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姉に全てを奪われた追放令嬢、辺境の村を再建します〜愛犬が転生した犬人少女と始める内政スローライフ〜  作者: 織部


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ワールドエンド再建計画


「実は手が足りなくて、何人か、うちの牧場で働いて欲しいんだ。獣人なら、牛や羊の世話に向いてるし」


 マークスが求人を出してくれた。

「待て待て、うちも建築や修繕などの依頼が、村の人口が増えて急増している。作業員が足りてないんだ。獣人なら、高所作業もお手のものだろう」


 アレンも負けずと求人を出す。

「ちょっと待ってくれ、俺のやってる山と森の調査こそ、獣人は向いてる。これで迷わずに済む」

 ありがたい。彼らは、同情ではなく戦力として見ている。


「プロストさんは、研究職なんですよね?」

「ああ、お話ししてませんでしたね。僕は、こう見えて王国大学の教授なんですよ」

「頭が良いんですね。しかもお若いのに教授。私も行きたかったですよ。王国大学」


 私は、王国大学を受験するために魔物討伐のチームから外してもらい勉強をしていた。だが、予想外の苦戦が伝えられ、私は、救援部隊を急いで組んで現地に向かった。そして、受験日、私はダンジョンの中にいた。


 暗い通路で、魔物の声を聞きながら、ふと――今日が試験日だったことを思い出した。今ごろ、静かな講堂で、紙をめくる音がしているのだろうか。


 筆記具の擦れる音。名前を書く音。血の付いた手が、地図の端を濡らしていた。

 ほんの一瞬だけ、胸が痛んだ。


「話はつけてあったのに。その場におらんと合格にはできんと言われ、私は恥をかいたぞ!」

 父に怒られ、私は大学に行くことを諦めたんだ。前世では、両親に反対されて就職した。……私は、二度、機会を逃したのかもしれない。


 私は、遠い目をしていたようだ。

「学問は、別に大学だけでするものではありません。獣人にもエルフにも子供がいます。この地には、きちんとした学舎がありません。執政官、どうしますか?」


 プロストが笑って言った。

 どうしますか。私は、息を吸った。

「そうですね、一緒に学校も作りましょう」

 奪われる側ではなく、用意する側になる。


 少なくとも、このワールドエンドでは。

「賛成だ! うちの子のケーシーも通わせる」

 マークスが力強く頷く。

「まだ、小さいじゃないか。それじゃ保育所だぞ!」


 アレンが笑う。

「保育所でも構わんさ。読み書きができるようになるだけでも違う」

「基礎なら僕が教えますよ。執政官様も教えませんか?」


 このワールドエンドには足りないものが多い。それを限られた財源の中でどう運営していくかが私の仕事だ。

 これは慈善ではない。領地経営だ。

「じゃあ、皆さん、これから全員と面接をするんです。一緒に参加してくれませんか?」


 マークスが大きく頷き、アレンが腕を組みながら笑い、プロストが静かに頷いた。

 今度は、間に合わなかった少女ではない。


「それじゃあ、明日から迎えに来ますね」

 面接の結果、まず十名の採用が決定した。きちんと雇用契約書も、私は作り雇い主と使用人共にサインをさせた。契約書は、私の家のものを簡素化したものだ。


「他にも、この村で人手を必要としている方もいます。ロン爺をはじめとした人たちも。声をかけましょうか?」

「そうですね……それと、依頼掲示板を作りましょう!」


 長期的な仕事以外の簡単な手伝いとかも貼り出して。

 次々にやらないといけないことが浮かんでくる。それと、面接の結果、農業や林業など自分で独立してやっていきたいと希望している獣人たちもいる。


 彼らに援助もしてあげないといけない。それと、服や道具も……。

 私は、綺麗になった執務室に入って、日誌を書き、やったこととやらなければいけないことを書き込んだ。


 ふうっと、紅茶の美味しい匂いがする。エレノアが淹れてくれたようだ。

「一服してください」

「ありがとう、ねえクロエは?」


 さっきまで面接で一緒だったのだが。私は急に不安になった。

「そこで働いてますよ」

 執務室の窓から、屋敷の周りの野草を刈っている獣人に混ざって、作業をしている子どもの集団の中にいた。それは遊んでいるようにも見える。


 私は思わず笑みが溢れた。

「それより、お嬢様、この屋敷のことも考えてくださいね」

「あ、そうよね、エレノア。この屋敷の使用人も雇わないとね」


 本来は荷物を届けてもらうだけのはずだったのに、ウルフェンハルト家の家宰やメイド長をこき使うことになるなんて、さすがに申し訳なさすぎる。

 それに、明日にでも帰るだろう。

「お嬢様、それもありますが、ここは邸宅。事務所は別に必要です」


「うわぁ、大事なこと忘れてた。お金だぁ。明日には、アレンに建物の手付金を払って、エレノアに生活費を……」

 ジュエリーボックスの宝石を売って、この屋敷の改築費用に当てる予定だったが、他にも、長屋や事務所、それと大人数の食費や衣類を考えると足りないだろう。


「ちょっと待ってて。これ……」

 馬を買わなくて良かった。

 私は、リュックに隠してある大事なへそくりを、エレノアに差し出した。

「何ですか? これは?」


「私が子供の時から貯めてたお金。これでしばらくの食費と衣類はなんとか……」

エレノアは、差し出された袋を見つめ、ゆっくりと首を振った。


「それは、お嬢様の個人的なお金です」

一拍置いて、はっきりと言う。

「領地の不足を埋めるために使うものではありません。レオになんとかさせましょう」


 私は過去に何度も彼からお金を無心してもらったことがある。

「お金が必要なの、出して!」

 私は、彼に頭を下げた。

 服が欲しいとか、宝石が欲しいとかじゃなくて。


 私は、魔物討伐隊として、お金が必要だったのだ。

 もちろん、国費もあるし、寄付もあったが、討伐隊に選ばれたメンバーの中には、優秀だが、身分の低い金を持たない者もいた。彼らの武器や防具を用立てたのだ。


「……。独立したはずの私が、ウルフェンハルトに頼るなんて出来ないわ」

 悔しい。これじゃ、好き勝手やってるお嬢様だ。私は何も変わっていない。思わず涙が溢れそうになる。


 涙を見せまいと机に伏せた私の頭をエレノアが撫でた。

 コン、と扉が叩かれた音がした。

 私は、頭を上げた。


「レオナールです。只今、戻りました」


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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