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君とともに、もう一度。~事故で死んだ父親は女子高生として家族のもとへ戻る~  作者: つけた


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26/26

2-16 3人の時間

「それじゃ、少しだけ……お願いします」

 申し訳なさそうに、美鈴が言う。

 ……当たり前みたいに、それじゃお願いね、って言って欲しい。

 あるいは、ゴメンね、休ませてもらうよって、遠慮せずに頼ってほしい。

 そしたら。

 はいはい、今日は休んどけ……って、言えるのに。

「……はい」

 それだけ答え、優人の方に向き直る。

 

 カードが貼られた台紙を受け取り、優人に見えるように向ける。

 1枚ずつ指さしながら、読み上げた。

「『おさんぽ』『ください』……だね」

「うん、わかったよ。お散歩、行こうか」


 優人の左側にまわりこみ、右手を差し出す。優人が掴みやすいように、小指を伸ばすと、優人もスッとその指を掴んだ。

 

 ……?

 視線を感じて振り返ると、美鈴がこちらを見ていた。

「どうか、しました?」

「あ……すみません。なんでもないです。行きましょうか」

 

 美鈴に促され、歩き出そうとして……優人を歩道側にして、自分が車道側を歩く。

 いつもの位置だ。


 この近くに、小さな公園があるから、そこに行こうか?

 ……っと、こっちで勝手に決めるわけに行かないか。もう夕方だし。

「み……神崎、さん、この後、予定はあるんですか?」

「この後……いえ。ここが済んだら、そのまま帰ろうかって思っています」

「そうですか……じゃあ、そこの公園を少し歩くのはどうですか?」

「そうですね、そうしましょう」



 公園までの道は、優人の手を離さずに、オレが優人の少し前を歩く。その少し後ろを、美鈴が歩く。

 優人、ハミングしだした。機嫌良いみたいで、良かった。でも……

 

 美鈴。いつもより、歩くのが遅い。足も、引きずりがちだ。

 「優人くん、少し待って?お母さんと離れてるよ」

「すみません、遅くて…」

 何度か立ち止まって、公園の入り口まで来た。


 公園に入るなり、つないだ手を離して、駆け出そうとする優人。

 嬉しそうに、楽しそうに……両手をパタパタと振りながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 駆け足で追いつき、横に並ぶと、笑顔のままペースを落とし、手を繋いでまた歩き出す。

 後に続く美鈴に、声をかける。

「お疲れでしたら、ベンチで休んでてください。目の届くところで、遊びますから」

「……本当に、ありがとうございます。気を遣っていただいて……」

 いいんだよ。少しでも、休みな。

 優人は、オレが見てるから。

「いえ、私も楽しいですから」

 そう一言伝えて、優人の手を離し、背中を軽くポン、と叩く。

 いつも、公園とか神社とか……危険がないところでやっていた、『好きに歩いていいよ』のメッセージ。

 キャッキャと、嬉しそうな声をあげて駆け回る優人。

 周りに人もいないし、その声を楽しみながら、優人のあとを追いかけて回った。

 ベンチに座る美鈴も、優人の様子を優しい目で見ていた。

 


 楽しい。

 ずっと、この時が続けばいいのに。

 そう思わずにいられなかった。

 それくらい、幸せな時間。

 だから……気づくのが遅れた。


 美鈴。

 ベンチの背もたれに、体を預けている。

 さっきまで優人を見ていた顔が、俯いていた。

「……神崎さん?」

 急いで優人と手を繋ぎ、美鈴のそばに駆け寄った。

「ご、ごめんなさい……大丈夫」

 答えはする。でも、顔色はさっきより悪い。

「立てますか?つかまってください……!」

「いえ……本当に、大丈夫ですから」

 美鈴が立ち上がる。けど、一歩踏み出そうとして、ふらついた。

「神崎さん!?」 

 ……ああ、もう!こういう時、なんで無理しようとするんだよ……!

 優人のことなら、オレが……

 ……いや、今のオレには、そんな事、言えないか……。

「神崎さん、家まで……送らせてください」

「永田さん……いえ、そこまで……」 

「お願いします。……心配なんです」

 頭を下げて、懇願する。——ここまですれば、美鈴が断れなくなると知ってて。

 卑怯な言い方かもしれない。

 けど、構ってられない。

 美鈴……オレを、頼ってくれ。 

 

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