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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで

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『昔』ごと知り尽くしたい〜薔薇姫に捧ぐ、運命の香り〜 ※第3王子視点

【※注意】今話はダルテ(第3王子:ご主人様)視点回です。

「はぁ……」


 特別科の男子寮――自室に戻った俺は、ため息をついてから、エスプレッソを飲み干した。

 そのタイミングを見計らって、従魔のチョコが俺に声を掛けた。


「ご主人様、保健医さんとキハダさんに邪魔されましたね……」

「そうだな。だが、あの少年は相変わらず面白い。改めて、俺の知的好奇心が刺激された」

「え?! どういうことですか? 教えてくださいよー!」


 興味津々な様子で、チョコが俺の話に身を乗り出した。

 事の経緯を整理しながら、順を追って説明することにした。


「放課後に、ノイラの従魔が突然、一般科の廊下に現れただろう。その時、あの従魔は手にウサギのシールを持って、嬉しそうな表情をしていた。そこで、俺は従魔と意思疎通できる何者かが近くにいるはずだと推論し、階段を降りてみることにした」

「そしたら、ちょうど上ってきた少年とぶつかってしまった、と」

「あぁ、またしても出会ってしまった。通常の俺なら、一般科の生徒など関心の対象外だから見逃すところだが……今回ばかりは、運命の悪戯だと思った」

「へえ。運命の悪戯――ロマンチックな話ですね〜」


 チョコは、いかにも月並みな意見を口にして、適当に頷くだけだった。

 大した出来事ではない、とでも言いたげな顔だ。

 

 一方の俺は、そんな能天気な従魔を、少し羨ましく思えた。


「俺が助けた時、あの子は真っ先にチョコを見て、驚いていたな」

「え?! そうでしたか?」

「気づいてなかったのか」

「あはは……。いやぁ〜、ご主人様。さすがに執着しすぎでは? あの少年、かわいいっすけどね」


 チョコにとっても、彼――いや、()()は「かわいい」存在だと思ったようだ。

 確かに、彼女は危なっかしくて、感情がそのまま顔に出ていた。嘘をつくのも壊滅的に下手で、言い訳に「チョココロネを食べたから、チョコレートの匂いがします!」と言い出すあたり、予測不能な思考回路の持ち主だ。

 

「かわいい、なんて4文字の言葉で済ませていい存在じゃない」

「えぇっ……。もはや、相当拗らせてませんか……」


 俺の率直な答えに、チョコはギョッとして羽をパタパタさせていたが、気になっていたことがあったようだ。


「あっ! ご主人様に聞きたかったことが。どうして、ウサギの挨拶を少年にしたんですか?! 『かわいいから』以外にも理由があるんですよね?」

「もちろん。あの子のことを、俺は第一王女の従魔だと思ったからだ」

「ん?! 従魔……?」

「そうだ」


 俺は即答して、話を続ける。


「言葉遣いが丁寧で、漂う香りからも育ちの良さがうかがえた。小動物のように怯えながらも、すぐに逃げ出そうとしなかっただろう。それで俺は確信した。第一王女の元で育てられた、ヒト化できるウサギの従魔に違いないと」

「おぉー! 俺様と同じタイプだと思ったんすね!」


 チョコが嬉しそうに目を輝かせている。


「だが、違った。あの子のおでこに触れた時、従魔なのか正体を暴く魔法を発動させたのだが、無反応だった」

「ふぁっ?!」


 俺の予想が外れたことを告げると、チョコは、目を点に――いや、球体のチョコレートのように丸くした。

 

「魔法が効かなかった以上、あの子は従魔じゃない」

「じゃあ……ただの人間?」

「それも違うな。本来、魔力を持たない人間の生徒には見えないはずの従魔――チョコを、あの子ははっきりと認識していた」

「うーん。そしたら、天使?! でも、キハダさんが言ってましたよ? この学校に天使族は存在しないって」

「でも、キハダさんの今日の態度は、違和感しかなかった。それに……」


 思い返す。

 保健医が、あの少年を「大切」だと二度も強調していた。

 少年も保健医のことを「オーちゃん」と親しげに呼んでいた。


 お互いの視線は、単なる教師と生徒の関係には思えなかった。

 家族のような、もっと深い絆で結ばれた存在といったところだろうか。


 さらに不可解なのは、キハダさんが突如現れ、二人を同時に瞬間魔法で移動させたことだ。

 直後、俺の方からその魔法を使った理由を問い詰めようとしたが、キハダさんは返答する隙さえ与えず、すでに姿を消していた。


 つまり、あの子は従魔ではないし、ただの一般科の生徒でもない。

 

 それでも、第一王女本人だと断定するには、まだ決定的な証拠が足りない。

 

「箱入り娘のように守られているなんて――第一王女に極めて近い存在なのだろうか」

「ご主人様〜。箱入り『娘』って言っちゃってる時点で、もう答えが出てませんか?」

「いや、第一王女とは言い切れない。一人称が『ぼく』だっただろう?」


 レンゲ様の一人称は「私」だった。その娘である第一王女が、いくら正体を隠しているとはいえ、自らを「ぼく」と称するのは想像し難い。

 

「あーあ。あの少年、ご主人様に囚われる覚悟はできてなさそうですよ? 幼いし、下手したら、他の人物に奪われるかもしれない」


 珍しく、チョコが俺に忠告を述べてきた。


「ふーん。それなら、俺は調べるとしよう。あの子――薔薇姫が何者なのか。第一王女であろうと、そうでなくても、全てを知り尽くしたいと初めて思った」

「おっと、俺様、ご主人様に火をつけちゃいましたかー?」


 チョコは楽しそうに笑っていた。


「あぁ。あの子の顔を見た時、俺は離れるという選択肢を考えなかった。支配欲でもないし、逃げ場を奪いたかったわけでもない。ただ、手放したくなかった」

「それ……恋じゃないですか?」


 認めるわけにはいかない。

 感情的になるのは、性に合わないからだ。


 なのに、どうしても気になってしまう。

 チョコの言う通りだった。


「あぁ。俺は初めて、想定外の感情を抱いたことになる」


(なんて悪い子なんだ。俺の理性を失わせるなんて……)


 その香りは、俺を狂わせた。

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追いつきました! ルパタ視点で「気づき」が走るところから、バイト編の支え合いで日常が守られていくのに、検査データやキハダさんの動きで不穏さが濃くなる……この緩急が刺さりました。 そして128話、ダル…
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