ずっと、ここに19
ずっと、ここに19
朋子は階段から転げ落ちて、気を失った。
気が付いたら、血だらけになっており、横に八木が気を失っていた。
朋子はこの男とは一緒に暮らせない、逃げなければと思った。
でもどこに逃げたらいいのか。
実家にはもう行けない。
直哉の家のことが思い浮かんだ。
優しい義母に話せば、しばらく住まわせてくれるかもしれない。
そもそも、私が出て行ったのは直哉の浮気が原因で、私が悪かったわけではない。
阿佐ヶ谷の家に行ってみよう。
深夜だから、歩いていけば、顔が傷だらけなのは、誰も気が付かないだろう。
念のために、頭からフードをかぶっていこう。
新宿から青梅街道を歩いて1時間位で着くだろう。
午前2時頃に着いた。
玄関のドアを試しに回してみた。
あ、鍵がかかっていない。入ろう。
一階のリビングに行った。懐かしいが、やけに部屋が荒れているなと思った。
電気をつけて、驚いた。
仏壇があり、義母の写真が飾られていた。
亡くなったのか…
朋子は涙が自然と出てきた。
優しかった義母と会いたかった…
涙が止まらなく、しばらく茫然としていた。
そして、人の気配がしないなと思った。
二階に行ってみたが、直哉はいなかった。
もういいや、眠くなった、ここで寝よう。
昼頃に起きて、ベッドでぼんやりとしていた。
玄関が開く音がした。
直哉が帰ってきたんだ、どうしよう。
勝手に入ったことを謝るか、仕方ない。
でも、何で私が謝ることがあるのか。
気持ちが葛藤している間に、一階から階段を上がってくる音が聞こえた。
思わず、ベッドの陰に隠れたが、すぐに直哉に見つかってしまった。
しかし、直哉は自分が朋子とは気づいていないようだ。
顔にケガをしていて腫れているから、分からないのだろう。
いい案が浮かんだ。
記憶喪失になったことにしよう。
ケガが治ったら、またその時にその後のことは考えればいい。
そしてケガが治り、初めて顔を見せたときに直哉はビックリしていたが、私を気遣って、知らないふりをしてくれた。
それから、二人の生活が始まったが、以前の直哉ではなく、とても気遣いが出来る優しい人になっていた。
もともと性格は温厚であったが、私が出て行ったことを悔やんでいることも分かった。
この人とやり直した気持ちに次第になっていく自分に気が付いた。
そして、直哉の気持ちを確認するような質問をした。