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私は人目のある場所を避けながら、城壁に向かってひっそりと歩く。
曲がるごとに曲がり道がある裏道を通っていると城壁についた。
「意外と壁って高いのよね」
隠し持っていた鉤縄を取り出し、城壁に引っかかるように投げる。
そして強度を確認するとスルスルと登って城壁の外へと出た。
この国、警備が緩いわ。王様も気を付けないと、直ぐに暗殺者が送り込まれてしまう可能性が。よく殺されなかったわね。
……はぁ、この国大丈夫かしら。もっと強化したりとか……何かしないと……。
はっ……いけないわね、つい仕事癖が……。
それよりも、早めに隠れ処に行かないと。
私は国を出る為、隠れ処に向かう事にしていた。
少しこの国の警備に不満を持ちながら隠れ処へと向かっていく。隠れ処は城壁外の森にあり、何週間か住めるようになってるし、仕事道具も揃われている。
隠れ処がある場所はつくと土を払い、隠されていた扉を開く。そこには階段があり、降りられるように出来ていた。
ここならゆっくり準備が出来るからいいのよね。個人での隠れ処だし、地下にあるから扉は土をつけていて分からない。
魔法を封じられた今、強い魔物に襲われたら危険だし、ここで朝まで待ちましょう。
私は早速化粧を落としてから川から引いておいた水をシャワー代わりに被る。
ひと段落すると紅茶を飲んで、一息ついた。
「ふぅ……」
さて、どこの国に向かおうかしら……悩むわね。
東は獣人の国フォスター王国。
西はエルフや精霊が住むといわれている精霊の森。
北は魔族が済むといわれているデズリー魔国。
南はドワーフの国、アルコッタ。
魔国は問題外ね。だって私は確かゲーム内では人間と魔族は争っていたし。
精霊の森は素敵だよね。自給自足の生活!
だけど下手したらエルフとかに怒りを買うだろうし、面倒臭い。
ドワーフの国は酒臭いらしいし、まず身長で目立つ。
それなら獣人の国に行きましょう。モフモフに癒されて平和に暮らして行くわ!
という事で私は東へと向かうことにした。
ソファーに寝転がってから薄い布を被り、どんな国だろうと想像を膨らませながら眠りについた。
起きたので私は鏡を見ながら変装をし始める。
用意していた短い金髪のカツラを被る。その後、前の男前の顔より可愛らしい17歳で紳士的の青年の顔にした。
うんうん、可愛いわね。
自画自賛だけどまあモテる方だろうなぁ。
服は旅人風のものにし、茶色の外套を着る。にはこれから使うだろう変装一式と道具、食べ物を魔法で容量を増やしたウエストポーチにいれた。
ついでにこの部屋の痕跡をなくしておく。
外套は裏にも色々装備できるから楽なのよね。
「他には何もいらないはず。後は……あ、近衛騎士さんの服は畳んで置いていった方が良いわね」
流石に近衛騎士には悪い事をしたので、感謝の意を込めてね。
運良く此処が見つかれば多分返してもらえるだろう。
私は近衛騎士の服を手早く、丁寧にたたみ、机の上に置いた。
「さて、行くか!」
私は隠れ処を後にした。
森を抜けると道が広がっていて歩きやすくなっていた。
でも、疲れたわ。歩きっぱなしは辛いわね。喉も渇いたし、少し休みましょう。
休みを取る為そこら辺にある石に腰を掛け、持ってきたリンゴを齧る。
んー、美味しい!喉が癒えるわね。
こ
「うわー!!誰か、誰か助けてくれぇ!」
私はリンゴの味を堪能していると、微かに香る血の匂いと助けを求める声が聞こえてきた。
私は急いでその方向へ行くと行商人達が10人の山賊達に襲われていた。護衛の人は殺されているみたい。
助けないと!
私は剣を抜いて山賊に斬りかかる。声は少し低めにして行商人に声をかけた。
「そこの方、助けに入る!」
「おい、兄ちゃん!危ねえぞ!」
「何だテメェは!」
行商人の叫びとともに剣を受け止めながら山賊が聞いてくる。
そんなの決まってるじゃない!
「え?ただの通りすがりだけど?」
私はそのまま山賊の足を蹴り、バランスを崩す。殺すのは流石にダメかと思ったのでそのまま腹を殴って気絶させる。
これくらいなら魔法が使えなくても楽勝ね。
気絶させたのはリーダー格だったようで恐れをなした山賊達は逃げようとした。
「逃がすか!」
私は隠し持っていたナイフを数本放つように投げて数人の足のアキレス腱を切った。
他は逃げられてしまったが、まあこれくらいで良いかな。
手足を縛って逃げられないようにした。
「ありがとう!あんたが来てくれなきゃ俺たちは死んでたよ」
「いえいえ、助かって良かった。こいつらは如何しようか……」
「ひ、ひぃ!助けてくれ!何でもするから……お願いだ!」
山賊の一人騒いでいるが無視しよう。それよりも……。
私はリーダー格の男に剣を突きつける。
「無駄な抵抗はするな。お前、火属性の魔法が多少使えるようだけど……大人しくするか、その縄を焼き切る前に剣で一突きか、どっちが良い?」
「ちっ……」
私はリーダー格が火を使って縄をどうにかしようとしていたので、脅してみた。
よし、大人しくなった。行商人の一人が魔封じの腕輪を山賊に付けて馬車の中へと連れて行った。
私はナイフを戻し、ほっとした。
その様子を見ていた行商人達は、私に近付いてくる。
「兄ちゃん、あんた大分強いな!どうしたら、そんなにも強くなれるんだよ」
「幼い頃から修練を積めば誰でもこれぐらい……」
これは本当。私は女だから、直ぐに成長出来なくなってしまう。だから寝る間も惜しんで練習する事は幾度かあった。
「礼をさせて欲しいんだが、何か欲しいものはあるか?」
「何でも行ってくれ!色んなものが揃ってるんだ」
礼儀正しいわね。確かに借りを借りたままだと如何なるか分からないからかしら……。
「いや、売り物だろ?それは遠慮しとく。どうせなら、そうだな……実は獣人の国に行きたいんだけど、もし行き先が同じなら同行しても良いかな?」
「ああ、勿論だ!俺たちも丁度そっちに向かってたんだよ。護衛も欲しかったし丁度いい!よろしくな!俺の名はカールだ」
カールという男はいきなり、私の両手を包み込むような感じで持ち、ブンブンと振る。
ちょっ、女の手をいきなり握るなんて……いや、一応男装してるからそんな事は言えないけどね。
私は頰が引き攣りそうになるのを必死に押し留めながら笑って見せる。
「……僕はゾラ。よろしく」
私は仕事の時に使っている名前を出した。使えなくなっても他のを考えれば良いしね。
これで楽に獣人の国に行くことが出来ると、この出会いに心の中で感謝する。
ふふ、これで国からの追っ手は追いついてこれないでしょうね。
獣人の国で幸せになってやるわ!




