第10話:入学試験(8)
俺たちは、セレナの自由試験を眺めていた。
セレナは、世界樹の苗を持参していた。
五大校の敷地には世界樹が植えられているが、世界樹の寿命は数百年であり、定期的に植え替えが必要となる。
クリスタリア魔術学院の世界樹は寿命が近づいており、植え替えが必要な状態だった。
セレナは、世界樹の植え替えをして、世界樹の成長を見守るために来たようだ。
まずは学生として留まり、卒業後は助手を経て教授として就任し、末永く世界樹の維持管理を担う予定らしい。
セレナの自由試験は、あっさりと終了した。
「ほら、見て! 世界樹の苗だよ! ちっちゃくて可愛いよね!」
セレナは俺の元に駆け寄ってきて、植木鉢に入った世界樹の苗を見せてきた。
どうやら、俺はセレナの友達として認定されたようだ。
「……ああ。でも、自由試験は、あれで問題ないのか? セレナは、世界樹の苗を見せただけで、ほとんど何もしてないけど」
「ここだけの話、私の入学はもう試験前から決まってたんだ。世界樹の苗の管理のために、私はクリスタリア魔術学院に留まる必要があって、そのために一番都合のいい身分が学生だからね。でも、手を抜くのは他の受験生に失礼だから、私なりに頑張ってみたし、ちゃんと合格ラインは超えてるはずだよ」
「そうだな。セレナなら、きっと学年主席になれるよ」
「……そんなことないよ。アレク君の方が上だって」
「いや、俺は平民だから、絶対に学年主席にはなれないよ。学年主席になれるのは、貴族だけなんだ」
「……え? 人間は馬鹿なことを考えるね。一番優秀な人がリーダーになるべきなのに、まだ家柄みたいなくだらないことにこだわってるの?」
「俺は気にしてないよ。目立ちたくないから、学年主席にはならない方が好都合だ」
「……そういうものなの?」
「そういうものだよ」
その後、俺たちは年老いた世界樹の元へと向かった。
世界樹は大きく育っていたが、葉は落ち切っており、着実に弱っていた。
「世界樹を植え替える前に、今の世界樹を切り倒す必要があるの。その時は、アレク君にも手伝ってもらうね」
「……それは確定事項なのか?」
世界樹の植え替えに関わったら、確実に目立ってしまうだろう。
できれば、俺は目立ちたくないのだが……。
「当たり前だよ! 私一人でやるのは大変だから、誰か協力者を呼ぼうと思ってたけど……アレク君なら大丈夫だよね! 信じてるよ!」
「……了解」
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