不老不死か若返りか
レイダとアヌは自室に籠っていた。
レイダは暫くオフィスに行くことができなくなっていたからだ。
誰かと連絡を取ることもできない状態だったので、次の新薬の計画を考えているところだった。
「レイダ。政府や教団に目をつけられることをしてないよね??大丈夫??」
「ええ、別のことを考えているのよ。永遠の命だと皆んな血眼になるっていうことが分かったわ。だから次は、若返りにしたの。普遍の美薬よ!」
彼女は張り切って、プロブラミングと分析調査をしていた。
その様子は、もはや狂気的なスピードでパソコンに打ち込んでいた。
「え?え?」アヌは驚愕してレイダを見ていた。
この子はわかっているんだろうか?
または、全世界に対してリベンジをしようとしているのだろうか??
「あのね、アヌ。私は・・・」躊躇い(ためらい)が勝ってしまう、アヌに胸の内を言えなかった。
「うん。いいんだよ。僕は、君が好きなことを全面的に賛成する」彼女を抱き寄せた。
何も言わなくても、レイダの考えていることは分かる。
彼女は確かに勝気な性格だが、やり遂げたいことがある。
それは、多くの人を死からの解放・若くて健康な体でいられることで、人生の終焉を救うことが彼女の夢だった。
年をとり、体のあらゆる場所が機能不全になって苦しみ悶え死ぬことほど不幸なことはない。魂の灯火が肉体から消えていく時こそが死であり、肉体は健康のままでいられることがどんなに幸せだろうか。
もう、苦しむ必要はないのだ。
「ねえ、アヌは237歳だっけ?私と殆ど一緒にいてるけど、あなたの私への熱は変わらないわね」
「君はどうなんだい?」
「私は……」わざと考えたフリをしている。
「私も変わらず大好き!だろ?顔に書いているよ。どうしたんだい?僕の年齢が気になる?」
「いいえ、あなたが私に描いてくれた絵。あれを見た時に、私はあなたの私への愛は本物だと思ったのよ。人生で最大のプレゼントだったわ」
「あの絵の意味をわかってくれた。だから君は不老不死の研究をしている……」
レイダは黙って頷く。
「君は、僕と同じようになりたいのかな?であれば……」
「方法はない。私は、あなたより先に老いぼれて死んでしまうの。ペロイオネ星人は比較的長寿だし、私もこの美貌でまだ87歳よ。あと120年くらいは生きることができる。でも、これから下降してくる体力と老人になってしまう私を、あなたはどう思うのかしら?介護をしてもらうなんて嫌だわ」笑いながら話すレイダ。
「照れなくてもいいよ。下の世話もどんとこいだよ〜。」
「バカ言わないでよ〜。介護の人にお願いするから大丈夫よ」
「ねえ、じゃあさ。一つだけ作って、君だけが不老不死になればいいじゃないか?そもそも僕が君にだけ教えたコードなんだからさ」
「でも、私は人類ごと幸せにして、私たちも裕福でありたかった……。強欲が招いたから神様がストップをかけたのかしら」
「そうかもしれないね!あはは」
「いじわる」
二人はスキンシップを始めようとしていたが……
「アヌの種族は一体どうなったの?聞いてもいいかしら?」
「ああ……。不老不死と言っても、刺されたら死ぬし、病気になっても死ぬんだよ。
要するに、漫画やアニメに出てくるような無限に再生して蘇るとかではない。
歳を取らないが、病気になって、治療が間に合わなかったら死んでしまう。
要するに老化がないのだよ。
それを勘違いしたどこかの悪い征服者が、実験台として大量に人々を狩っていった。
もう、僕を含めて100名いるか分からないね」
「その時、あなたは何をしていたの?僕はそいつらに捕まってしまったところを、ソロモン大元帥に助けられたんだよ。僕はラッキーだった。それから彼と親しくなったしね」
「そう……。私もラッキーだ」と沿っと呟いた。
お互いの体温を感じていたら、気持ちよくなってきた二人は、そのまま寝てしまっていた。
夕方、アヌはレイダの感触がないことに気がついた。
部屋のどこかにいるのだろうと、思っていたが気配がないことに気が付く。
「レイダ?」何度呼んでも返事がない。外に行くはずがない。今は出禁だから家にいるはずなのだ。
部屋中を探し、彼女の携帯番号にもかけたが、側で鳴っている。
急いで、アーヴに連絡し、捜索をしてもらった。
どれくらいの時間が経ったのだろう。
落ち着けと言われても水も飲めない。
不安と、すべてを破壊したくなるような感覚が湧いてくる。
どうか、神様。レイダを無事に俺の元へ返してください。
神様だって……神へ祈るなんで、何十年ぶりだろうか?
俺はあの時から、神に祈るなんてしてない。神に祈ることは間違っている。
自分の感覚を信じるんだ。
彼女は生きている。
きっと、みんなの心配なんか関係ないって顔をして「ただいま〜」と言って帰ってくるんだ。
頭が痛い……。
「おい!おーいアヌ!大丈夫か?」アーヴからテレパシーが来た。
「ああ、どうだ?そっちで確保してくれてるのか?」
「確保というか、まだ見つかってないんだよ。オフィスにも入ってみたんだが、どうやら彼女は教団に連れ去られたようだ。家からな」
「そんなことってあるのか?俺は気が付かなかった。一緒にうたた寝してたのに……」
「部屋に睡眠ガスを撒かれたのかもしれないな。何かガスっぽい痕跡があれば……。もう少しラボ内を見ておく。更にソロモンさんに応援を依頼しているから、お前は家に居てくれ」
唐突なことが起こり、急展開な状況にアヌは気を失いそうだった。
どこから狂ったんだろう?
自分の秘密を彼女に教えてしまったから?
あんな絵を渡すのが間違っていたのだろうか?
いや、今更何を言っても遅い。
自分ができることをやっていくしかない。
「レイダが好きな料理でも作って待っておこかな。きっとお腹を空かせて帰ってくるだろう」
今することか?と思いながら、帰ってくることが当たり前の如くいつものように、夕食を準備し始めた。
『レイダ、早く帰ってきてください……』




