混沌
ベットに横になり、マティアスの絵を見ていた。
「綺麗な色のグラデーションと光が折り重なる水彩画だ。この絵は何を語っているんだろうか……」
「イタタ……!」後頭部が急に痛んだ。
その時にフラッシュバックが浮かんだ。一瞬口論のような、誰かと言い争いをして銃らしき物を持っていた。一瞬だったからどういったことでそんなことになった理由が分からない!気になる〜。続きを見ようと再度絵を凝視してみた。でもあの続きのシーンは出てこなかった。
暫くベッドの中でゴロゴロしていたら、そのまま寝落ちした……。
***
「あのね、建人。必要があったらいつでも呼んでくれていいんだよ。こっちにきて」
「あれ?僕寝てますよね?ここは夢ですか?」
「ああ、夢というか、出会える場所があるんだよ。もし起きた時に覚えていたら、君は意識の使い方が上手くなったということだよ。ふふ」
「そんなことが起こるんですね。じゃあ、もう一緒に住むとか連絡するとかも必要がないですね!」
「君次第だよ。でも僕は君と意識のある3次元世界でも一緒にいたいんだけどね!こっちにきて!」
彼は僕の手を取って、指先にキスをした。そのまま自分の顔に僕の手を添えて言った。
「愛してる」
答えを待っているのかな?間が空いた。
「僕の答えを待っているの?」
「うん。ちゃんと愛してると言って欲しい」そう言って、抱き寄せて額にキスをした。
夢の中でも感覚があり、とても心地良さと気持ち良さが混ざり合いこんな感覚は初めてだった。
「愛してる」思った瞬間から、彼の行動は止めることができないくらいの力強さがあった。夢の中なのに肉体で感じる感覚が同じで、そのままMAKE LOVEをしている。
「これは、現実でやる時のための練習だよ」そう言って、挿入が始まる。男同士のSEXなんて一生縁がないと思っていたけど、悪くない。女の人ってこういう感じで感じてるのだろうか?バカなことを考えてしまった。そんなことを考えている余裕なんてないのに、気を逸らしたくなる。これは多分まだ彼に対して抵抗したい……だ。
濃厚なひと時を過ごし、そのまま夢の中で眠ったら現実に戻っていた。
目が覚めた時に、なんともいえない満足感とエネルギーが身体中に満たされているのが感じられた。
***
スッキリした気分。
本来のエネルギーが戻ったような感覚!
早速彼にメッセージを送っておこう。
「次は現実で」と言われたことを思い出した。
そう言えば、昨日のフラッシュバックの件、伝えられなかったな。
メッセージだけ入れておくか。あれ?夢の中で「愛してる」って言ってたような……
あー……。とうとう口に出してしまった。
「でも、もういいか」自分の中での確信を誤魔化しても苦しいだけだ。メッセージを打っておこう。
『アシという男の声で挨拶に来たのを思い出しました。ただの挨拶だけ。また来るそうです』これでいかな?詳細はまだよく分からないし、一先ず報告だけしておこう。
今日もランチの後に、いつものCafeへ行った。
辺りを見回すと店の雰囲気がなんだかいつもと違う??
見え方が、いつもと違うという意味だ。
周りは、この時間帯にくる人たちはほぼ同じメンバーだけど、キラキラしている。
半透明の人間ではない存在が一人づつ後ろに寄り添っているんだ。
瞬きをした瞬間に元に戻った!
ここはそんな場所だったっけ?もしかしたら、ちょっとだけ彼と寝た影響なのかもしれないな。
そして、いつもの通りホットコーヒーだけを注文し、席についた。
目を上げると、正面に半透明の人がいた!
「やあ!、今回のレイダ」
「あ……はい。僕です。嵐山建人と言います。あなたは?」
「僕はね、アーヴと呼んでくれ。君の夢の中ではどこまで知ってるか分からないが、僕たちは顔見知りだよ」彼はそう言って、礼儀正しく美しい姿勢で座っていた。
「今は、会社が乗っ取られて内部の人と面談をして……」
「ああ、いいよいいよ。今日は目覚めたお祝いで来ただけだ。あとは君の中のシークレットについて意識しておいて欲しくてね。君が抱えているシークレット暴けない限り、僕たちは自由になれないからさ。いいかい?僕たちは君とチームだ。一人で勝手な行動はしないでね。絶対に!」
「ええ、わかりました。シークレットがあると言われても、まだ全然分からなくて追いついてないので」
「わかったよ。君とのコンタクトの許可は、アヌからもらっているから安心してくれたまえ。では、今日は挨拶だから、早々に失礼するよ。三次元での生活は疲れるから、ゆっくりCafeタイムを楽しんで」
アーヴはそう言って、消えていった。
まるで映画のような日常が始まったと実感した。唖然……。
日常から離れた出来事はがあっても、外部とのミーティングに集中できるか心配だったけど、思いの他、集中できた。仕事に支障が出てきたらどちらを優先していけばいいのか分からないし、レイダの問題はもしかしたら人生を賭けて死ぬまで続くことなのかもしれない。頭の切り替えをできるようにしなければ。
「建人?今日は付き合ってもらえるの?」
「ああ。いいよ。もう少し資料を作成したら今日は終わりだ。飲みに行くか?」
「ええ!行きましょう」
二人の会話はとても弾んだ。だた、これ以上の蜜な関係を持てないから、気を持たせないようにしなければ。もう僕の中では、徐々に妹のような存在に変わっていた。
でも、彼女の中ではまだ僕は恋愛対象・結婚相手対象だ。仕草や、何気ないお触りが僕を誘っている。
まだ、これを拒絶できない。なぜなら、彼女の気持ちをわかってるからこそ、感情的になられては困るからだ。ただ、まだボディータッチがあると反応してしまう……。
「今日はそっちにいってもいいの?」
「いいよ」ついそう言ってしまった。
案の定、そうなってしまった。だって、やっぱり彼女のことが好きだし、まだ気持ちに整理がついていかない。理子が僕を求めているのであれば、僕は受け入れるしかない(今は……)
***
「レイダ!レイダ!大丈夫?」
「あれ?さっき何を話してたんだっけ??」
「急に俯いて止まったから、びっくりしたわよ!今日は帰る?」
「あー……ごめんごめん! ちょっと考え込んだら一瞬寝落ちしてしまったようだわ。ごめんなさい。あのね、アーヴさんと一緒に会ってくれる話よね!もうちょっと待ってくれるかしら。私から話してから段取りを考えるようにする!」
「では、その辺はあなたに任せるわね!」
あー良かった。なんとか誤魔化すことができた。正直社内の誰も信用できないのよね。テレサでさえも。
とはいえ、アーヴさんも信用できるか?という疑問もあるけど、アヌの知り合いだから信じてみよう。素性をこちらでも並行して調べてるし。
オフィス内を歩いていると、A棟4階の非常階段付近にドアがないのに。行き来してる人を見た。
直ぐにその場所に行ってみたら、扉は閉じられた!
やっぱり内部に誘導してる奴がいる!ここにマーキングしておこう。私だけが見えるマーク。
今日はもう帰りましょう。その事も含めてアーヴさんに相談することが無難だと思い始めた。教団員が自由に行き来してるなんて、どこに応援を頼めばいいのやら…また泣きたくなってきた。
周りが休みを許してくれないくらい、目まぐるしく展開が進んでいるようだ。暢んびりしていたら足を掬われるのが見えてきた。早急に対応していかないと!
「アーヴさん、今夜うちで話ができますか?」
「ええ、大丈夫ですよ」




