表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/11

1 頂点に立つ者

挿絵(By みてみん)

「優勝! 藤崎燐ー!」

レフリーが、新たな王者となった、藤崎燐の腕を堂々と掲げる。

エンベレス・ベルト王者決定トーナメントを制した彼女。黒いスポーツブラに黒いショーツの彼女。ショートボブの髪は、べっとりと汗で濡れ、顔から肩へと滴っている。

王者の証であるエンベレス・ベルトが燐の腰に巻かれる。重い。それは、今まで、多くの選手が求めて闘ってきた努力の重さでもある。

リングから降りた燐に早速記者たちが声をかける。

「おめでとうございます。どうですか、新王者になっての感想は」

「……別に」

「今後の活動の予定は?」

「決まってない」

「ファンに一言いただけますか」

「……特にないです」

ぶっきらぼうな返事に、記者たちは顔を見合わせる。何とか彼女の本音を引き出そうと質問を重ねるが、燐の表情は能面のように動かない。

「あの、燐さん……」

「もういいですか」

立ち去ろうとする燐に、さらに別の記者が問いかけた。

「次の防衛戦は、誰と対戦したいですか?」

その言葉に、今まで無表情だった燐の表情が急にひきつった。

「防衛戦? ……その前に決着をつけないといけない相手がいる」

「えっ」

驚く記者をよそに、燐ははっきりと答えた。

「桜井美和」

燐はくるりと背を向けると、控室へと消えていった。閉まるドアの向こうから、微かな溜め息が漏れたような気がした。


桜井美和。前王者をKOした人物だ。だが、美和はベルトも王者の称号も受け取らなかった。ベルトは重いし、防衛戦で忙しくなるのは嫌だ、と言う理由だった。普通だったらありえない。格闘家にとって、その辺のチャンピオンシップなどよりも、遥かに栄誉のあるベルトなのだから。本人が嫌がっても、所属団体が真っ先にそれを許すはずがない。まして、エンベレス・ベルトだ。所属する団体からすれば、タイトルホルダーがいると、それだけでスポンサーがつきやすく、集客力にも差が出てくる。他の女子総合格闘家はみな喉から手が出るほど欲しがるのだ。

だが、美和はフリーランスであり、個人の都合でベルトを持つのを断ったとしても問題はなかった。そうして、空位となったエンベレス・ベルトを懸けて行われたのが、今回の王者決定トーナメントだった。

トーナメントに出ている間は、燐はそうした過去の経緯は関心の外だった。今、目の前にある試合を勝ち抜くことで精いっぱいだった。だが、自分が準決勝・決勝と勝ち進むにつれ、次第に美和と言う存在が大きくなってきた。そして今、自分がエンベレス・ベルトの王者となった時、美和はもはや避けることのできない相手となった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ