第1話,:退屈な人生の脱出速度
退屈とは、やることがない状態ではない。それは、自分が何をやっても絶対に意味がないという確信だ。
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俺の名前は草薙京也。十六歳の高校一年生。そして俺は、自分の意志で――いや、設計図通りに――完全に、完全なる孤独を選んでいる。
俺の家族が悲劇的な事故で死んだわけでもない。闇組織に殺されたわけでもない。現実はもっと平凡だ。奴らはただ、望まれずに生まれた息子である俺を見て、「生物的な義務よりも負担の方が大きい」と判断しただけだ。俺が中学に上がったとき、奴らは縁を切った。俺に自分の道を歩めと残して。
泣かなかった。頼みもしなかった。ただ鞄に荷物を詰めて、家を出た。
今は高校の近くにある、狭くて安いアパートで暮らしている。いくつもの疲れるバイトを掛け持ちして、どうにか食いつないでいる。今日もいつも通り、太陽が昇る前に目が覚めた。俺の体内時計はどんなアラームよりも正確だ。朝のルーティンを機械的にこなす――鏡の中の、輝きのない無機質な黒い瞳を見つめながら歯を磨く。寝癖のついた黒い髪のてっぺんから、一本のアホ毛が頑固に突っ立っていて、どれだけ水で濡らしても寝てくれない。
「にゃーん」
足元を見ると、小さな黒白の子猫が俺の足首にすり寄っていた。
「はいはい、分かってるよ」
ぼんやりと呟いて、安物の猫缶を開け、小さな陶器の皿に移す。
この子猫だけが、この惑星で俺が本気で気にかけている生き物だ。俺の部屋は、隅々まで完璧に整頓されているが、漫画とライトノベルの塔が並んでいる。それらは俺の逃避先であり、シミュレートされた現実のデータベースだった。よく考える。本当にああいう世界に飛び込めたら、どんな気分だろう、って。恋愛? 恋愛漫画も読むけど、実際の概念は理解できていない。愛が欲しいわけじゃない。何か「出来事」が欲しいんだ。俺の人生は終わりのない灰色の回廊だ。異常事態が欲しかった。
スクールバッグを掴み、子猫の耳の後ろをちょっと撫でて、部屋を出た。
「あら、京也くん。おはよう!」
アパートの大家さんだ。ふくよかで優しい顔の、ほうきを持ったおばさん。いい人だ――見捨てられた高校生が自分の屋根の下で暮らしているのを不憫に思って、こっそり家賃をまけてくれているタイプの人だ。
俺は即座に、完璧なまでに礼儀正しい笑顔を貼り付けた。長年かけて完成させた、ごく普通の人間を演じるための仮面だ。
「おはようございます、おばさん。いつもお世話になってます」
「今日も頑張ってるの? 無理しちゃダメよ」と彼女は快活に言った。
俺は頷き、玄関を出るまでその笑顔を保ち、彼女の姿が見えなくなった瞬間に表情を落とした。
俺の高校は特別に名門というわけではないが、なぜか異様に頭脳が集中している。1年A組は社会の縮図であり、正確に21人の生徒が所属していた。
教室に入り、自分の指定席へ直行する。後ろの列、窓際の席だ。座って顎を手に乗せると、毎日恒例の観察を始めた。
教室の中心で、自然と皆の引力を集めているのは、木谷大翔だった。彼は誰もが認めるクラスのリーダー。整ったネイビーブルーの髪、シャープな長方形の眼鏡、細く青い瞳。企業のパンフレットから飛び出してきたような外見だ。運動もできて、学業も優秀で、気持ち悪いくらいにフレンドリー。皮肉屋の俺でさえ、教室の社会ダイナミクスを掌握する彼の能力は卓越していると認めざるを得ない。
隣で大声に笑っているのは、霧島健人。永遠の銀メダリストで、常にトップテンの第二位。エリートと平均的な生徒の間を取り持つ社交的な蝶だ。
そして、浅野詩織。
彼女は数列前の席に、完璧な姿勢で座っている。クラスのトップの座を守る優等生。柔らかい黒髪だが、その下には鮮やかなラベンダーカラーのレイヤーが隠れている。開いた窓から風が吹くたび、あるいは彼女が髪を耳にかけるたびに、その紫色が目を引く。
見覚えのあるチクチクした感覚がした。詩織がまた俺を見ている。
顔は向けず、視線は窓の外の雲に固定したまま。彼女の視線は頻繁に気づくが、積極的に無視している。もし気づいてしまったら、会話に発展するのは避けられず、女子と話すことは決まってイライラするという方程式が成立するからだ。幽霊でいる方がマシだ。
視線を反対側の隅、引き戸の近くに移す。湊達也が机に突っ伏していた。俺と同じ後ろの列の一匹狼。大きめのパーカーを着て、ボサボサの灰色の髪が完全に目を隠し、その下には濃い隈がある。分厚いヘッドホンを首にかけ、机の下に隠したニンテンドースイッチを猛烈にタップしている。見た目に反して、彼はトップテン入りしている――俺より少し上の順位だ。
俺は自分の成績を意図的にトップテンの下位にキープしている。補習や教師の監視を避けられるほど高く、しかし完全に透明でいられるほど低く。
ベルが鳴る。ホームルームが終わり、一時間目の授業が始まる。物理学応用。
いつも眠そうな年配の先生が、軌道力学について単調に喋っている。俺は半分だけ聞き流し、昨夜やっていたSFスペースシミュレーションゲームに意識を飛ばしていた。すると突然、先生が歩みを止めた。
「お前らの中で、まだ起きているヤツがいるか試してやる」と先生は淡々と言った。「もし物体を十分に圧縮すると、その重力は強くなり、光さえも脱出できなくなる。これをブラックホールと呼ぶ。ブラックホールの質量をMとする。脱出速度が光速cと等しくなる正確な半径を求める式は何だ?」
教室は静まり返った。詩織がすぐにシャープペンを握りしめ、眉をひそめ、必死にノートに数式を書き殴り始めるのが見えた。
「草薙」と先生が呼んだ。その声が沈黙を切り裂く。「窓の外を眺めてるな。やってみろ」
俺はまばたきし、窓ガラスから視線を戻す。考える必要すらなかった。俺が遊んでいたスペースシミュレーションでは、特異点に押し潰されないように重力を計算するのが基本メカニクスだった。
「シュワルツシルト半径です」俺は声に抑揚なく、静かな教室にすんなりと響かせて言った。「古典的な脱出速度の式から導きます。
vₑ = √(2GM/r)
脱出速度が光速と等しくなければならないので、vₑ = c を代入してRについて解きます。
式は R = 2GM/c²
ここでGは重力定数です」
先生は手を止め、チョークを黒板の上に掲げたまま、俺を見た。まあまあ感心したようだが、特に大げさに満足した様子はない。「正解。続けるぞ……」
俺は再び顎を手のひらに乗せ、普通の質問だと思った。しかし前方に目をやると、詩織が完全に振り返って、大きく見開いた目で俺を凝視していた。彼女はまだ導出を書き終えていなかった。教室中にささやき声が広がる。
「え、今の暗算でやったのか?」
「それって大学レベルの天体物理学だろ?」
「草薙ってただの怠け者かと思ってた……」
正確に30秒間、俺は注目の的だった。しかし人間の本性とは、絶対的で予測可能なアルゴリズムだ。30秒後、誰かの消しゴムが落ち、廊下で誰かが笑い、クラスは総出でさっきのことを忘れた。日常が戻った。幽霊はまた物思いにふける。
昼休みの終業ベルが鳴ると、教室はいつもの混沌とした騒音で爆発した。机はくっつけられ、木谷は笑いながら人気者の連中と陣取り合戦をしている。詩織も会話に引き込まれていたが、時々その目は後ろの窓へと走った。
俺は立ち上がり、コンビニの安いパンを掴んだ。屋上に行こう、と思った。
扉に向かって一歩踏み出した、その時だった。
世界が色を失った。
床板からまばゆいばかりの純白の光が噴き出し、一瞬で部屋全体を飲み込んだ。十数人のティーンの賑やかなおしゃべりは断ち切られ、足元に複雑で巨大な魔法陣が現れた。幾何学的なルーン文字が、吐き気を催すような円を描いて回転し、神々しいまでの輝きを放っていた。
昼休みを打ち砕いたのはパニックだった。
「な、なんだこれっ!?」健人が弁当箱を落として叫んだ。
「地震か? 攻撃か!?」木谷が叫び、本能的に女子たちの前に立ちはだかった。
数人の生徒が慌てふためき、自分の机の端に必死に掴まった。まるでその家具が現実に彼らをつなぎ止めてくれるかのように。
俺は叫ばなかった。机にも掴まらなかった。どんよりとした生気のない俺の目は、純白の光を映して見開かれた。十六年間、単調で退屈なリズムで打ち続けてきた心臓が、突然肋骨に激しく打ち付けた。
魔法陣。局所的な空間転移。クラス全員の召喚。お決まりの展開がデータベースのように頭の中を駆け巡った。俺の唇がわずかに、ごく小さく、しかし確かに、笑みの形に歪んだ。
誰かが扉に走り出すよりも先に、光は内側へと崩れ落ち、俺たちを丸ごと飲み込んだ。
落下する感覚があった――魂を針に通されるような、激しく引き裂かれる圧力。そして、どっしりとした重みとともに重力が戻ってきた。
突然の明るさに俺は瞬きをした。オゾンと古いお香の匂いが肺を満たす。チョークの埃にまみれた現代の教室は消えていた。机も、弁当箱も、鞄も――どうでもいい世界に置き去りにされた。
俺は、磨き上げられた白い大理石の床に跪いているのに気づいた。金と石の巨大な柱が、翼のある生き物の壁画で飾られたヴォールト天井に向かって伸びている。周りでは、1年A組の他の20人の生徒がうめき声をあげ、床から這い上がり、完全に困惑し、恐怖していた。
俺は彼らを無視した。視線は大広間の正面、壇上に完全に固定されていた。
大理石の上に、絶対的で恐ろしい美の生き物が浮かんでいた。流れるような白いシルクをまとい、柔らかく幽玄な後光を放つ、女性の存在。人間性をまったく宿さない目で私たちを見下ろしていた――新しいコードの行を見つめるプログラマーのように、冷たく、計算高い視線。
女神か、と思った。純粋なアドレナリンが血管を駆け巡るのを感じた。
俺は草薙京也。見捨てられた息子で、見えない怠け者。失うものは何もない。戻る場所も何もない。そしてついに、やる価値のあるゲームができた。この世界が何なのかは知らないが、目の前に浮かぶ神聖な存在を見て、俺は密かに誓った。
主人公みたいに、この場所を楽しんでやる。
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