女勇者は修行を始めた
ようやく2日目です
そして新章?開始です!
最初はやっぱり女勇者です
Side:女勇者
ペロペロ
ん…何だ?頬がくすぐったい…ああ、クロか。
「ん~…おはよう、クロ」
「にゃ~」
気だるげだな。まぁ猫なら仕方ないか。…もう1眠りしたいな。クロ込みで…
「みゃ~…(苦しいのは勘弁…)」
警戒されてる?昨日抱いて寝たのがまずかったか。
「すまない。苦しかったか?」
「にゃ」
正直だな。今後は気をつけるとしよう。さて、顔でも洗うか…
コンコン
「勇那様、エルーダです」
身嗜み整えてから5分後。…エルーダって誰だ?
「朝食の準備が整っております。御一緒に如何ですか?」
ああ、変態巫女か。完全に名前忘れていたな。
「今行く。クロも平気なのか?」
「はい♪ちゃんと御用意させて頂きました」
「そうか。クロ、行こう」
「にゃん!(ゴハン!)」
「では勇那様、今から勇那様の剣を見に行きませんか?」
朝食後、変態巫女・エルがそう切り出して来た。なんでも午前中に魔法の練習、午後に剣の訓練をする予定らしい。
朝食の途中、クロ見たさにメイド達が食堂に大挙して大変だった…クロは今、私の肩でグッタリしている…可愛い…
「わかった。どうすればいいかわからないしな、エルに任せる」
「はい♪では参りましょう」
楽しそうに案内されたのは地下の宝物庫のさらに奥、厳重に閉じられた部屋だった。…ジメジメしていて、とても楽しそうに歩ける場所では無いはずなんだが…
「曰く付の武器なのか?」
「いえ、勇者以外の人が触れないようにとの配慮です。この部屋の剣はとても強力な神器ですから、普通の人が持つと暴発する危険があるんです」
そんな危険な武器私だって持ちたくないぞ…
「勇那様なら平気です。莫大な魔力をお持ちですから、暴発しそうになっても抑え込めますよ。では、こちらが勇那様の武器、聖剣カリバーンです」
そういって紹介された剣は白く美しい両刃の刀身、実用性重視の飾り気の無い鍔、翼のような装飾の施された柄頭。
それは、酷く綺麗なロングソードだった。おおよそ武器とは呼べない、1つの芸術品のような輝きを放つそれを見ていると『日本刀が芸術品扱いされるのも無理無い』と思ってしまう。しかしこの剣は決して飾りでは無い。今までに人の肉を切り、骨を断ち、数多の命を吸ってきた物なのだと思うと不思議と納得してしまう。そんな刀のような残酷さと美しさを同時に感じさせた。
しかし、女の私にはちょっと大きいな。男の騎士等が持てばさぞ絵に成る剣なのだろう…少々勿体ない扱いだな。
「綺麗な花には毒がある、か。…少し違うな…」
「勇那様、どうかしましたか?」
「いや、何でも無い。鞘とかは…隣のあれでいいのか?」
「はい、お持ちしましょうか?」
「いい、自分でやる。わからないことがあったら聞く」
私は本物の剣を見るのも初めてだ。そして、これは私がこの世界で生きていくのに必要な力に成る物…無下に扱いたくは無い。人に任せきりにはしたくない。自分の意志と行動で、この剣は私の物だと示したい。
「では、今日は特別に剣の稽古のみに致しましょう」
変態巫女に逆らう理由は無い。この世界で生きるための力、手に入れさせてもらうぞ。
「にゃ~…」
クロが労わるような鳴き声を発した気がした。
「お、来たか」
剣の稽古で着たいからと運動用のタンクトップみたいな服とダンス用のスパッツみたいなパンツを借りた。何でも騎士が鎧等を着る時に一番下に着る肌着のような物だと言われ不思議がられた。確かにこの格好は少々恥ずかしいが制服や着たこともない鎧を着るよりは動き易いだろうから我慢する。
「んじゃ、始めるか。勇者様、どっからでも♪」
私の稽古は騎士団長直々につけてくれることになった。本人曰く、「書類仕事よりよっぽど充実した時間が過ごせる」とのことだ。団長とゆう割にお堅い人物ではないようだな…顔はまぁ、微妙に悪人面だが…。変態巫女の話では数少ない良識派の騎士らしい。が、この人を食った様な笑み…悪人面が益々際立つな…
この国には10の騎士団が有る。各団に専門が決まっていてそれぞれに名前があるようだが、どうでもいいので聞かなかった。
そう、今はそんなことはどうでもイイ…
キンッ!
「ほ~、速い。それに重い。良い打ち込みと言えなくも無い…この分なら副団長くらいになら直ぐなれる…ウチに欲しいな…」
何でそんなに馬鹿デカイ剣を軽々振り回していられる?両手でも振るうのがやっと、片手で何て論外。そんな常識を無視した剣劇で私の速さ重視の打ち込みを、弾き、流し、カウンターを打ってくる。
私はこれでも護身用に剣道を小学校2年から今まで、計10年程やっている。大会にこそ出なかったが学校の男子剣道部員等、敵ではない実力を持っている。それも全国大会に出るような相手に対して、だ。
師匠にはまだまだ及ばないが、それでも、どんな剣ならどんな風に振るえるかは多少分かる。だからこそ自分の身の丈程もある剣をあんな風に扱えるモノなのか疑問で仕方が無い。
何と言うか…確かバスターソードとか呼ばれる剣があんなサイズだったか?
「ほら、考え事してると足、止まっちまってるぞ♪」
楽しそうに剣を縦に、横に、時にフェイントを交えて拳でまで攻撃してくる。接近戦なら王国最強と巫女は言っていたな…クッ!重い!
「はー、はー、んぐ」
「息は整ったか?じゃあ、続きと行こうかぁ!」
来る!
左、上、流れに乗って一回転した右からの薙ぎ払い。強制的に間合いを開けられた。
くっ!腕が痺れてきた。剣を握っているのも難しい。それを見越して怪我をしないように配慮されている…圧倒的だな。
「よく耐えるじゃねえか。さて、ここらでお開きだ。もういい時間だしな」
言われて気が付いた。太陽がそろそろ昼を指す。
「お疲れさまでした、勇那様。浴場で汗を落としましたらお昼に致しませんか?」
「はー、はー…ああ…そうさせ、てもらう」
「みゃー」
クロの出迎えに嬉しくなる。変態巫女?私の胸が揺れる度に目を血走らせていたヤツの出迎えなんて嬉しくも何とも無い。
とりあえず今後の課題は体力だな。…走り込みでもするか。