組織の中で
果てしなく気が遠くなるほどの暗闇に、無数の星々や星雲、ガスが複雑に干渉し合い、美しい独特の光を散らす宇宙空間。
その無限の静寂のただ中に、圧倒的な存在感を放つ超巨大戦艦が鎮座していた。
その周囲には、規則正しく放射状に陣を張る中型・小型の戦艦群。
それらはあたかも、虚空に浮かび上がる一つの壮大な『国』を形成しているかのようだった。
中央に聳える大艦隊
その最上階に位置する一室……
荘厳な静寂に包まれた広大な司令室の奥で、大元帥はその深々とした執務椅子に身を預けていた。窓の外に広がる星海の眩い輝きを背に受け、そのシルエットは宇宙の静寂そのものを体現しているかのように静まり返っている。幾重もの戦艦の防壁と、全宇宙の運命を左右する絶対的な権力をその身に宿しながら、大元帥はただじっと、漆黒の闇に明滅する光の群れを見つめていた。
男?女?見た目からは性別が分からない。
その見た目は、銀髪にうす青い肌の色。ブラウンにグリーンがかかった瞳の色……。
年齢は不詳だが、見た目は40代に見える。
「ソロモン大元帥。地球にいるアヌ・コーエンからの通信が来ておりますが、如何いたしましょうか?」
「アヌからか……。久しぶりに何か進捗があったかな……。繋いでくれ」
座席に装備されている装置から、手元に小さなスクリーンを出した。
「暫くぶりだなアヌ・コーエン」
「大元帥、ご無沙汰しております。大元帥。お変わりなきお姿で安堵いたしました」
「それは、お互い様だよアヌ。最後にあったのはいつだったかな?地球時間で150年前くらいか?
レイダの身辺で、何かあったか?」
「はい。150年はあっという間で、昨日のことのようですね。
さて、本日はご報告がございまして……。ペロイオネ製薬から移動したアシ リトバクがやって来まして、次のターゲットが地球だと宣言されました……」
「はあ〜。ついに地球に焦点を当てに来たか。奴らはレイダが地球にいることを知っているのだろうか?」
「はい。その近辺は調査済みのようです。早速ですが、私は今世のレイダと同棲に成功いたしました!
奴らより先に、手中に収めることができて良かったですよ!今回の彼女は男性なんですが、もう僕達は出会った期間が短いのに、既に息がぴったりと合っていて、さすがレイダと思いましたよ〜うふふ。
愛する私のレイダは姿が男であっても、オリジナルのレイダと変わりなく可愛い!!」
えーっと……
急に素が出るほど、嬉しかったのだな……。
「それは良かった!今回はしっかりとコミュニケーションを取って、彼女を失わないようにせよ。今世で解決できることを祈っておるぞ」
「承知いたしました。ご報告事項は以上です。では失礼致します」
ふ〜。今回こそは教団を潰すことができればいいが。
あとは、地球は未発達で他の勢力が入り込んでいるから厄介だ。
もしかしたら、地球内の勢力争いの均衡が変わったことで、教団は地球にやって来たのかもしれない。
アヌとアーヴのサポートを増やして、他にも何名かスパイを送って状況を確認するとしよう。
「誰か、シャローム メッツガー准将を呼んでくれないか?」メッツガーは恐らく、銀河星団の太陽系付近に配属させていたはずだ。イエーゼス教団の動きも観察してると思う。状況を聞いてみよう。
「はい。シャローム メッツガーであります!」
「やあ。急に悪いね、シャローム メッツガー。さっそく本題に入るが、太陽系地球にいるアヌ コーエンから、イエーゼス教団内部から接触が合ったと連絡が来たのだよ。あの……例のアシ リトバグからだそうだ。
それによると、教団側は既にレイダの居所を突き止め、更には地球も占領のターゲットに入っているとのことだ。現状の地球の様子はどうなんだ?」
「はい……。地球には幾つもの対立している裏社会があり、それらが国と国を戦争を起こさせて対立しております。非常にレベルの低い教育状態にあるため、宇宙連合としては暫く放置というか、方針が決まっていない状況ですね。テコ入れをされますか?」
「教団が手をつけるにはもってこいな状況だな。今まで興味もないような星だったのだろうか。もっと早くに占領しててもおかしくない状況だったのに……」
「いや、あそこには既に牛耳っている組織がありまして、銀河中でも相当嫌われている種族によって発展を止められているんですよ。なので、もしかしたらその組織の均衡が崩れているタイミングなのかもしれませんね……」
「そうか……。我々連合軍は、その星の文化に深く入り込まないようにしているからな。介入はその星の人類によくないと言うことで、評議会にも釘を刺されている。しかし……今映像で見ているが意識レベルもかなり低く、底辺と上位地域が雲泥の差があり、このまま放っておいたら発展なく永遠にこのままかもしれないね……」
二人は沈黙して地球を映し出しているスクリーンを、幾つも見ていた。
無数に繰り広げられている戦争や、美しい大自然を戦争や化学物質で壊し、さらには健康被害、食事、空気や電波でマインドを犯して行っている様子は、只事ではないと感じさせられた。
こんなに独占状態に支配している星は、滅多にないだろう……。
それでも人々は、与えられた世界で楽しく笑い合って生きている。
でも、もっと変えられることは、沢山あるんだよ。
なんとかしてやりたい……。
隅々まで人々の生活様式を観察し、ソロモンは口を開いた。
「今後の地球についての方針だけど、評議会にも相談してみるよ。君はアヌのとアーヴを助けてやってくれ。そして、地球人を独占して洗脳させている組織を調べてくれるかい?そして教団についての動きも観察し常時報告を。何か必要なものがあったらいつでも言ってくれ」
「承知いたしました」
銀河系を隅々見ても、こんなに美しい星は滅多にないよ。
ソロモンは、記憶の中にある遠い昔の地球を思い巡らしていた。
彼が若い頃に太陽系を管轄していた時があり、地球にはよく立ち止まっていたからだ。
その頃は、複数の学者達は種々様々な実験をして生物の成長を見守っていた。
地球の地表から作り出される物質に対応できる生物や動物、昆虫や人間のバランスなど、試験を何回もやって、ソロモン自身も学者たちの発表を楽しんでいた。
その中で、忘れられない人もいた……。
オリオン系から来た、決して『見た目が良い』と言える部類ではない。どちらかというと無骨で、なんとなく冴えない佇まいだ。しかし一旦口を開くと、楽しそうに持論を語る彼の瞳が煌めき、その無骨な輪郭さえも魅力的なフレームに見えてくる。話が弾むほどに、私は彼が『次は何を言うのだろう』と待ち構えるほど彼の話に聞き入っていた。
彼の名前を思い出すことができない。
「確か、見た目は金髪に碧眼(目の横には小さい目があったな)、肌の色は薄いブラウンで
う〜ん……。なんとかゾーラー」
まあいいか。
久しぶりに、地球へ行ってみるか。




