表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/70

第三章 「ユメ」 9



 ――こんどうむさし



 そう心の中で呟くだけで、胸の奥が熱くなるのを感じる。

 これが絆……?

「分かる……。分かるわ……」

 俺は一人うなずく。由愛も、無言でうなずいた。

「ユメ……か……。綺麗で、とてもいい響きね……」

「ムツミ先生もそう思います? だったら、私のこと、名前で呼んで欲しいです」

「え……。それは……」

 女の子を名前で呼ぶのは、何だか気恥かしい。だけど、由愛の期待した顔を見ると、そのお願いを拒否するのは不可能なようだ。

「それじゃあ……。ゆ、ゆめ……さん?」

 由愛は声が小さいのが不満だったのか、「ん?」と、わざとらしく耳に手を当ててこちらに向けている。

「由愛……さん」

「はい」

 おっかなびっくりでその名を呼ぶと、由愛はニッコリと微笑んだ。そして、手に持っていた写真を渡してきた。

「私の父と母、矢追悠人ゆうとと麻耶です」

 これは、若かりし頃の矢追夫妻か……。寂れた狭い研究室に、白衣姿の二人がそこにいた。自然と互いの手を重ね合わせているその様子は、何だか幸せそうに見える。

「へー。由愛さんはお母さん似なのね」

 写真の中の麻耶と目の前の由愛を見比べると、二人が間違いなく血の繋がった親子だと誰もが信じるだろう。

「あれ?」

 唐突な違和感。既視感とでも言った方がいいのだろうか? 麻耶の姿を見るのは初めてなはずなのに、どこかで見たような気がした。よく似た顔がすぐ近くにあるので、明確に初見とは言い辛いが、どうにも妙な感じだ。

 白衣の上からでも分かる膨らみ。ふわふわの髪……。やはり、由愛以外の誰かを連想させる。

「どうかしましたか?」

「ううん。何でもないわ……。何でもね……」

 俺は由愛の言葉で我に返った。が、俺の中にある疑念は頭の片隅でムクムクと大きくなっていた。



                    *




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ