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神様の暇つぶし  作者: けんしょ~
その時、歴史が動いた?
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男勇者と女Bと男Aと氷の館part8

Side:男勇者

ジルくんを抱えて階段を2段飛ばしで上る。途中折り返してようやく終わりが見えたけど、それは壁だった。

当り前だ。キッチンの地下への階段だって閉まってたら同じような状態の筈だ。

だから躊躇いなくジュワユーズで突き壊して外に出る。

「…此処は、時計塔に繋がってたんだね」

『逃がさないっ、絶対に逃がさないっ!!』

まだ追ってくる!とにかくリリーちゃん達と合流しよう。

「勇人さん、降ろして。館の中で迎え撃つんでしょ?」

「ああ。アイツを倒して、ロザリーちゃんは絶対助けるぞ」

「分かってる………ロザリーは笑ってた…」

俺だって聞いたさ。『ゴメンね♪』って…

「だから、これからも笑えるようにする」

ジルくんから感じたプレッシャーは、気のせいじゃない。

屋敷の扉を潜りながら、そう思った。


俺達が屋敷に入り鍵を閉めるとエントランスには、泣き崩れてるイトハと、戸惑ってるモリッシュ、周りを警戒してるメイドさんの3人がいた。

「姫様…リリーが、リリーが凍り付けになっちゃったよぉ…」

フレイヤさんに気付いて、イトハが泣き付いてきた。

…リリーちゃんも、だって…

「…最初の暴発に巻き込まれたんだろうね…勇人、死神は?」

「俺達を追ってたから、多分もう扉の前だ」

「なら魔王を救うなら今だね。メイドさん、魔王が居る場所にイトハを連れて行ってくれ。氷を融かす」

「え?」

扉を開けようとする音がした。

イトハちゃんが希望を見つけた様に顔を上げる。

「その間は俺達が死神を抑える、か?」

開かなくてタックルを始めた。

ジルくんがフレイヤさんに聞いてる。ロザリーちゃんを先に、と言いたいのか?

「ああ、そうすれば勝率が一気に上がるからね。勇人、モリッシュ、いいね!」

扉が軋み、もう保たない事を示す。

戸惑ってたモリッシュさんの目に力が宿り俺と一緒に頷く。

「なら、そのまま地下への入り口を探してロザリーを探して。ロザリーも地下で…凍った」

…そうか、あの奥の扉は…位置的にはキッチンの反対側に通じてた。

「…畏まりました。必ず御2人を連れて戻ります」

「…ジル、必ず待ってなさい…絶対、2人とも助けるから…だから、」

扉の隙間から死神が見える。向こうもコッチが見えたみたいだ。

「速く行って。そんで、速く帰ってきて」

「分かってるわっ!ちゃんと生きてなさいよっ!」

「御武運を」

そう言ってイトハちゃんとメイドさんが走りだすのと、死神が扉を突き破って館に入って来たのは同時だった。

『お前達もママを苛めに来たのかっ!』

死神がメイドさん達を追おうとしたが、

「行かせねえ!」

正面に割り込み、ジュワユーズを振り降ろす。後ろに飛んでかわされたが、2人は向こうに行けたんだから良しとする。

『何で、何で皆、僕とママを苛めるんだっ!』

「知るか」

ジルくんが死神に言い放った。

「俺はお前にも、お前の母親にも興味が無い」

ダガーを持ち、左半身を前にするだけの、我流の構えを取っている。

「だけどお前はロザリーに手を出したんだ」

少し腰を落とし、前だけに集中したような姿勢になる。

「だから、」

無詠唱で爆進を使い、

「お前は俺の、敵だっ!!」

死神に突っ込んで行った。


Side:女B

後ろで勇人が剣を振り降ろしたんだろう轟音と、ジルの爆進だろう爆発音が聞こえた。

死神が憎い。でも今は、リリーの方が先だ。

アイツは、後でどうとでもなる。

ヒュンッ!

「邪魔ですっ!」

実験室の扉から出てきたソードダンサーをメイドさんが手の一振りで壁に叩き付け、衝撃で砕いた。

私の魔力はリリーとロザリーちゃんに取っておくよう言われた。

「リリーッ!」

実験室に入るとリリーがいた。氷の中で、安心した様な顔した、馬鹿な子が、いた…

「…始めるわ。ソードダンサーが来たら、お願い」

「畏まりました」

ガ・ジャルグを使い、リリーを閉じ込めてる氷を融かす為の炎を集める。

部分的に長い時間をかけて溶かすと、酸欠で死んでしまう。だから全体を一気に融かす。そうすれば、あとはロザリーちゃんを同じように助けて、皆に合流して、あの死神を…

「メイドさん、あとどれくらい?」

「もう少し…その量です。その炎を上から素早く振り降ろして下さい」

自分でも熱くて倒れそうなほどの熱量…だけど、倒れる訳にはいかない。

「リリー、起きなさいっ!」

ガ・ジャルグの先端に炎を固定して、振り抜く。

氷がゆっくり融けるような生易しい温度じゃない。ガ・ジャルクで熱量も操作しなくちゃ、私もメイドさんも融けてるような温度で、リリーは傷つけず、氷だけを溶かすイメージを込めての炎。魔力が一気に空になるような感覚に、気が遠くなって倒れそうになる。

「御見事です」

氷が融けて倒れたリリーを受け止めながらメイドさんが褒めてくれた。

「…リリーは?」

「ご無事です。心臓もしっかりと動いております」

「そう…良かった…良かっ、た…」

…泣いてんか、ないわ…まだ、ロザリーちゃんが残ってるんだから!

「リリー、起きなさい。リリー」

「凍り付けに成った際に気を失われたのです。本当ならば、安静にして自然に目が覚めるのを待つ所ですが…」

今はそんなコト、言ってられない…

「…リリー、起きて…アンタの親友が、アンタと同じように凍ってんのよ…だから、今から助けに行かなくちゃいけないの!ジルは、自分が何も出来ないって分かってて、何かしたいのに、何も出来ない現実と戦ってる!今も、私がロザリーちゃんを助ける時間を稼ぐために、ロザリーちゃんの側にいたい気持ちを殺してるの!」

聞こえるはずない。こんなんで起きるはずない…

「ねぇ、起きて…酷いコト言ってるのは分かってる…でも、必要なコトなの…今、アンタが起きなきゃ、ロザリーちゃんが危ないの…今起きたら、アンタの言うコト何でも聞いてあげても良い!キスでも、結婚でも、何でも良い!だから…だから、私に、アンタを好きなままで、いさせてよぉ……」

最後は自分でも分かるくらい、声が震えてた…

「…とぅ、ぁな…」

「イトハ様、お静かに!」

リリー…

「本、当…じゃな…」

起きるの、遅いわよぉ…

思わず、抱きしめてしまった……


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