女Bは決闘に出る
Side:女B
「御苦労じゃったな♪」
「はいっ!リリー様の為に、悪漢を蹴散らしてまいりました♪」
自分の親を悪漢扱い…どんだけ嫌いなのよ…
「では、某の番ですな」
「テッタちゃん、頑張ってね♪」
「承知した」
『無駄に長い待ちは俺の趣味じゃないから第二試合さくっと始めるぜーっ!今度は魔界一の女剣士、切り込み隊長と魔界一の力持ち、遊撃隊長の決戦だーっ!技の切り込み隊長か、はたまた力の遊撃隊長か、魔界最高の技と力の根競べ!レディーッ、ゴーッ!』
テンポ速っ!もう始めちゃったわ…
て言っても試合はさっきみたいに速攻じゃない。両方とも相手の隙を探る様に睨み合ってる…テッタは刀を居合いみたいに構えてるし、相手の…ライオン人間はボクシングみたいに構えてる。
そう、テッタの相手はライオン人間だった!
体は普通の人間。ただしかなり筋肉質だし背も高い。2メートルくらいあるわね。そしてなんといってもその顔…何故ライオン?それも可愛らしい遊園地なんかで売ってるような、ヌイグルミチックなライオン顔…笑うトコかしら…ぷぷっ♪
マッチョなヌイグルミライオンがボクシングの構えって…シュールだわ…
「どうした切り込み隊長、何も仕掛けて来ねえのか?隊の名が泣くぜ?」
そして声渋っ!なにこの変なギャップ!不覚にもカッコイイとか思っちゃったわ…
「そう急かすな、焦らずとも…」
キンッ!
「ちっ!」
「すぐに見せてやる」
…へ?テッタとライオンの立ち位置が変わってる?何したのよ…
『こいつぁー速いっ!流石魔界一の女剣士、司会泣かせの訳分かんねえ実況不可能な切り込みだぁーっ!』
た、確かに実況出来ない司会って可哀そうね…
「ようやくか…くっくっく、やっぱこうでなくっちゃなぁーっ!」
「来い。魔王様への謀反、到底看過出来るものではない。この場ですり身にしてくれる」
そっからは刀と拳のぶつかり合いだった。
刀を拳で弾き、拳を刀で弾く。時に火花が散る程の高速の異種格闘技…これなんてバトルアニメ?
『こいつぁスゲー!互いにただ相手を倒す為だけに、その技を、その力を、ただぶつけ合い、しのぎを削る!熱い決闘の見本のような勝負だーっ!』
「くははははははははは!やっぱりだ、やっぱりだぜ見り込み隊!お前が、お前だけが俺を此処まで熱くさせる!お前に比べたらそこいらの腑抜けた奴なんか全てゴミだ!そんな奴らを何人相手にするよりもお前との方が断然良い!だから、もっと、もっとだ!もっと俺を熱くさせろっ!」
あのライオン人間、可愛い顔してバトルマニアだったのね…
「私に命令するな」
「あ?」
「私に命令していいのは魔王様だけだ」
「くはは、こいつぁ失、敬!?」
『おぉーっと!遊撃隊長の鋼の肉体に初めて傷が入ったーっ!流石の<グラップラー>も切り込み隊長の刀の前には耐えきれなかったかーっ!?』
「…アイツも<グラップラー>だったわよね?」
「ジルの事か?ロザリーはそう言っておったの。興味無かったから見んかったが」
「遊撃隊長も素手で戦うのは<グラップラー>だからかしら?」
「たぶん武器有りだと強過ぎて勝負にならんとかじゃろ」
「…バトルマニアなら有り得るわね…」
「くはははははははは!傷を負ったのは久々だ!戦いってのはこうでなくっちゃなーっ!」
「いや、もう終わりだ」
「何を…」
「さらばだ」
キンッ!
「か、はっ…」
ドサッ…
『……おぉっと、俺としたことがあまりの速さに止まっちまったぜ!何が何だか分からねえが遊撃隊長が肩からバッサリと切り傷負ってダウン!これ以上は試合続行不可能により、勝者、切り込み隊長―っ!』
『何だったんだーっ!』『ちゃんと実況しやがれーっ!』『テッタ様ーっ!こっち向いてーっ!』
何か最後変なの混じってた気が…
「魔王様、ただ今戻りました」
「うむ、よくやったのじゃ。技のキレは流石じゃの」
「お褒めの言葉、有り難く頂戴します。ではイトハ殿、頑張って下さい」
ニコッとコッチにエールを送ってきた。この笑顔は確かにカッコイイわね。テッタが男なら惚れてたかも…
「うぬぅ、皆イトハに積極的に攻めているの」
「アンタが1番積極的でしょうが…じゃ行ってくるわ」
「うむ、気楽にの」
『皆さまお待ちかね、本日の花形試合の始まりだーっ!片やリリー様の嫁と目される美少女、片や公式に大臣の妾と成っている美少年、どちらも魔界じゃ余所者だが、その美貌に偽り無し!舞え、輝け、咲き誇れ!今、魔界一美しい舞踏会の開演だーっ!』
始まったわね。相手は短剣の2刀流…両手使う敵に縁でもあるのかしら…
「お姉さんが魔王様の嫁なんだ…ふふっ、流石に綺麗だね」
どうしよう、普通に嬉しい。てかこの子守ってあげたくなるタイプなんだけどっ!同じ年下でもあの糞生意気な薄紫髪のガキとは正反対!…これは苦戦するわね…
「でもね…僕は女の人が怖いんだよ」
なにか辛いことでもあったのかしら…そうよね、あんな子、周りの人が放っておかないわよね…
「だから…僕の前から消えてよっ!」
速い!けど追えない程じゃないわっ!
カンッ、ギギギギ…
つばぜり合い、体格的には私の方が有利!
「風よ!」
なっ!
とっさに弾いて距離を取る。
剣が風を纏ってる。わたしのガ・ジャルグと同じ魔法の武器かしら…
「へぇ、普通なら気付かれないんだけど…お姉さんこの剣の事知ってるの?」
「まぁね…それに1言で魔法使ってくるヤツと戦ったこともあるし…」
「1言で魔法?ルーン刻んでれば普通、かな?ふふっ、魔王様と結婚するには強さも求められるんだね」
「私リリーと結婚する気無いわよ?」
…あれ?会場中の空気が凍ってる?
「え?だって、さっきから皆…」
「リリーが私に嫁に成れって言ったのは確かだけど私OKしてないわよ?てか恋愛は男としたいんだけど?」
「…うぅ…」
あれ?何か…泣いてる?
「女の人は…女の人はやっぱり嘘つきだーっ!」
…どうしよう、ホントに泣いちゃった…