男勇者と女Bと男Aと氷の館part7
Side:男A
キッチンに有った地下への階段の前で準備に抜かりが無いか確認。忘れ物無し。
「行けるね?」
「ああ。光、頼んでいい?」
「ああ、そうだったね。闇を照らせ ライト」
「…結構深いな」
「うぅ~…」
ロザリーはホラーがダメらしい。しかし今回の班分けではどうしようもない。ロザリーも微妙に運悪いな~。
「少女、怖かったらボウヤの側を離れなければいいのさ。そうだろう?」
そう言って俺にニヤ~って感じの笑みを向けてきた…はいはい…
「大丈夫、怖くないよ」
ロザリーに手を伸ばす。手を繋げば多少は安心出来るだろう。姫様はガッカリしてる…これ以上を俺に期待するな。
「…うん♪」
これでロザリーが安心するなら安いモノか。
「じゃ、おふざけも此処までにして、行こうか」
ふざけてたのはアンタだけだ…
1人しか通れない幅の階段を1歩1歩降りる。もしかしたら腐った段が有るかもしれないから慎重に。
先頭から光を持った姫様、俺、ロザリー、勇人。
これなら前後のどちらから攻撃されても対処出来る。キッチンに行った時と配置の意味は変わらない。
途中折り返しがあって、大体2階分ぐらい降りたら金属製の扉の前に出た。
姫様が振り返って全員に合図してから静かに開けた。
不快な音がしないのは助かる。
中は真っ暗だが姫様のライトを館の地上部と同じように全体に設定したようで、すぐに光に満たされた。
「…ワインの貯蔵庫?」
目の前には沢山の菱形の棚。
地下はワインを保管しておく施設だった。瓶で保存するように作ったみたいだ。
「みたいだね。それも、かなり広い」
棚の向こうには同じような棚がいくつか見える。
「こんなに大きいと逆に大変だろうに」
「でも1本もないね?」
そう、見える限りワインが1本も置いてない。
「とりあえず…ここの調査か?」
「そうだね」
そう言って棚の横を目指して歩き出すと、
「全員、武器構えっ!」
言われる前ロザリーの手を離しダガーを抜き始め、言い終わる頃には構え終わり姫様の前に出る。
棚の横影から勇人達が遭遇したとゆう大鎌、ソードダンサーが出てくるのは同時。
目があるかは知らないが、一瞬の睨み合い…来るっ!
シャオォンッ!
上から振るわれる鎌の外側にダガーを当て、軌道を変えて棚の方に振り抜かせる。棚の足が切れてコッチに倒れそうになるが、勇人が大きくした剣の腹で叩き向こう側に倒す。
「雷甲!」
蹴って壁に叩き付ける。
「フレア!」
分かってたかのようにロザリーの魔法がピンポイントで灰も残さず焼き払う。
完全に振り抜いた反動で動きが鈍かった。その辺は浮いてるのに変わらないのかと感心してたら、
「私達の出番は無さそうだね…」
「俺は一応棚を押し戻したぞ…」
確かに、この2人戦う前に倒したからなぁ。
「勇人さんがいたから俺はソードダンサーに集中出来たよ」
「姫様が周り警戒しててくれたからジルに合わせられたんだよ?」
子供2人の白々しいフォロー。ロザリーは必死にフォローしようとしてるけど。
「いや、突発的な戦闘ではやっぱり2人の方が私達より上手いね。これはウカウカしてられない」
「ジルくん、後で今の魔法教えてくれ。爆進は無理だったけど今度こそは!」
実は、旅の途中にイトハと勇人に聞かれて爆進を教えたらイトハは『気持ち悪い…』と言って断念した。勇人はそもそも魔法が発動しないので光魔法にアレンジして教えてみよう。
しかしイトハのおかげで爆進はかなり上体が揺れるので慣れないとダメだと分かった。俺は小柄だから揺れが少ないのかもしれない。
「まさか此処にアレが居るなんてね…気を引き締めないとね」
「…もしかしてあの部屋の札って本当に姿を消す魔法を使おうとしたのか?」
あぁ、何かそんな事報告会で話してたな。
「恐らく、そうなんだろうね。でも効かなかったんだろうね。餓死した残骸が無かった」
エグイ話だな~。
ん?アレは…
「ねえ、アレって扉じゃない?」
棚を倒した方には同じ棚が並んでて、ドミノ倒しみたいになったのだが…
「…勇人、棚戻せ」
棚に扉が埋もれてる…しかも棚は結構な数が重なってる。
「無理だろ!一体何個重なってると思ってるんだよっ!」
「切っちゃえばいいんじゃないかな?」
「「「…それだ!」」」
ロザリーの提案に乗って勇人が長くした剣で棚を斬り、扉までの道を作った。
「初めて役に立ったのが棚切る事な俺って…」
ショックな気持ちは分かるがウザいから凹むな。
「扉の先にもソードダンサーが居るかもしれない。勇人が先頭、私、少女、ボウヤの順に中に入るよ。ボウヤは状況見て前に出る事」
「分かった」
姫様が扉を手前に開き、勇人が中に入る。
またしても音が無かった。
『ママのコトを悪く言うな―――っ!!』
何だ?今の子供のような獣のような声。
「死神っ!」
なっ!
勇人の声に反応して、2人を抜き先頭の勇人に並ぶ。部屋は意外と大きく、10人くらいで暴れまわっても平気そうだ。奥と左に扉が有る。
「あれが死神で合ってる?」
目の前には俺達に右半身を向けた、さっきの大鎌を持った黒いボロコートの人型が天井を睨んでいる所だった。
「ああ、昨日見たのは確かに奴だね。目に十字の模様も有る」
確かに、右目に輝く十字模様が有る…確定だな…
「魔法が暴発してる?」
ロザリーの言葉で周りを観察してみると、天井や部屋の壁に置いてある本棚、薬品棚が少しずつ凍っていっていく。
暴発と言ったのは正解のようだ。単発の魔法が何回も発動しているのだろう。だから数ヶ所が凍る。
「止めるぞっ!」
勇人が剣を振り被って切り込む。死神は俺達に気付いて、鎌で剣を受け止めた。
「何だ、あの体…」
「ボウヤ、勇人と一緒にアイツの動きを!」
「分かった」
気になる事はあるけど、今はコイツを止める。その後の判断はリリーに任せよう。
死神に爆進で距離を詰める。武器が1つなら避けるか?
『何なんだよっ!お前らは―――っ!』
避けずに大鎌を力任せに振り回し勇人を押しのけた。その隙に懐に入りダガーで横腹を斬ろうとしたら鎌の柄の部分で弾かれた。
『僕を苛めに来たのか!?ママを苛めに来たのか!?だったら、殺してやるっ!!』
闇雲に振り回してるだけだが、思った以上に全体をカバーする振り回し方のようだ。
まぁ、1ヶ所に止まっててくれるなら丁度良い。
「光成す矛よ 邪を滅せ ホーリーランス」
無数の光の槍が死神の周辺に降り注ぐ。
『やめろよっ!ママが、ママが死んじゃうだろーっ!!』
さっきより強い魔法の暴発。部屋全体にいくつもデカい氷が生み出される。
「危ないっ!」
「なっ、少女!!」
え?
2人の方を見たら、姫様を突き飛ばしたロザリーが凍り付けになっていく所だった。
少しずつ、でも確かな速さで、足からロザリーが氷に呑まれていく
「フレアで融かせっ!」
今ならまだ、
「えへへ、失敗しちゃった…」
「ロザリー!」
何笑ってんだよ!速く魔法を、
「ボウヤ、これ以上はお前もマズい!」
「ジルくん、今部屋を出なきゃロザリーちゃんを助ける事も出来ないんだぞっ!」
分かってる、分かってるけど…
勇人が俺を抱きかかえ、左の扉を蹴破り階段を上る。
「…ゴメンね♪」
ロザリーは、笑ってた……
作者はコメディもシリアスも両方好きです
まぁ、節操の無い雑食屋なんです




