閑話 近衛騎士団長の視点
衛兵から近衛騎士に変えたいと思います。
申し訳ありません。
今までのも直しておきます。
あの夜ーー
「急げ!何としてもソフィア・レニアーナを見つけ出せ!」
灰色の髪に茶の瞳の近衛騎士団長ゼフィルス・アガルト(23)の声がこだまする。真夜中であるのに明かりによって、街や学園は昼間のようであった。
何故こうなったかというと、先程ソフィアが、近衛騎士を身代わりにして逃げたという事が分かったからだ。
急いでいたとはいえ、身代わりを見ると近くに行かないと誰か分からないようになっていた。
彼女と同じくらいの背の騎士にドレスを着せ、胸はタオルで作る。髪はバレないように自分の髪を切って即席のものを作っていた。
それに布団を被せれば誰だか分からない。
流石だと思った。
しかし夜会の時、何をしようとしたかエドワードに聞いたときは愕然とした。
何故なら、夜会の時にソフィアを裁こうとしたからだ。
何でも聖属性を持つ女に惚れたとか。
「ゼフィルス、情報は掴めた?」
俺は考え込んでいるとエドワードに声をかけられた。
俺は近衛騎士団長であり、「国王の番犬」であるレニアーナ侯爵家の裏の仕事の秘密を知っている少ない一人だ。
その秘密は国王を中心に信頼できる者しか知らない。エドワードでさえも知らないのだ。
「いえ、見つかりません。この時間帯ですと、城壁の外に出られたと思われます」
「そうか……それでは外にも警戒しておいてくれるかな?」
「はい」
俺は内心舌打ちをしながら返事をした。
こいつは何をやっているんだ。
ソフィアは侯爵令嬢である。しかも、まだ成人していない故、国外の仕事は任されていないものの、仕事を失敗した事はなく、戦闘の実力は上位に入る。
それなのに平民の女を選んで……それが聖属性持ちでも、可愛くても、その選択肢は選んではいけなかった。
侯爵家の後ろ盾が有ってこそ第一王子リカルドと後継争いで並んでいたのに、それを自ら無くすなんて。
しかも今回のでレニアーナ侯爵家は大分苛立っている。これでは裏の仕事をしなくなり、政治や、治安、貴族の世界は成り立たなくなるだろう。
俺であればそんな事はしないのにな。
国王陛下も大変怒っている。彼女を無くすのは惜しいと。
今、ソフィアを捜しているのは捕まえる為ではない。連れ戻し、謝罪する。
エドワード王子は捕まえて幽閉するつもりらしいが、国王陛下は違う。
国王陛下は今までの事を徹底的に調べ上げ、何もかもソフィアが無実ということが分かっている。
どうして逃げたかは分からないが、連れ戻して、第一王子の婚約者にでもするつもりだ。
「どうしてこうなった……」
エドワードは聡明だったはずなのに……恋とはそこまで人を馬鹿にするのか?
「あの……」
「はい?」
今度は鈴のような可愛らしい声に掛けられた。
ピンクのふんわりとした髪に眼、メアリーという、皆を落として馬鹿にした女だった。
俺はこの女がはっきり言うと好きじゃない。
何と言うか、媚びを売ってくるような感じが嫌いだ。
俺はソフィアの様な頭が良く、気品があり、落ち着いた人が好きだ。
「あの、肩までの茶色の髪に碧色の瞳をした男の人は知っていますか?」
「?……いえ、居ませんが?」
「そうですか……ありがとう」
メアリーは残念そうに去っていった。
俺はその時に思った。茶色の髪を肩まで、黒い瞳の男は近衛騎士に居ない。
もしかしてソフィア様じゃないか?
髪は染めればいい。残された髪の長さから肩までは髪は残っているだろう。
「もしかすると……」
それだとしたら、上手く逃げたんだな。
そうホッとした。
昔、俺は彼女に会ったことがある。彼女は9歳だったので覚えていないだろう。
まだ普通の騎士だった時、任務で人身売買をしている貴族の家へ夜、仲間と突入した。
ただ、その貴族の雇った盗賊はとても強く人も多かったので、返り討ちにあったのだ。
俺は殺されそうになる直前、彼女に助けられた。
たなびく黒い髪に揺るがない碧い眼、血だらけのナイフを持っていたし、仲間の死体が周りにあるのに俺はそれに構わず綺麗な姿に魅入ってしまった。
「大丈夫?」
そう言われて、今の状況を思い出した。急いで礼を言うとポーションを渡して闇に消えてしまった。
それから何週間かたち、あるパーティーが開かれた。
そこに幼い彼女がいたのだ。
後から聞くと侯爵家で第二王子の婚約者らしい。
あの時は幼い王子と彼女は手を繋いで歩いていて、仲が良かった。
国王陛下に呼び出された。
前の突入の際に出くわした事を知られていた。仕方がないと、少女について話してくれた時は驚いた。
あの歳で裏の仕事をしているんだから。
その時に決めた。近衛騎士団長になって彼女を護ろうと。
「おーい、近衛騎士団長」
昔の回想に入っているとまた声を掛けられる。
今日は邪魔が多い。
振り返るとある獣人の生徒が立っていた。ただ、暗い所に立っているため容姿は見えない。
「俺を知っているのか?」
「もちろん!有名だからな」
少年は何か聞きたいことがある様だ。
「何が聞きたい?」
「おお、分かるのか?流石だな!俺が聞きたいことは1つ、ソフィア様は見つかったか?」
こいつ……まさか追いかける気か?
「良いが……知って如何する?」
「秘密」
連れ戻す気は無さそうだし、話すか。
良いことになるのを祈って……。
「彼女は……如何やら近衛騎士の格好をして城壁の外に出た様だ。変装の達人だから、逃げるのは容易だろうな」
「おいおい……変装の達人って如何してそうなる」
少年は驚きながら冗談まじりに言う。気を取り直したのか。
「ありがと。それじゃあな」
聞くことに満足したのか片手を振りながら背を向けて歩き出した。
「今日は疲れた……」
俺はそう言いながら夜空を見る。
もしかしたらこれは夢かもしれない。寝て、次の日には嘘の様に日常があってソフィア様がおはよう、と微笑んでくれるかも知れない。
そんな現実逃避をする。
「くそっ!」
俺は勢いよく壁を殴った。
痛い。
結局現実で如何にもならない。
近衛騎士団長になったのは国王陛下のお陰ではあるが、実力も団長を超えたからこそ選ばれた。
なった時は嬉しかったが、今となっては意味が無い。
ソフィア様、どうか何処かの国でお幸せに。
護ることが出来なくなった今、満月を見ながらそう祈るしか無かった。
これから投稿が遅くなるかも知れません。




