作詞 が「上達する」とはどういうことか?(前編)
クリエイティブな活動をする中で「自分自身の成長そのものがモチベーションになる」ということはよくあります。
たとえば、作詞を始めたばかりの頃は、思いついた短いフレーズをただ書き溜めるだけだったのに、試行錯誤してワンコーラス作れるようになり、やがて一曲分の歌詞をフルで書けるようになっていく。
これは分かりやすい「上達」の過程です。
私自身、初めて一曲分の歌詞を書きあげられたときの達成感は、今でも忘れ難いものがあります。
しかし作詞の道は、当然ながら一曲をフルで書けるようになってからの方が長いものです。
次に分かりやすい上達の指標となるのは、より短い期間で歌詞を書き上げられるようになることでしょう。
ただ、こちらも、需要とのバランスを欠くほど大量に供給できるようになったところで、必ずしも意味があるわけではありません。
あまりに遅筆では困りますが、実際のところ、ある程度のペースでコンスタントに書けるのであれば、それで十分なことも多いでしょう。
では、ある程度のペースで、コンスタントにフル尺の歌詞が書けるようになった人は、そこで成長が頭打ちなのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。
「量」をこなせるようになったなら、次に着目すべきなのは「質」です。
過去の作品よりも品質の高い歌詞が書けるようになったのであれば、それは間違いなく作詞技術が向上したということでしょう。
ただし、ここで一つ問題が生じます……。
そもそも、歌詞の「質」をどう判断すればいいのでしょうか。
作詞には学校のテストのような明確な正解がありません。そのため、作品に点数を付けて評価することができません。
もちろん、信頼できる作詞の先生に評価や添削をしてもらえるのであれば、それも一つの方法でしょう。しかし、普通はそんな都合のいい先生が身近にいるわけではありません。
では、「SNSのインプレッションで測る」という方法はどうでしょうか?
これも一見すると有効そうですが、実際にはあまり参考になりません。
完成した曲のインプレッションでは、それが歌詞による評価なのか、曲そのものによる評価なのかを切り分けることができません。
また、フォロワーの多いアカウントにリポストされたかどうかといった、作品の品質とは無関係な要因によって、数字は大きく変動します。
そう考えると、歌詞の品質については、ある程度は自分自身で評価できるようになった方がいいのでしょう。
では、その評価をどのように行えばいいのでしょうか?
……実は、そこは「自分の好み」でいいのではないかと思います。
作詞をしている人であれば、「この曲の歌詞が好きだ」と思える作品が、いくつもあるのではないでしょうか。
では、その歌詞のどこに魅力を感じているのか、改めて考えてみてください。
それは
言葉のリズムでしょうか?
音楽との調和でしょうか?
メッセージ性でしょうか?
ストーリー性でしょうか?
描写の美しさでしょうか?
フレーズのインパクトでしょうか?
繊細な心の機微でしょうか?
それとも、もっと別の要素でしょうか?
歌詞には、その魅力につながる要素が無数にあります。
そして、自分がその中の何を重視するのかを考えていくことで、次第に自分自身の作品に対する「評価軸」が定まってきます。
逆に言えば、その軸がなければ、自分の過去作と新作を比較して、どちらが良くなっているのかを判断することも難しくなります。
「前より上手くなった気がする」という感覚だけでは、成長を実感するのは難しいものです。
だからこそ、自分の中に評価軸を持つことは、創作を続けていくうえで非常に重要なのだと思います。
そして、その評価軸は、やがて「美学」になっていくのでしょう。
何を美しいと思うのか。
何を格好いいと思うのか。
何を良い歌詞だと思うのか。
私はそうした問いに対する自分なりの答えが積み重ねが、自身の創作活動の向かう先を示す指針になっていくと考えています。
長くなってしまったので今回はここまで。
後編では「美学」が作詞の「上達」に与える影響について語ろうと思います。




