38 教皇様が頭を下げてきました
「すまなかった、許して欲しい」
教皇様が頭を下げてきました
・・・そんなにパンと具のないスープが嫌なのか、と思いました
いえね最近は忙しかったのですよ
王妃様に呼ばれるは
国王陛下に呼ばれるは
貴族の方々に呼ばれるは
と分刻みの生活でした
どなたも皆、
「シワやケガを治癒魔法でどうにかしてくれ」
というご依頼でした
なお治癒魔法を使うと一瞬だけ良くなるのですが秒ですぐに元に戻りました
何度やっても同じです
完全に聖女の範疇を超えています
おそらくは女神さまの魔法でしょう
そう言うと誰も彼も膝を落として泣き崩れました
顔のシミやシワが増えたといった女性はまだいいです
でも男性の腕や身体の剣による傷はどうにもなりません
致命傷を治癒魔法で助けたというのがあったとします
それが無かったことになるのでまさにひん死の重体です
半日もあれば黄泉路に旅立つことでしょう
・・・ご愁傷様ですね
「何とかしろ!」
と怒鳴られること多数です
でもどうにもなりません
「それでも聖女か!」
と言われる始末です
その場ではすみませんと謝っておきますが
「多分女神様の思し召しですから死んだ後、女神様の所へは行けないでしょうね」
と嫌がらせを兼ねて泊っている宿の食堂で呟いてやりました
おかげ?で御貴族様達は屋敷で布団に包って震えているそうです
とまあ波乱万丈な生活をしていたら教皇様が遠い聖国から訪ねてきました
なんでも教皇以下、シスターも祭司も皆口にできるのは一日に小さなパン1個と具のないスープだけらしいです
無理に口に入れようとするとゲロまずの味に変わっているんだとか
食感も酷くてどうしても呑み込めないほどだとか
飲み物も常温の水以外飲めないとか
おかげ?で日に日に衰えていくばかり
このままでは命に係わるので許してくれ
そう言うことでした
「いやそんなこと言われても困ります」
と正直に答えました
「あの日の記憶がありません、多分女神様がやられたのだと思います」
そう伝えると教皇様は膝を着いて絶望していました
・・・なんか最近、聖女の目の前で膝を付いて絶望する人が多いと思うのは勘違いでしょうか?
「えっと、ご愁傷様?」
何か言わないといけないかな?と思い励ましの言葉を掛けたのですが教皇様は聞いていないようでした
実際に腐ったパスタを食べたことがありますが、本当に口に入れただけで吐き出しました
ネチャネチャした食感がマジで酷かったです
食べたことはないですがひょっとしたらシュールストレミングの方がまだましだったかもしれません