11/11
11 甘味処にて
夕方、街の小さな甘味処で、桜井美和は羽織を着て座っていた。隣には由香が、向かいの席にはアリシアがいる。この店の通りの向こうにあるホールで二時間ほど前、エンベレス・ベルト新王者となった藤崎燐の初試合が終わったところだった。
「由香ちゃん、ここのお汁粉はどう?」
「おいしい! お姉ちゃんも食べてみて!」
由香は嬉しそうに餡蜜を口に運ぶ。美和はその様子を眺めながら抹茶を啜った。
「このあんこ、甘すぎなくて美味しいわね」
アリシアが餡蜜を口に運びながら言う。
「ええ。粒あんも程よい硬さで、白玉ももちもちしていて」
美和も答える。
「日本の甘味って本当に繊細だわ。私の国じゃ、甘いものってとにかく甘ければいいって感じなのよね」
「アリシアさん、白玉を一つもらっていいですか?」
由香がはしを差し出す。
「もちろん。その代わり、そっちの栗を一つ頂戴」
「いいよ!」
二人のやりとりを、美和は穏やかな笑みを浮かべて見つめるのだった。




