女勇者は修行中だ
Side:女勇者
昼を済ませてからもう1度騎士団長に稽古を頼んだ。
「第1騎士団団長をこんなに長い時間拘束するたぁ。勇者ってのはイイ御身分だ♪」
相変わらず人を食った様な斜に構えた態度だ。ちなみにコイツのやるべき仕事は全て副団長が押し付けられたようで、『絶対に、いつか、大量の仕事、押し付けます!』と宣言していた。若い女性だったが苦労性で早死にしそうだな。
「勇那様、無理はなさらないでください…」
変態巫女が普通に労わってくれる…何だか気味が悪いな。クロは抱き抱えられてウンザリしているようだ。可愛い一匹狼め♪
「大丈夫だ。団長、始めよう」
「あいよ。そろそろマジにやって欲しいもんだ」
気付かれてたか。
私の通っていた道場では1部の者は剣道ではなく剣術を習っていた。つまり型や有効打ではなく勝つことのみに特化した剣だ。
まぁ、私が高校に上がった頃には門下生は私だけになってしったが。師匠はどこで金を稼いでいるのか全く分からない人だったが、金に困っている様子は一切なかった。本当に謎の人物としか言いようのない人だったな。
さて、そろそろ集中して始めよう…
「では、」
「おう。始めようぜ。何を教えられるって訳でもねえけどな」
一気に距離を詰める。
さっきの稽古では剣道の型道理に動き、剣道の有効打のみに狙いを絞っていた。しかし、今回は違う。足を切り払い、肩を突き、剣に交えて目を潰しに掛かる。騎士団長なら私の攻撃を捌けない等ありえない。それは午前中の稽古で確認している。
現に今も足への切り払いを弾かれ、肩への突きは流され、目潰しは仰け反って交わされた。そのままの勢いで大剣を後方の地面に刺し、後ろに宙返りして間合いを開けられた。
下手に追撃したら顎を蹴り上げられていたな。本当に全てを完璧に捌かれる。師匠と比べればまだ戦えるが、勝てるとは到底思えないな…全くちょうど良い実験台がいてくれたモノだ…
「はっ♪こりゃいい!勇者様、こっちの戦い方のがよっぽど良いぜ!」
ふむ、団長はバトルマニアなのか?とても楽しそうだが。
「勇那様!気を付けてくださいっ!」
変態巫女が鋭い声?…っ!
シュンッ…ズバアァァ…
とっさに横に避けたらさっきまで私がいた場所を橙色の閃光が走り、地面が軽く抉れた。ナウシカの巨神兵みたいだな…
「騎士団長!」
変態巫女が抗議の声を上げている。巫女としては真っ当な抗議か?
「エル、黙っていろ。稽古の邪魔だ」
団長と向き合ったまま変態巫女に告げる。
「なっ、勇那様!こんなのは稽古ではありません!死んでしまいますよ!?」
「ちゃんと撃つまでの予備動作が有る。本気で当てに来て無かった。さながら実践訓練なのだろう」
向こうで兄弟子や師匠に付けられた稽古では予備動作無しでの攻撃も多かった。まぁ殺されるような攻撃は無かったし、極力寸止めされてたけど。『相手の思考を読み、よく観察していればどんな攻撃でも察知できる。特にアンタは害意に敏感だからね。アタシより上手くできるさ』とは師匠の自説だが、実際にコレをやると1度見た攻撃は捌ける。初めてでも攻撃される位置は予測できる。
「マジかよ…予備動作まで見抜かれたか…どこで気付いた?」
「剣先を意味も無く上げる者はいない。本当に少しだったが、突きの構えにしようとしていたのだと予測を立てた」
大検を下段で構えている時点で警戒はしていたが。
「バレバレか…よく見てる」
「いや、こちらも切り合いの最中にどう魔法を使おうか悩んでいた所だったからな。見れて良かった」
少しだけ思い付いたな…試すか。
「では、続きだ」
「はっ、上等!」
再び切り合い。今度は互いに剣を振るい、弾き、捌き、突き、拳や蹴りを織り交ぜて魔法を狙う。
剣だけでは私がどうにか凌げるので埒が明かないのだ。団長の方が実戦経験が豊富なのだろう。フェイントや競合いで団長は少しずつ私を追い詰めようとするが、そうなる前に察知し、突きや足狙いで間合いを取る。
次にフェイントで拳が来た時がチャンスだな…
「へっ、戦い方を知ってるなあ!」
来た…次はフェイントを打たせる。
上段切りをかわし、突きを返す。剣の腹で止められたが構わずもう一発。狙うは指。
「甘え!」
盾にしていた剣をバットのように振ってきた。私はボールじゃない。バックステップで避け、即座に前へ出て胴を切り払う。またしても剣に阻まれるが、団長は拳を用意している。
さて、試してみるか。向こうも何かしているようだしな…
(影よ 我が身を包みし盾とならん)
「シャドウガード!」
「ストーン・ブラストッ!」
団長の腕が巨大化して私の影を襲った。魔法名を聞く限りは遠距離魔法な気がしてならないが、まさか自分の腕に土を集めて巨大な塊にする魔法だとは…他の騎士もこんな風に魔法を使うのか?
両者の接触点から私の方に黒い靄が、団長の方に土塊が放射されている。まるでバトル漫画だな…
ギチッ、ドゴォン!
っく!爆発だとっ………
「よう、立てるか?」
あの爆発であちこち煤けてはいるが、私のように無様に直撃を食らってはいないか…
「生憎と平衡感覚をやられて立てん」
「なんのこっちゃ…」
「勇那様!大丈夫ですか!?」
団長が何かを言う前に変態巫女が駆け寄ってきた。
「平気だ。少し休めば回復する」
「みゃ~(無理しちゃダメ)」
クロに心配掛けたのは何か罪悪感が有るな…明日から気を付けよう。
接近戦での魔法の感覚は分かった。問題は発動スピードと魔力消費による疲労だな。こればっかりは実際に明日から魔法を習ってみないとどうしようも無いな…課題はまだまだ山済みだな…




