男勇者の気遣いと男Aの溜息
Side:男勇者
皆が慌てて風呂から出てきて、
「…で、何でこうなった?」
「多分姫様辺りがロザリーを弄り過ぎたんじゃないですか?」
「うっ…」
図星なのかよっ!
「全く。ほらロザリー、落とさないでね」
「うぅ~、ありがと」
オデコに濡れたタオルを当てている。
「…ボウヤ、何か慣れているね。少女がのぼせたって聞いた時も私達にベットに運ばせて自分はタオル濡らしてたし」
「ロザリーはよく実験中に失敗して爆発起こすから、緊急事態には慣れてるんです」
「そうかい…あと私にはタメ語で良いよ」
「あ、俺も」
「私もその方が良いです」
「分かった。とりあえず晩飯だな。ロザリー用に軽いの作ってるから皆は食べててよ。あとの仕上げはメイドさん1人でも大丈夫だしロザリーの調子が戻ったらソッチ戻るから」
ジルくんって…普通に話すとなんか無感情に感じるな。
「え、でもジル、」
「いいから病人は大人しくしてて。さぁさぁ、皆」
仕草で出ようと示したが皆責任感じて中々出ていかない。
確かにこれ以上いてもロザリーちゃんに気を使わせちゃうだけか…
「明日から長旅になるし、ちゃんと休めよ。じゃジルくん、あと頼んだ。ほらフレイヤさん、行こうぜ」
渋々と言った感じで俺に手を引かれて寝室を出た。いつもなら『セクハラ~♪』とか言ってくるのだが今回は騒がずに引かれたままに成っている。
リビングに戻って食器運びをしながらフレイヤさんに声をかける。
「ほら、ロザリーちゃんだってのぼせただけだ。そんなに深刻にならないで、戻って来たら謝れば良いだけだぜ?」
何でこんなに気にしてんだ?
「そうだね。初めての事で少々取り乱しちゃったよ。済まないね」
「姫だからあんまり遊べなかった?」
「正解。その前は巫女だったしね。加減が分からなかった…でも、楽しいモノだな。皆で風呂に入るとゆうのは。勇人が覗きに来なかったのはつまらなかったが」
「元から覗く気なんてねえ!」
やっと調子戻ったか?調子狂うからあんな殊勝な態度しないで欲しいな。
「全く、リリーもよ。ロザリーちゃんと私が逆だったかもしれないし、アンタ達2人の方がのぼせるかもしれなかったんだから」
「済まぬのじゃ。次からは気を付ける」
「なら良し」
「気を付けてくださいね?」
アッチも調子戻ったみたいだな。
「これで最後ですね。モリッシュ様用にも作る辺り、ジル様は執事の才能が御有りですね」
「そうかな?」
「「「「「うわぁっ!」」」」」
い、いつから…
「はい、中々筋が良いですよ。これがロザリー様用です」
「ありがと。大分良くなったしもう少しで戻れそう」
「それは良かったです」
メイドさん、貴女以外全員驚いてるのに何で貴女は無反応なんですか?
「あと…流石にそんなに驚かれると、傷つく」
リビングの扉が静かに閉まる…
「「「「「ゴメン――――っ!」」」」」
Side:男A
あんなに効果有るとは思わなかった。
「ロザリー、食べ物持ってきたよ」
「ありがと~♪何か皆が『ゴメン――っ』って謝ってたみたいだけど?」
「ちょっとからかってきただけ。思った以上に効果があって俺が驚いてるよ」
「そうなの?あんまり脅かしちゃダメだよ?」
「そうする。食べれる?」
「うん…ぁうぅ…」
まだフラついてるな。
「ほれ、枕重ねて半起きの姿勢に成って…ん、あ~ん」
「え?ええぇ?」
「いいから食べる。熱くも固くもないから食べ易いよ」
「うぅ~…」
別に恥ずかしがる事じゃないだろうに。まぁ、こうゆうのは異常に恥ずかしい時期なのかな?
あ、ぱくっといった。
「美味し~♪」
「まぁロザリーの趣味も分かってきたからね。味付け合わせてみたんだ」
「あ、ありがと///」
顔が赤い…もしかしてかなり大胆な事言っちゃったか?いやアレで赤くなるか普通?
「どう?少しは楽に成った?」
「…うん…」
ん?気を使わせたとか思ってんのかな?
「そんなに気にしなくていいんだけど。俺が好きでやってる事なんだから」
「…えへへ♪もう大丈夫!」
「そう?じゃあ行こうか」
右手のお盆に食器を、左手にロザリーの手を乗せる。
「えへへ♪ありが、あっ」
「げっ」
ドサッ…
……安いラブコメじゃないんだからこの状況はないわ~。
ロザリーが俺に覆いかぶさってて、顔はくっ付きそうなほど近い。ロザリーの胸からはかなり速い鼓動が伝わってくる。
ロザリーが食べ切ってて良かった。食べ物の掃除は面倒過ぎる。
「はわっ!ゴッ、ゴメンね!」
「ロザリー軽いし平気だよ…何をそんなに焦ってるの?」
寝る時はもっとくっ付いて…あぁ、乙女心とゆうやつか。そりゃ俺には分からんな。
「えっ?そのっ、あのっ」
「あんまり急に動くとまた倒れちゃうよ。ゆっくりゆっくり」
「う、うん…」
ちょっとずつ体を起こしていく。
確かのぼせの防止ってゆっくり立ち上がるとかして急に血を動かさない事だったな~、なんてトリビアを思い出していたら何か視線を感じた。あ~、倒れた音で気になって来ちゃったか。
「ふぅ、ゴメンね…」
別にそんな気にしなくてもいいんだけど。まぁ気になっちゃうんだろうな。
「大丈夫だよ。立てる?」
「うん、その…」
食器集めて机に置いてからロザリーに手を伸ばす。もうちょっとゆっくり行こう。向こうでは皆がニヤニヤしてる気がしてならないけど…
「ゴメンは無しで」
「あう……じゃあ、ありがと///」
…もしかして風呂で弄られたのって俺絡みか?俺に対して緊張してるように見える…姫様やり過ぎじゃね?ふぅ、それなりのお返しをさせてもらうよ?
「じゃあ行こうか?なるべくゆっくり、ね」
「うん♪」
「と、見せかけて!」
ロザリーの手を取るフリして御姫様抱っこ。ちゃんと閉まってないドアを足で開ける。俺はちゃんと閉めたぞ。
ガンッ×4
勇人とメイドさんには不発だったか…どうせなら全員に当てたかったな。下からリリー、イトハ、姫様、モリッシュ。背の順だな。
てか女性陣分かり易いな。皆してこうゆうの好きなんだから。
「なっなななっ!何で皆がっ!」
あ、また興奮してる。これじゃ離してあげてもまた倒れそう…
「先に行ってるよ~」
「ジルも降ろして~!」
「また倒れるからダメ」
「ジル様は女性の扱いが分かっていらっしゃいますね。益々執事に成って頂きたい」
「ロザリーの執事になら成っても良いかな」
「えっ?えっ!?」
「ジルくん、大胆だな」
正直恥ずかしい…ポーカーフェイスは得意だからバレないだろうけど。
この後、リビングでそれなりに皆にからかわれたけど、まぁ悪い気分じゃないし何も言わない。イトハと勇人をからかえたしお互い様だ。
ちなみに、散々恥ずかしがってたくせにロザリーは迷わず俺を抱き枕にしようとした。姫様達に『やっぱりあの2人って…』とか言われたけど無理に変える気も、ロザリーを止める気も無くてそのまま寝た。
だって今更感有るし。お陰で勇人はリビングのソファでモリッシュと寝てる。女性陣を大きい部屋で纏めようかと思ったけどロザリーが放さないもんでこうなった。勇人はむしろ1人にしてくれと言ってたから丁度良かったのかもしれない。モリッシュいるけど気にするな。
明日から数日掛けての調査。魔族と人間の協力する数少ない事例の1つ…とりあえず、ナイフの出来栄え試そう……
「おやすみ、ロザリー」
「ふにゅ~」
もう寝てるんだけどさ……
今更ですが、氷の館編は長いです…
気長にお付き合いください