なり合った。


 声がした方を振り向こうとしたら――。


「君なら、ここにいると思ったんだ……サラ」


 すでにダン先輩がぼくの目の前にいた。


「ど、どうして、ここに?!」

「昨日の件で、伝えていなかったことがある。医務室では、本当にすまなかった!」


 突然の謝罪に、ぼくは圧倒されてしまい、「えっ、えっ? えぇ……」と壊れた洗濯機のような返答しかできなかった。

 

 その間、当のダン先輩は大型犬みたいにしょんぼりしながら、おそるおそるぼくの様子を窺っていた。


(医務室()()って言った。酔ってからの記憶はないのかな?)


 かといって、ぼくの方から昨夜の出来事に触れるのは気まず過ぎる。


「大丈夫です。ぼくは自主練してるので、どうぞお構いなく……」


 ダン先輩には申し訳ないけれど、今は淡々と、この場をやり過ごすしかない。


「ありがとう、サラ。では、話が変わってすまないが、第一王女様を見かけなかったか?」

「……見ていません」

「そうか……」

「あの……」


 ぼくは木刀を握り直して、ずっと言えずにいた思いを吐露した。


「前に、ぼくのことを部下にしたいって……」

「あぁ!」

「子供の頃、ぼくは剣術が怖くて、泣きながら道場に通っていた、弱い人間です。それにダン先輩と比べて、ぼくの体は小さいから……部下にはなれません。ぼくより強い人がそばにいた方が、ダン先輩にとっても、第一王女様にとっても良いはずです」


 自分を卑下する言葉が、口をついて出た。

 

 どんな未来が来ても、ぼくはダン先輩の「部下」としては、そばにいられないのだから。


 けれど、ダン先輩は目を見開き、一歩前に踏み出した。


「それは嫌だ!」

「へっ……」

「第一王女だけでなく、君までわたしの前からいなくなるのは、絶対に嫌なんだ!」


 即答だった。


 真剣な瞳でぼくを見つめ下ろしたダン先輩は、自身の分厚い胸板に手を当てた。

 

「この身体は、第一王女のためだけではない。君のことも守りたいと思ったから……4月に入ってから、さらに筋トレと剣術に励んで、身体を大きくしたんだ。サラ、君がいないとわたしは困る。困った時はお互い様だろう?」


(ぼ、ぼくのことも、守りたい?!)

 

 ダン先輩は、行方不明の第一王女(本当のぼく)を探している。


 でも、目の前にいる「後輩のサラ」のことも、同じくらい大切に想ってくれているんだ。

 

 胸の奥で燻っていた嫉妬や不安が、嘘みたいに、スッと晴れていくのを感じた。


「ふっ……!」


 ぼくは知らぬ間に笑みをこぼしていた。


「ダン先輩、ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします!」

「もちろんだ!」


 ダン先輩はパァッと太陽のような笑顔を見せた後、「よし、わたしは第一王女を探してくる!」と意気込み、嵐のように体育館を去っていった。


 その後ろ姿を見届けてから、ぼくは個室に戻り、ルルと一緒にミルクチョコレートを分け合った。


「あー。美味しかった! 剣術で汗をかいたし、お風呂に入ってこようかな!」


 制服を脱いでサラシを解こうとした時、枕でくつろいでいたルルがぽつりと呟いた。


「ダン先輩ったら。シコンちゃんより、サラちゃんの方が胸が大きいし、スタイルがいいわよ」

「ルル! 何言って!」


 ぼくは顔から火が出るほど赤くなり、慌てて両手で胸を隠した。


「だって、本当のことだもの。そうね、胸の形もサラちゃんの方が」

「こ、これ以上は何も言わないでぇ……!」


 ジャブーン!


 ぼくは逃げるように、露天風呂へ飛び込んだ。


 お風呂に浸かりながら、自分の身体を観察する。


(さっきの重心のブレ、やっぱり腰回りや胸に脂肪がつきやすくなっているんだ)


 成長とともに、女性らしく丸みを帯びていく身体。

 何度も回復魔法を使った影響もあるのかもしれない。

 

 前はすぐにサラシを巻けていたのに、最近は胸を潰すのが、苦しい。


 あと二年ちょっと乗り越えられたら、ぼくは第一王女ではなく、普通の女の子になれるんだ。

 

 でも、あと二年、頑張らないといけない。


「18歳になるまで、男として生きていけるのかな……」


 不安が胸をよぎったけれど、ぼくはすぐに首を振った。


(ネガティブになったらダメだ! 今回もバレずに済んだんだ。運が味方してくれているから、きっと大丈夫)


 そう信じて、ぼくは雲ひとつない澄み渡る朝の空を見上げた。

<ご挨拶>

ご愛読いただきありがとうございます!

「続きが気になる!」「サラちゃん、頑張った!」「ダン先輩、素敵!」と感じていただけましたら、高評価やブックマーク、リアクションで応援していただけますと幸いです。


評価はページ下部にある【☆☆☆☆☆】から、

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最近のダン先輩は、野球で二刀流だったり、破廉恥と叫んだり、大忙しでしたが、皆様はどのシーンがお気に入りでしたか?


ぜひリアクションやコメントで教えてくださいね!


次回は【ダン先輩視点回】をお届けする予定です。

どうぞお楽しみに!


Grazie mille♡

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― 新着の感想 ―
 とても素敵で好きなエピソードです╰(*´︶`*)╯♡  ダン先輩が照れながら去っていく姿が、目に浮かびます♪  サラちゃんのお胸ーーサラシ意外に何かいい手立てはないものか?  と。( ^ω^ …
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